#021 白と黒の決闘! エルフ&オートマタ

「みなさん、こんばんはー『電遊アリスちゃんねる』の時間ですよー」


 こうしていつものようにボクの配信が始まった。


【こんばんはー】

【今夜も飯食いながら見るアリスちゃんカワイイ】


「えー、今夜は特別ゲストをお招きしています」


 そうボクが言うとざわつくコメント欄。


【またルーミアか?】

【でも特別とか今さら言うか?】


 そして画面にエイミィが映し出された。


「皆様こんばんは、エイミィです」


【エイミィキタ──!】


「おー、さすがエイミィさんは人気者ですね!」

「うふふ嬉しいわ」


 ⋯⋯誰だ、この優雅なお嬢様は?

 僕は思わず隣にいる映子さんを見てしまう。

 そこに居るのはやっぱり映子さんだった。


 ⋯⋯女の人って怖いな。

 そのあまりの変わりように僕は引いた。


「えー、今夜のボクの配信はちょっと趣向を変えてお送りします」


【えーなになに?】


「決闘です、今夜は! ボクとエイミィさんの!」

「そうなの、真剣勝負ですのよ」


【要するに対戦ゲームか今夜は】


「まあそういう事です。 今夜エイミィさんが勝ったら、ボクはこの家を追い出されて代わりにエイミィさんが住みます」

「その代わり私が負けたらアリスのおもちゃにされてしまうの♡」


【何その条件w】

【ほう⋯⋯続けて】


「まあこうなった原因は、だいたいマロン姉さんのせいなので」

「そう! マロンが悪いのよ! ずっと私をほったらかして!」


【マロンのせいw】

【それなら仕方ないなwww】

【マロンもっとエイミィの相手してやれw】


 凄いな⋯⋯姉さんのせいにしたら全部上手くいった。

 これが姉さんの人徳というものか⋯⋯。


「まあ話はこの辺で! 今夜するゲームのタイトルは!」

「スパイバーサススパイよ!」


【おーちゃんとタイトル言えて偉い】

【タイトル読み間違えやすい謎ゲームw】

【ゲームの途中でリアルファイトになるやつじゃんw】

【ワイ&をバーサスと覚えて恥かいたw】


「それではゲームスタートです!」


 この『スパイ&スパイ』というゲームは二人対戦も出来るゲームである。

 二人のスパイが屋敷の中でいくつかのアイテムの争奪戦を繰り広げて、どっちが先に脱出できるか?

 という設定のゲームである。


 なおプレイヤーは持てるアイテム数に上限があるため、いくつもあるアイテムをどう運ぶか?

 というパズルゲーム的な部分もあったりする。


 そして画面には白と黒のスパイのキャラが表示された。


「エイミィさんは白黒どっち使います?」

「性能差ってあるの?」

「いえ無いです、ただの見た目だけ」

「なるほど⋯⋯白と黒どっちか? 決めた! 私は『ヨゾラさん』で!」


 今エイミィさんが言った『ヨゾラ』というのは、このゲームとは全く関係ない漫画のキャラクターである。

 その漫画は『芝居家族シバイファミリー』というタイトルで今、大人気でアニメにもなっている。


「じゃあボクの方が『ヒルさん』で!」


 ちなみに『ヒルさん』とは、その漫画の主人公で『ヒルスデス』というキャラの愛称だ。


【ちょw 芝居家族関係ねえ!】

【いつからコラボしたんだよwww】


「ヨゾラ⋯⋯君と戦う事になるなんてな」

「ヒルさん。 貴方がまさか組織を裏切るなんて⋯⋯」


【なんか設定が盛られているw】

【そういうゲームじゃねえよコレ】


「とまあ冗談はここまでで。 それではゲームスタート!」

「です!」


 画面の中に白黒二人のスパイが現れた。

 ボクが操作するのは白。

 エイミィさんが操作するのは黒。


 さあ白黒決着を付けようか!


「さすがに経験者のボクはハンデです。 30秒動きませんから」

「あら? 余裕じゃないアリス」


 そう言ってボクは目を閉じて動かない。

 その間エイミィさんはあちこち部屋の中を物色し始めた。


 このゲームのマップには机やタンスなど、いろいろな場所にアイテムが隠されている。

 それを全部集めて一つしかない出口まで持って行ったプレイヤーの勝利だ!


