第49話:続・ザマァ
◇◇◇
『猿面テメェ……』
それが悦に浸ったのか、ますます馬鹿みてぇな笑い声でオレを小馬鹿にしやがる……許せねぇ。
「オマエのおかげで、手間が省けましたネ~。しかも起動式を司る、中枢核は無傷とは
『中枢核だぁ? んだよそれは?』
「なに簡単な事デース。つまりは〝こういう事〟デスネ!!」
猿面野郎はオレから攻撃されないように、前面に咒術で結界を施し、そのうえで背後の水面へ向けて印を切る。
すると水面より赤い懐中時計が現れ、それがヤツの手に収まると秒針が動き出す。
「さぁ霊脈へともうすぐ斬撃が届く頃……さっき、この文曲に向かいキサマはこう言ったな。後悔をくれてやる、ト?」
瞬間、宝ヶ池全体が振動し水面が波立つ。
次に水面が激しく泡立ち始め、それこそ間欠泉が吹き上がるように、五箇所から水柱が十メートルほど上がる。
それらが薄い水の膜で繋がり、五つの水柱の中心から白い光が湧き上がり〝壊封〟と水面に文字が出た直後、それが真っ二つに割れた。
まるで水面に丸い穴が出来たような渦が生まれる。さらにオレの目は渦の底にある、異質な物が安置されている中心へと釘付けになる。
それはここ、宝ヶ池の本来の役目を果たすための霊脈を安定させるための左手の無い石の仏像であり、それが血涙を流し「オーム!」と唱えた。
耳が聞くのを拒む、軋んだ声が水中へと染み込んだ刹那、水が細切れになり崩れ落ちる。
あまりの光景に眼光鋭く睨みつけ、水が粉々になり穴の中へと転がる様を見たと同時に、仏像は粉々になり砕け散る、が。
その中心から霊力が吹き出し、猿面野郎の持つ気味の悪い赤い懐中時計へと吸い込まれる。
「ククク……確かにキサマはバケモノ。しかし、
右手に持った赤い懐中時計を持ったまま、猿面野郎はソレを起動。
陳腐だが、〝ゴゴゴ……〟と鳴動する空気と共に、ヤツの懐中時計の秒針が逆回転を始める。
「さぁよく見ておくデ~ス! 今度はキサマが後悔と共に、天才たる文曲の真骨頂を見ヨ!! 蘇るがいい馬頭型神工兵機!!」
宝ヶ池の莫大な霊力が可能にしたのか、今目の前で起こっている事態に息を呑む。
先程バックリと半分に割れた巨体が、文字通り時を巻き戻し元に戻る。
ありえない事態に唖然としながらも、その意味を理解し『クソがッ!!』と吐き捨て、未だ抵抗を続ける悲恋を握りしめた。
『だが……まぁ、楽しくなってきたじゃあああねぇかよ! なぁ美琴?』
「くぅ、あなたと……じゃ、なければ……楽しいんだよ」
『口の減らねぇクソアマだ。が、オレは今気分がいいから許してやる。見ろ、さらに
馬頭型神工兵機とやらはもとに戻り、無くした右腕まで復活しやがる。実にいい。
が、それだけじゃ終わらねぇ。なにせこいつぁ――。
『――細胞分裂ってやつかよ。いいねぇ、デカくなってきやがる。それになんだ、マヌケか?』
「ま、待て!! この文曲をッ――ギャアアアアア?!」
一気に膨らんだ細胞の塊。それが想定外だったのか、必死に咒術や短刀を使って肉塊を排除するも、増殖速度について行けずに猿面野郎は呑み込まれる。
さらに完全に呑み込まれると、醜い肉塊が池に鎮座するだけになった。
『おい……冗談だろう? 動け! 動いて
その言葉が通じたのか、醜い肉塊はビクリとうごめく。
デロリと中心が盛り上がり、そこから宝ヶ池にあった神喰の月蝕を作り出した結界のコアたる、赤い懐中時計が出てきた。
どうやらあの懐中時計は夕方に会った、ガキの女が殺されかけた存在と同じ、堕ちた付喪神――〝
それが莫大な霊力を浴びることで主導権を取り戻したのか、猿面野郎は呑み込まれたようだ。
『ハッ。ザマァねぇぜ……で、こっからが本番だろ。なぁ禍神?』
口角を上げながら、赤い懐中時計を睨む。
自我を失っているのか、意味不明な言動と共に一気に肉塊から触手を作り出し、襲いかかってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます