第43話 黄金指導

 有力貴族の坊ちゃんたちを紹介したり、美容に役立つ秘薬的なのを提供したり、男子にはエロエロなツアーを提供。

 そんなもんで人間やる気になるものか?

 


「おいおい……俺は真面目に言ってんだよ。そんな金さえあればどうにでもなるようなもんでやる気出るんだったら誰も苦労は―――」


「「「「ちょ、まっ、て!!!!」」」」 



 と、俺が鼻で笑おうとしたら、クラスメート連中が慌てて身を乗り出してきた。

 な、なんだ?


「あ、あのさぁ、ハビリくん……その、え~っと……ね?」

「なぁ?」

「うん……」


 急に全員が顔を赤らめてモジモジしながら俺の様子を伺ってくる。

 すると、そもそも最初に話を切り出したヤルィマンヌが少し目をぱちくりさせて……


「あ~、あのさぁ、ハビリくんさ~、あーし、今のけっこう冗談で言ったんだけどさぁ~……まぢ?」

「は?」

「だ~か~ら~、ハビリくん級の金持ちならさぁ、今のあーしの話とか『金さえあれば』レベルの話なん?」


 なんだ? 

 だって今のって……



「だって、金持ちの御曹司紹介とか……そんなもん上級貴族は毎週のように他国含めてパーティーやってんだし、そこにお前ら連れて行けばいいんだろ? ただの庶民ならまだしも将来有望な魔法学園生徒なら楽ショーで……」


「「「「ッッッ!!??」」」」


「それに美容の希少な薬って、他国で流通量が少ないからだろ? そんなもん俺の親父が贔屓にしている貿易商に言えばたぶん……」


「「「「ッッッ!!??」」」」


「で、男子はエロエロツアー? それって……蝶々の仮面付けて身元隠してお忍びで、キレイどころの姉さんたち集めて宴会したりゲームしたり、一緒に温泉入ったりとかなのだろ? 法律的な問題はあるかもだが、口止め料さえ払えば別にできるんじゃねえか?(前回の俺も他のバカ貴族の連中に誘われたしな。ま、ソードとマギナの調教で満足だったから参加しなかったけど)」



 そんな特に珍しくもないようなものを褒美って言われても―――



「「「「たとえばハビリくんはどれぐらい頑張れば認めてくれる!? ご褒美くれる?!」」」」


「うぇ、あ、なな、なんだぁ!?」



 だが、まさかの全員が目の色を変えて身を乗り出してきやがった。

 その目は「本気」だった。

 なんで?


「坊ちゃま……この魔法学園には坊ちゃま以外にもそれなりに裕福な家系や名家の子もいるとは思いますが、ほとんど王族の身内のような坊ちゃまは桁違いの貴族ですので、坊ちゃまにとっては『その程度』のことも彼らにとっては夢のような話であります」


 と、ソードが俺に耳打ちしてきた。

 え、そうなの?

 これで今よりも更に頑張る?

 まぁ、これで多少頑張ったところで来週とか再来週で急に強くなるとは思えないけど、それでも何もないよりもマシ……



「あ~、わーったよぉ! それなら、ほら! この前ネメスが入試試験で帝国の騎士を模擬戦で倒したろ? それぐらい強くなったら俺がお前らの望みを叶えてやらぁ!」


「「「「オオオォォォー-!!!」」」」

 

「そ、それに、例えばだが、もし魔王軍と交戦するようなことになった場合、敵を一人倒せたらとかもなぁ!」


「「「「ウオオオォォォー-!!!」」」」



 まさかの全員が一斉に雄叫びを上げやがった。本当に熱いくらいに力を込めて。


「うそぉ、ハビリくんが紹介してくれるパーティーとか、え、どれぐらいの貴族の人たちかなぁ? なんだったら公爵家どころか王族まで居たりして!?」

「私、噂の美容薬どうしても欲しかったぁ!」

「え、エロエロツアー!」

「いーじゃん、いーじゃん、あーしも気合入ってきたっし! 」

「だな、だったらもっと強くならないとね! 僕、やる気出てきた!」

「私も!」


 いいのか? 本当にこれでいいのか?