 しかしプレイヤーが持てるアイテムは1つまでで、それ以上持つには『カバン』が必須になる。

 ようはそのカバンを奪いあうゲームになるのがこのゲームの本質だ。


 ⋯⋯そして30秒のハンデとはそこまで痛くもない。

 素人のエイミィさんがたった30秒でアイテム全部集めるなど不可能だからだ。

 後からボクがエイミィさんが集めたアイテムを奪えばいいだけの話なのだ。


 勝ったな!

 そうボクは慢心していたのだった。


「さて30秒経ちましたね、そろそろ動かせてもらいますよ!」


 そう言ってボクは目を開いて動かす白スパイが部屋を出た直後だった!?

 ボクの白スパイの顔が真っ青になった!


「ヤバいっ! 爆弾だ!」


 ボクはあわてて元来た部屋に戻った!

 ふう⋯⋯危なかった。

 今のは『爆弾』という罠だ、こういうトラップはいくつもあって相手を妨害できるのがこのゲームの奥深さである。


「ちっ⋯⋯避けたか」

「やりますねエイミィさん、よく爆弾なんて知ってましたね?」

「説明書を読んだからよ」


 いちおうエイミィさんには事前に説明書は読んでもらっている。


【やるなエイミィ】

【殺る気マンマンじゃないかw】

【そりゃマロンがかかっているしな】


 それからボクはエイミィさんのトラップに注意しながらアイテムを捜し始めた。

 探し出すアイテムは『設計図』『パスポート』『金』『鍵』の4つとそれを持ち運べる『カバン』の計5つである。


 やがてボクが『カバン』『パスポート』『設計図』『金』の4つを。

 そしてエイミィさんが『鍵』を見つけてこれで全てのアイテムが出そろった!


 ここからは奪い合いの時間だった。


 このゲームで同じ部屋に二人のスパイが揃うとバトルが始まる!

 殴り合いで戦うアクションゲームになる。


「うりゃ! 死になさいアリス!」


 そう言ってエイミィさんが操作する黒スパイが『ナイフ』で襲い掛かってきた!?


「見つけていたんですか『ナイフ』を!?」


 このゲームにはバトル用の武器も隠されている、当然持っていれば戦いが有利だ。


「だってヨゾラといえばナイフじゃない!」

「このゲームはその漫画とは関係ない、大昔のゲームなんですけどね!」


 素手で殴るボクの白スパイとナイフで刺してくるエイミィさんの黒スパイ。

 勝者は黒、エイミィさんだった!


「勝った!」

「ああっ! 負けた──っ!」


 ボクの白スパイが魂になって天に召されたのだった。


「よし! これで私の勝ち! ⋯⋯あれ? 終わらないんだけど?」


 カバンをエイミィさんに奪われて今や、全てのアイテムはエイミィさんの物になった。

 しかしまだ決着はついていない!


「忘れたんですかエイミィさん? このゲームは脱出してはじめて決着ですよ」

「はっ! そうだったわ」


 こうしてエイミィさんは慌てて脱出口を捜し始める。


「え? どこだっけ? 出口はどこよ!」


【エイミィ必死w】

【がんばれーエイミィ】

【アリス部長負けるんか?】


 現在ボクは死んでて何も出来ない蘇生まであと⋯⋯10秒。

 間に合うか?

 しかしエイミィさんはその間に出口までの道を思い出した。


「そうよ! たしかこっち!」


 エイミィさんが出口まであと一部屋⋯⋯というところで、ボクの仕掛けておいたトラップが発動した!


「ぎゃ──っ! なによコレ!?」

「ふははははっ! 『硫酸バケツ』に引っ掛かったな、エイミィさん!」


 そう、ボクがあらかじめセットしておいたトラップである。

 こうしてお互いに死んでしまったが当然、ボクの方が復帰が早い。


「じゃ! アバヨー、エイミィっつあん!」

「あ──待ってよ!」


 こうしてエイミィさんからカバンを取り戻したボクは悠々と脱出を決めて⋯⋯勝利したのだった!




「さて⋯⋯これでボクはエイミィさんを好きにしていいんですよね?」

「⋯⋯え?」


 こうしてエイミィさんの罰ゲームが決まったのだった。


◇◆◇◆ ◇◆◇◆ ◇◆◇◆ ◇◆◇◆


アリスです!

今夜のゲストはなんとエイミィさんです!

いや~おっぱいデカいね、エイミィさん!

ウチの姉よりおっきい人初めて見たよ!

そんなエイミィさんとボクとの初コラボです!

チャンネルフォローと☆☆☆への高評価お願いしますね!

電遊部、部長のアリスでした!


https://kakuyomu.jp/works/16817330649840178082/reviews

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る