第21話 早朝の英雄

 魔王軍の大将軍を倒せるぐらいになったら、俺らも多少ハメを外してもいいかもしれない……という、あまり考えずに言った言葉だ。

 普通こんな不純すぎる動機で「奇跡の黄金世代」と呼ばれ、後に人類の希望、英雄となる勇者たちがやる気を……


(ちっ、やはり現時点の小生の筋力などは前回ループ時よりもまだ格段に劣っている……が、どうすればあの時点まで引き上げられるかも既に小生は知っている。何よりも、前回の人生で戦いながら編み出した奥義のやり方も小生は分かっている……魔力による身体強化技……アレを序盤から身に着けようぞ!)


 朝、目を覚まして窓から外を見ると、既に庭には剣を持って意識を集中させているソードが居た。


「はぁああああ! 奥義・ブレイクスルーッ!!」


 な、なんだありゃ!? ソードが光った! ネメスみたいに全身が輝いて……


「でりゃあああああ! そりゃああああああああ!」


 剣を振り回し……速いッ!? え、うそ、目が追いつかねえ……って、あいつあんなにすごかったのか!?

 前回はあいつとヤルことと、チンピラと戦わせるぐらいしか俺はあいつの力を知らなかったけど、あんなことできるのか?

 俺も体動かそうかなと早起きしたら……前回知らなかったことがここにも……


「ぐぅ……ダメだ! これでは……『今の小生』では1分が限界か……もっと持続時間を延ばさねばな」


 しかも、アレだけ凄いのに本人は全然満足していない様子。

 なんてストイックな……


「俺も負けてられねえな……よし!」


 俺も蒼炎を使っての色々な工夫のコツが分かってきたしな。というか、頭で思い描いたことを形にすることができる気がしている。

 ただ強くならなくちゃいけないという義務感だけでなく、もっと自分を試したいという気持ちも芽生えてきた。

 ひょっとしたら、訓練次第で案外俺も勇者的な――――


「あれ? マギナ?」


 ソードが鍛錬している表の裏とは逆の裏庭にマギナが佇んでいた。

 朝の掃除でもしているのかと思ったが様子が違う。

 アレは……


(前回は余計な魔法を多数覚えていましたが、今回は取捨選択し、その分一つの魔法の質を向上させましょう……何故なら今回の私は既に……私自身も知らなかった封印された特異体質『呼吸で魔力回復』の存在を知っているのですから! 亡くなったお父様が私を戦争で利用されないためにと体内に施した封印術……ネメスたちとの冒険の途中に出会った占い師に教えてもらった解除方法を今の私は知っているのです! つまり、序盤から私は無敵です!)


 足元に何やら魔法陣を引いている。アレは確か、魔法による封印を解呪する的な奴だったと思うが、あまりにも高度な術式過ぎて俺には何が何だか分からん。


「大魔解除ッ!!」

「ッ!?」


 次の瞬間、マギナの足元の紋様がマギナの身体に巻き付いていき、そしてやがてそれが全身に侵食した瞬間、マギナの身体に巻き付いた紋様がガラスのように砕け散った。

 すると……


「ふっ……ふふふふふ……漲りますねぇ」

「ッ!?」


 ちょ、ちょっと待て! 何だ……この禍々しい……見ているだけで震えるような魔力の質は!

 前回までは奴隷の首輪に反逆防止以外に魔力封じを施していた……だけど今回は俺がソレをさせなかった……今の二人の首に巻き付いているのはただの首輪。

 俺は首輪そのものを外したかったが、ソードもマギナも首輪にはこだわったからつけてはいるが……力は封じられていない。

 ソードだけじゃない。

 開放状態のマギナって、こんなヤバかったのか?!



「ふふふ、とはいえまだ私のこの魔力に肉体がついていかないでしょう……当面は魔力に耐え切る耐久の向上……強くならねば」


「ッ!?」



 そして、ソード同様にマギナもまだまだこれで満足していないという様子で、更なる高みを求める言葉を口にした。

 

「な、と、とんでもねぇ……す、すげぇ……」


 俺はその瞬間、全身がゾクゾクと身震いした。

 そして改めてソードとマギナにネメス達同様の「黄金」の可能性を見た。

 これが正真正銘、勇者の仲間として人類と世界を背負って立つ傑物。

 俺も最近では自分も結構やるもんだと思い込んでいたが、鼻っ柱がへし折られたような感覚だ。


「そうだ……前回、俺があいつらを飼い殺しにして非道なことさえしなければ……あいつらは……人類は……世界は……」


 だからこそ、前回の人生での俺の罪は重い。

 もっと早くにあいつらを解放していれば、もっと違った未来があっただろう。

 

「だから、今度こそ間違えねえ……よーっし、俺もやるぞー!」


 黄金の輝きを朝から見せつけられたんだ。

 その黄金がまだまだ光ってみせるとまだまだ己を磨いてるんだ。

 そのストイックな心意気を見せられて気合が入らないわけがねえ。



(うおおお、ヤルぞォ! 確実に魔王軍の大将軍を始末し、そうすれば……今度こそ坊ちゃま公認ドスケベライフの開幕なのだからなぁ! あ~早く坊ちゃまの全身を舐めたい……しゃぶりたい……小生も舐め回され吸われたい……ワンワン交尾ごっことか、浣腸大噴射とか、……うぇへへへへへへぇ~♥ そのためにも大将軍なんぞ瞬殺してくれる! 敵の能力も既に分かっているしなぁ! 坊ちゃま、数ヶ月後はお覚悟を! 孕んでも生んでも小生はやめませぬぞォ! そして、今回の『ナンデモ』の願いが叶うなら―――――)


(迫りくる大将軍一人倒せばよい……望むところです! うふふふふ、御主人様……前回は御主人様自ら私に開発を命じたエロアイテム、エログッズ、エロ魔法薬……その全てを更なるバージョンアップでご用意しますからね……ぐふふふふふ♥ 百発出さなければ萎えない超精力増強剤も、母乳味変化トロピカルフルーツ薬も既に材料は手配済み♥ そして、今回の『ナンデモ』の願いが叶うなら―――)



 うん、ゾクゾクしてきたぜ!




((幼児化の薬で坊ちゃま(御主人様)を小さくして……メチャクチャに可愛がりたいッッッ!!!!))



 

 ん? ゾワゾワもしてきた?

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