第29話 幕間・あるメスブタの日常

「じゃぁ、私とイチクノは宮殿で用事あるけど、夜には帰るから~」

「ええ、行ってらっしゃいませ」


 朝、御主人様やソードも登校された後、トワレも政務のために宮殿へ。

 今この屋敷には御父上様も他のメイドたちも居ないため、私一人だけになります。


「さて……魔法結界発動」


 魔力を庭も含めた屋敷全体に覆わせる探査魔法。

 これにより、この結界内に足を踏み入れた者は誰であろうと私は感知します。

 誰もいないのは分かっているのですが、これは安心安全のため。


「ふむ……誰もいませんね。心置きなく洗濯とお掃除とオカズ集めができますね」


 誰もいないのを改めて確認し、まず私は洗面所に。

 そこには御主人様の使用済みの歯ブラシ。



「さて、御主人様の使用済み歯ブラシで……シュコシュコシュコシュコ♪ じゅぶるるるるるじゅぞぞぞぞぞぞぞ♥」


 

 私の歯ブラシは常に御主人様が使用された後の歯ブラシ。

 これにより、私は間接ディープキスを堪能します。

 磨くだけではなく、ブラシの一本一本をチュウチュウ吸うことで水分全てを吸い込みます。


「ふう、結構なお点前ですね。さて……ん~……交換しておきましょう。新品を……っと、完全に新品だと怪しまれますので、まずはまた私が一回使ってから……ごしゅごしゅごしゅ……んふふふ♥ ご主人様、私が一回使った歯ブラシをどうぞ~♥」


 定期的に交換しているので、御主人様も気づかれないでしょう。

 うふふふ、御主人様はご自身が毎朝私と間接ディープキスをしているなど思ってもいないでしょうねぇ……本当は直接さっさとして欲しいのですが……


「さて、掃除をしながら私のオカズでも調達しましょう」


 次は私のオカズ集め。御主人様がまだ一度も私を犯してくださらないので、私は自分で自分を慰めて精神と理性を今は保っております。

 大将軍さえ倒せばと思いつつも、それまでが非常に長いので、これは自分が壊れてしまわないための救済措置です。

 そのため、私は御主人様の部屋に足を踏み入れて、ただ……


「……やはりありません……ベッドの下にも隙間にも机の引き出しにも本棚の難しい本のカバーの下にも……エッチな本がありません。本当に入手していない……ゴミ箱の中にも御主人様の使用済みのアレがありません……」


 このオカズ集めが非常に難解です。

 ループ前の御主人様は私とソードを使い、朝昼晩でムフフなことをしてくださるぐらいお盛んな方だというのに、今の坊ちゃまはムラムラしたらどうやって?


「おかしいです……一日二日ならまだしも、これで一体何日目です? 御主人様が自分で自分を慰めている痕跡すら見当たらない……性欲はあるのは確認済みですが、一体どこで? まさかトイレで? 私という便器がありながら、家のトイレでコッソリしているタイプでしょうか? うぅ~~~、いずれにせよ、御主人様は鬼畜すぎます! 私にオカズも餌も与えるつもりはないと!? このままではメスブタは餓死してしまいますぅ!」


 ダメです、正常を保っていた精神がこのままでは崩壊してしまいます。

 どうにかしなければ……



「はぁ……致し方ありませんね……今日も御主人様の脱いだパンツでもしゃぶってましょう」



 御主人様が朝脱いだパンツ。寝ている最中身に着けていたということは、一晩寝かせて熟成させたもの。

 アレは香りも味も非常に美味です。

 今のところ他に選択肢のない私には、これを洗濯する前に食べるのが今の私のルーティンワークになりつつありますね。

 とはいえ、毎日こればかりだと余計に本物の御主人様の肉を食べたくて食べたくて仕方なくなる諸刃の剣でもあるのですが……



「さて、御主人様のベッドに脱ぎ捨てられたパジャマ……うふふ、この中からパンツをモグモグしながら、マクラとシーツに包まって完全防備で――――♥」



 私は裸になり、御主人様のベッドの中に入って、オカズを食べながら今日一日の気合を注入します。

 うふふふふ、ヌクのに注入とはこれいかに?


「ッ!? な、え? パンツが……御主人様が今朝脱がれたパンツがありません! どういうことです?」


 と、そこで私はハッとします。

 ベッドの上に脱ぎ捨てられている坊ちゃまのパジャマを漁りますが、無いのです。

 もはや特選素材と行っても差し支えのない御主人様の脱いだパンツが無いのです!

 私が見落とすはずがありません。食べずとも必ずクンカクンカしている私が一枚たりとも見落とすはずがありません。


「おかしいです……御主人様のパンツが一枚……ん?」


 その瞬間、私の中である一つの答えが自然と導き出されました。


「これは盗まれた? 犯人は……まさか!」


 いえ、そうとしか考えられないです。

 私は慌ててソードの部屋へ行き……


「……ソードは単細胞……隠すのは苦手なはず……クローゼットの……うふふふふ、ありましたねぇ~」


 ソードの部屋のクローゼットの上の段の奥の箱の中に、御主人様の脱いだホカホカパンツがありました。

 どうやら考えることは一緒のようで、ソードもこのオカズに目を付けたようですね。


「さてさて、いけない盗人に分不相応なこのパンツは私がしっかりと食べて……ん? ……え!?」


 盗んだのがソードだと分かりほくそ笑んでいた私ですが、その箱の中に入っていた他のものに私は衝撃を受けました。

 

「こ、これはお古の子供服……『ハビリ』……ッ!? 御主人様の子供時代の服!? さらに、アルバム……ふぉおふぉああ!? こ、子供時代のご主人様の、ふぉ、ど、どちゃくそかわいいいいい!?」


 なんと、私がこれまで見たことのない、手足の短くプニプニお肌のちっちゃな御主人様の姿と、その時に着ていた服が発見されました。



「そ、そうでしたか、ソードは一日とはいえ私より早くに御主人様の奴隷になりました……その間にこれを一晩でかき集めたということですか!? な、なんという強欲の変態なのでしょう! ありえません……うぇへへへへ、この時代の御主人様かわいすぎて食べてしまいたい……あぁ、早く幼児化の薬を御主人様に飲ませて一晩中食べたい♥ そしてこの屋敷は危険。ソードのような変態から、私がご主人様を守りませんとね♥」



 喜びと共に新たな決意をした私でした。





 そして……



「……ただいまー……」



 夕方、ご主人様が帰宅されました。


「おかえりなさいませ、ご主人様」

「おー……あと、スカートを上げるな」

「……いえ、おやつにいかがかと……本日は黒のレースのガーターにございます」

「……すまん、今、付き合えん」

「まぁ! ではいつなら突いてくださるのです?!」


 帰宅されたご主人様を、私はメイド服のスカートの裾を上げて本日のパンティーを見せながらお出迎え。

 前回のご主人様はこのまま玄関で私を乱暴調教してくださったのですが、今回のご主人様はこれでも手を出してくださいません。

 それに今日はどこか……


「ご主人様……あの、どうかなさいました?」

「いや……まぁ、色々と……すまん、ちょっと部屋で考える」

「?」


 おや? 御主人様、元気がありませんね。


「ソード、御主人様は何かあったのですか?」

「なんだ~~~~?」

「む?」


 学校で何かあったのかと思ってソードに尋ねてみると、ソードは明らかに怒りに満ちた表情。

 何でしょう。ご主人様にいったい何が……


「ぶつぶつ……おのれぇ、チオめぇ~、坊ちゃまの舌技を小生より先に味わうなどぉ~」

 

 チオ? チオと何が?

 何でしょう。学園で一体何が?


「ふぅふぅふぅ……ぐぅ、小生も想像しただけで……ええい、さっそく部屋で―――」


 ソードは機嫌悪く、それでいてどこか落ち着きなく悶々としているようで、そのまま部屋へ足早に。

 ですが……



「ふぉわああああああああああああああ?! しょ、小生の宝箱がぁああああああ!! マギナァアアアアアア!」



 おやおや、あの宝箱の中身がなくなっていることを気づいたようですねぇ。

 ソードが慌ててここに戻ってきます。

 ですが……


「マギナぁぁぁあ、貴様嗚呼あああ、小生の部屋に入ったなああ?!」

「あら? ええ、掃除をしましたけど、何か?」

「な、何って、き、きさま、小生の私物を……」

「私物? あなたの? 何がです?」

「な、何って……」


 ふふふ、言えるはずありませんよねェ?



「おやおや、これは困りましたねえ。何か盗まれたのでしょうか? 強盗? それとも私が何かを盗んだと? いずれにせよ、窃盗は犯罪ですよねえ。これは早急にご主人様に報告して騎士団に捜査してもらわないとですねぇ」


「え、あ、いや……」


「で? ちなみに……ナニが盗まれたのかを教えていただけますかぁ?」


「ふぐっ、う、うう、そ、それは、ぐぬう!」



 強盗が盗んだものを他の人に盗まれても、それを訴えられませんよねェ?

 それを問い詰められませんよねぇ?

 


 私は心の中でピースをし、そして誓います。



 ご主人様、あらゆる脅威や変態から私がお守りします♥ 



 一生。そして、仮に今後何度ループしたとしてもです♥






――あとがき――

お世話になります



【カクヨムコン・週間ファンタジーランキング:6位】



キタアあああ\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/

目標の5位以内まであと一つ!!!!!


何卒もう一推しをよろしくお願いします!


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