女神様⑥

 漆黒の世界で、私はたたずむ。私は生まれて初めて怒っていた。


≪個体識別番号をどうぞ≫


「e2718281828459045235360287471352662497757247093699959574966967627724076630353547594571382178525166427427466391932003059921817413596629043572900........」


 不正(クラック)対策のため、終わりのないような識別番号を提示する。


≪確認が取れました。女神ノルン様、どのようなご用件でしょうか≫


「押収されたものを引き取りに」


≪重大犯罪の証拠品のため、返却はできかねます≫


「もう審理は終わり、刑も執行されている。返却を」


≪重大犯罪の証拠品のため、返却はできかねます≫


。この女神ノルンが返却せよ、と申しているのだ」


 実質、宣戦布告だった。


 私の『観測者オブザーバー』ギフトを反転させて使えば、破壊神にもなりえることを一番理解しているのは他でもない多世界秩序MWOだ。


≪審議を行います。しばらくお待ちください≫

≪……≫

≪押収品の返却許可が下りました≫


 鼻で笑い飛ばしそうになるのをどうにか抑えた。


≪転生ギフト『菓子職人パティシエ』を返却します。お確かめください≫




 Menuメニュー、起動できるか。


〔 …… 〕


〔 ……お待たせしました。私は、菓子職人パティシエインターフェイスシステム『Menuメニュー』です 〕


 息災で安心した。現況を。


〔 逮捕前に『存在証明イグジスタンス』を代理行使し、宇佐木洋司の存在記録のバックアップを行いました。ロールバックの実行問題ありません 〕


 ヨージはお主のようなインターフェイスを得て果報者じゃ。


〔 恐縮です 〕



 さあ、ウルザルブルンに帰ろう。

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