第60話 緒戦
「よし! 《革命軍》は一番やっちゃいけない負けフラグ立ててきた!」
複数の《森の民》の
その報告書によると、《革命軍》は兵力を《
隣に控えていたエクウスとドラックァに声をかける。
「急いでメイリス将軍を呼んできて」
敵が集結する前に、まずはこちらから打って出て痛い一撃を加えて先手を取る、と言い切る僕に、ふたりとも息を
エクウスの目配せを受けて、ドラックァは将軍を呼ぶために部屋から駆けだしていく。
「兵士たちの準備も済んでいます、いつでも出撃可能です!」
力強く言い切るエクウスに、僕はグッと親指を立ててみせた。
「オッケー! メイリス将軍と打ち合わせが済み次第、全軍で出撃するよ!
◇◆◇
「今度こそ、
西の
《革命軍》の
一応、作戦の検討はしたのだろう。《プテラーム
その地図を見下ろす二人の少年──赤紫色の髪を
「って、もしかして、明日にでも《プテラーム城砦》へ攻め込むつもりだったりする?」
「えー、それは
「なに言ってるのよ!」
バンとトリエが卓上の地図を叩いた。
「この前、
肩をすくめるヴィグに、深いため息をつくアルフォール。
「まあ、完全に《革命会議》内での立場は悪くなったよね」
「でもって、ずっと《プテラーム城砦》警戒っていう
ダンダンダンとトリエが
「だーかーら! わたしたちだけで竜宮のヤツをぶちのめしてやるの。そうすれば、アイツらのわたしたちを見る目も変わるでしょ」
「そうだけどさー」
ヴィグが天を
「そもそも俺たちの《異能》って戦闘に関係ないヤツじゃん。どんな泥水も綺麗な飲み水に浄化できる力とか……まあ、兵士たちの飲料水には困らないけどさ」
「そうだねー 僕も農業系の能力だしね。どんな植物からも種を採取できて、しかも確実に育つって力──って、なんでこんな前線にいるんだろ」
やれやれ、と首を振りながらアルフォールはトリエを見やる。
すると、トリエは一瞬言葉に詰まり、ボソッと呟く。
「わたしは、
これ見よがしに、ヴィグとアルフォールは深々とため息をついた。
「……って、なに諦めモードに入ってるのよ! わたしたちの力と目の前の戦いは関係ないでしょ!」
「いや、竜宮のヤツは風を操る力持ってるみたいじゃん? 《風の英雄》とか
「ぶっちゃけ、《風の英雄》って呼ばれるとか、僕は恥ずかしいから遠慮したいところだけど」
その時、ゴウッと音がして一筋の風が天幕を揺らした。
「でも、こんな感じで、風向きとか自由に変えたりできるんだろ」
ヴィグの
そして、二人同時に口を開き駆けた瞬間。
「て、
天幕内の三人は慌てて外へ出る。
その視界の先には、無数の火矢が強風に
◇◆◇
「「
《プテラーム城砦軍》の
その声に応えて兵士たちが放つ火矢を、中央で僕が《
さらに、今回の火矢に使われている
そのため、一度着火したら、そう簡単には消火できない魔法的な炎が燃え上がることになる。
「敵は完全に混乱しているみたいだよ!」
馬上から伸び上がるようにして、ドラックァが敵陣を見つめていた。
その報告を受けて、僕は横にいたメイリス将軍に
「全軍突撃!!」
メイリス将軍が良く通る声で命令すると、その指示が瞬く間に全軍に伝わっていく。
これも僕の《風の声》の効果のひとつだ。
僕が率いる《プテラーム城砦軍》は五千人強の規模、ほぼ全軍で出撃していた。
《革命軍》とは異なり、
その五千人の兵士たちが全力で敵陣へと突っ込んでいく。
逆に矢を射かけられもしたが、僕の《風霊術》による風に押し返されてしまい、そもそも混乱している中での反撃ということもあって、あくまでも
「今だ、
激しくなる戦況、だがメイリス将軍は冷静に兵たちを指揮していく。
さらには、
「お見事です、将軍」
僕は
正直、この戦がはじまるまでは、メイリス将軍は一部隊の指揮官、もしくは城砦の指揮官としては信頼していたものの、大軍の指揮官としては、少し不安で横から口を出す気満々だったのだが、それはメイリス将軍に対して失礼だったと考えをあらためた。
「恐縮です──それで、ここから先ですがいかがいたしましょうか」
手を緩めて敵を逃がすか、それとも徹底的に
「包囲殲滅で」
ここで敵兵を逃がしてやる余裕は僕たちにはない。
徹底的に撃滅して逃げ延びた兵士にも恐怖を植え付けて、《革命軍》全体に広げたいところだ。
もちろん、降伏した敵兵については
ただ、その捕虜については後々の計画ではあるが《革命軍》との交渉の材料にするつもりだった。
「とりあえず、《革命軍》の後続が来る前に目の前の敵を片付けて《プテラーム城砦》に後退しましょう」
可能であれば、このような各個撃破を繰り返して、僕たちの有利な状況に持っていきたい。
だが、さすがに敵も同じ過ちは繰り返さないだろう──僕は燃え上がる敵陣を前に気持ちを次の戦いへと切り替える。
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