「あっ……でもさぁー……魔王軍とかはそういう機会でもねーと無理だから置いといて、現役の騎士倒すぐらいって実は超ハードじゃね? それこそ卒業レベルで……まだ二年のあーしらにはどうしようも……」


「「「「あ……」」」」



 と、そこで盛り上がるだけ盛り上がって、結局シュンとなる一同。

 そりゃそうだ。

 普通に考えて、普通の努力や才能では「まず無理」って課題だからだ。

 魔法だけでなく、戦闘面も含めて、ただでさえこの国の選ばれた者たちだけがなれる帝国騎士に勝つっていうんだからな。

 すると……



「うふふふ、先輩方ぁ、それぐらいの課題で頭を悩ませちゃダメですよ? だって、僕やソードさんたちなんて、六星魔将を倒さないとご褒美もらえないんですから。ねぇ?」


「「「「うぇ、無理じゃん!!」」」」



 と、クスクス笑いながらクラスメートたちに教えるネメスに、皆が青くなった。

 いや、でも無理でもやってもらわないといけないわけなんだよ。

 そしてこいつらにも何とかモチベーションを……でも、普通の魔法学園のカリキュラムや自主鍛錬程度でどうにかなる問題でも……


「あ~、なら、ソード……こいつらや、俺も含めて鍛えてくれ~……とか、無理か?」

「え? 小生が?」


 なんかイイ案がないものかと、半分冗談でソードに振ってみた。

 


「……ふっ、命令であれば最低限のことぐらいしますが……まぁ、小生も女ですので、こやつらの中の一人が課題達成のたびに坊ちゃまが六星倒す以外にも小生に褒美をくださるというのであれば、こやつらを魔法学園では習わぬ闘技で、僅かな期間で精強に仕上げてみせますがな」


「え……いや、んなことできねーだろ?」


「おや、心外でありますぞ? 小生ならできますぞ? 小生が坊ちゃまに実務の虚偽はしませぬ」


「え?」


「「「「「え……!?」」」」」



 それには俺も、それどころか他の皆も驚いた様子。


「え、ちょ、あ~……ソード……じゃあ、お前なら……ご褒美、その、あれば……マジでそんなことできるのか?」

「え?! 坊ちゃま……ご褒美……ほ、本当にくださるのでありますか? しかも坊っちゃまに調教! ……いや、指導も……」


 アレ? なんかソードもかなり目が真剣に変わり……え? ソードの指導なら、皆が短期間でもっとレベルアップできる?

 すると……



「お話はお伺いしました」


「「「「わッ!!?? だだ、誰!?」」」」


「え、マギナ!?」


「ぬっ、マギナ、何故ここに!?」


「マギナさん!?」



 それは何の前触れもなく、まさに急に、そしてどうやって?

 まさか家にいるはずのマギナが教室にいつの間にかいた。


「ふふふ、先日のご主人様逃亡から学び、学園に盗聴魔法といつでも来れるように転移用の魔法陣をコッソリ……と、それはさておき!」


 さておけねえ!? そんな話題をサラリと口にしながらもマギナは……


「お話は伺いました、皆さま。そしてご主人様。私自身にもご褒美があるというのであれば……このマギナが、皆様に最強の魔法指導をして差し上げましょう!」


 と、まさかの指導宣言。

 

「な、ま、マギナ、貴様! 急に現れて抜け駆けは許さん! おい、お前たち、小生についてこい! 小生が貴様らを一週間で今より見違えるほど強くしてやろう! 小生のマジカルブートキャンプだ!」


 さらには、ソードまで……




 なんか……変なことになった?





――あとがき――

お世話になります。

本年最後の投稿になります。この一年お世話になりました。


来年も何卒よろしくお願い致します!!!!


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