第44話 蛆虫共
今週の登校は終わって、今日明日は祝日。
それを終えると来週からいつ、どこのタイミングでどうなるかがもう分からない。
そんな中で俺たちは学園の正門に訓練着を着て集っていた。
しかも……
「なあなあ、本当かなぁ?」
「ああ。だって、ハビリくんがそう言ったんだからよ」
「この訓練を乗り越えられたら……ど、童貞捨てるエロエロツアーに……」
「私ィ~この学園に入ったのは元々玉の輿狙いだったし~」
「入学直後からこんなイベントあるなんて緊張するけど楽しみだねぇ~」
俺のクラスだけでなく、明らかに他のクラスやら新入生まで混じっている。
「お、おい……どーいうことだ、ネメス」
「ぇ……だ、だって、これも正義のためですから(一年生も参加できるようにして、僕も先輩からご褒美欲しいし)」
昨日一部始終を見ていたネメスがクラス委員長として自分の学年にも声をかけたのだ。
その結果、ネメスや俺に対する信頼やらご褒美やらにつられて、魔法学園の欲にまみれた数百人の生徒たちが集っていた。
その目は皆がウキウキで……やる気が出るのはいいが、これはこれでやはり気が緩んでいるような気がするが……
「集ったなぁ! 未熟なる者どもめが!」
「いつまでも和気藹々……全員、母の子宮から……いいえ、父の精液から受精までの争いまでやり直した方がいいのでは?」
「「「「「ッッッッ!!!!????」」」」」
と、そんな空気をぶち壊すように荒々しい声と、冷たい一言が場を一瞬で沈めた。
「え……わ……」
「お、おぉ……」
鎮まる一同の前に現れたのは、いつもの制服やメイド姿のソードとマギナではない。
なんだか緑色の迷彩な柄の服と、黒い眼鏡をかけ、膝上の短いスカートに……その手に訓練用の木剣だとか鞭をもって……おいおい、どこでそれを? ってか、何をする気だ?
「いいか、よく聞くがよい! 今日から貴様らを指導するソードだ」
「マギナです」
「今日から訓練課程を終えるまで、小生のことはソード教官と呼ぶことだ!」
「マギナ教官です」
と、非常に攻撃的で相手を圧するように乱暴な口調のソードとマギナに、一瞬で生徒全員の顔が強張った。
そして……
「あの、すみません……質問が―――」
「許可なくしゃべるなぁああああ!」
「ほぎゃあっああ!?」
参加生徒の一人が疑問を口にしようとした瞬間、マギナの木剣が男子生徒をしばきやがった!?
「ちょ、ななな、なにを!?」
「きゃあああ!」
「暴力!? いきなり!?」
「な、なんなの!? こ、これはどういうこと! パパに訴えるわよ!」
「暴行や非人道的な言動は―――」
当然、いきなりのこれに生徒たちも黙ってられず、抗議の声を一斉に上げる。
だが……
「ダマレ」
「「「「「ッッッ!!!???」」」」」
ソードの圧倒的な圧に一瞬で誰もが押し黙ってしまった。
「非人道的? 当たり前だ! そういった人権は人間にのみ与えられる! 貴様らは人間などではない! 未熟で何もできない、ただの蛆虫である! 蛆虫に人権など不要! そういった権利は最低限のことができる人間になってから主張するがよい!」
なんか……急にすごいことを言い出した……
「せ、せんぱい……」
「しっ、今は黙っとけ」
流石にこんなことを圧倒的なプレッシャーを放って言われたら、さっきまでのピクニックにでも行くような空気は一変する。
誰もが今から何が始まるのかという不安の表情で怯えている。
「さて、まず先ほど言ったように小生たちのことは『教官』と呼び、そして小生らが命じたことには一切『なんで?』と言わずに『サー・イエッサー』と背筋を伸ばして大声で応えること! 分かったか!」
「「「「「…………………」」」」」
「……マギナ、鞭を寄越せ」
「どうぞ」
「「「「「ッ、さ、さー、いえっさ~」」」」」
「遅いィいい! 声が小さいいいいいい!」
「「「「「サー・イエッサー!!!!」」」」」
「……ふん、まあ最初だけは慈悲で許してやろう。だが、次も遅れたり声が小さかったりすれば、その場で腕立てでも走り込みでも罰を与えるので覚えておけ!」
「「「「「サー・イエッサー!!!!」」」」」
お、俺も思わず気を付けして『サー・イエッサー』と叫んでしまった。
いかん……本当に大丈夫か?
「さて、これからの訓練課程について私、マギナよりご説明しますが……まず大前提に魔法学園の授業カリキュラムや教科書の中身は一切不要です。あんなもの何の役にも立ちません」
「「「「ッッ!?」」」」
「なぜならこの学園の授業は純粋なる強さを求めるための授業ではなく、あくまで帝国や各国の魔法騎士に採用されるための就職を目的とした授業だからであり、確かに入学から卒業までの間に最低限は強くなれるかもしれませんが、教科書に記載されている計算式だの歴史学など……実際の人生や戦争では何の役にも立ちません! 時間の無駄です。真に強くなるのは魔法騎士になって経験を積み重ねての話です。今、強さを求めるのであれば、魔法学園の授業など無駄です!」
おっ~と、いきなりこの名門にして入学は難関なエリート生徒たちが集う魔法学園を全否定しやがったぞぉ?
もう、そんなことを聞かされている生徒たちは戸惑いどころか半泣きだよ。
でも、ならどうするか?
「では、訓練場に移動します」
「「「「「…………………」」」」」
「返事をなさい、蛆虫さんたち」
「「「「「ぎゃあああああ、す、すみま、さーいえっさー!」」」」」
本当に何が始まるんだよ、つか、俺にまで鞭が当たって……
(うふふ、坊ちゃまも少し怯えている……うふふふ、なんとめんこい。訓練の罰にかこつけて懲罰室でスケベな罰も公認♥)
(ふふ、叩かれる悦びは至高ですが、私が坊ちゃまを叩くというのもイイものですねぇ、きっと怒った坊ちゃまにベッドで10倍返しでよがらせてもらえるでしょう♥)
そして、それを向こうも認識しているのか、ものすごいいやらしい笑みを俺に浮かべてきやがった……やばい……もう色々と嫌な予感しかしない。
そんな不安を抱えて移動した運動場では……
「……な、なんでしょう、先輩……これは?」
「さ、さぁ?」
もう、何か分からん器具やらが訓練場を埋め尽くしていた。
いや、もう、これ学園に許可取ってるのか?
「ではやるぞ! まずは基礎能力向上のための……地獄のマジカルサーキットトレーニングだッ!!」
――あとがき――
あけましておめでとうございます!!!!
本年も何卒よろしくお願い致します!!!!!
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