第十一章 人質奪還作戦決行
第50話 王都潜伏
僕は《
「それじゃ、エクウスくんを助け出してくるね」
僕たちは《王都》の街中に潜入することに成功していた。
「……王城周りの情報は揃いつつ……あるけど……肝心のエクウス君の居場所が……まだ、つかめない……」
いつも通り背後に立った《森の民》の少女──ディムナーテが、静かに状況を説明してくれる。
そう、《王都》に潜入するにあたって、《
他にも、すでに《王都》で
「あとはエクウスの居場所だけなんだ、その情報さえ揃えば、一気に乗り込んで救い出すことができるのに」
「……そうだね……逃走する手配も済んでるし……本当にあとは居場所を探り当てるだけ……」
僕は小さくため息をついて
この家の辺りは下町の中心部に近い場所だが、それでも、《革命軍》の熱狂ぶりの
正直、この《王都トルネリア》に入る時に正門を通ったが、その道の脇に《王国軍》指導者や貴族、王族たちの首が
さらに
「子供たちを連れてこなくて良かった……」
その僕のつぶやきに、ディムナーテが同感といったように頷き返す。
残酷な光景を見せたくないという思いの他に、僕も含めて《王都》で生活していた《王国の忘れ形見》の子供たちは、どこで知っている人間に遭遇するかわからない。メイドとして働いていたフロースも同様だ。
なので、悔しがる子供たちだったが、僕はキツく留守番を命じたのだ。
そして、僕も《王都》に入ったのはいいが、基本、この隠れアジトで留守番と情報の分析役を担っている。
「ちょっと、手詰まりだな」
んっ、と腕を伸ばす僕に、ディムナーテがお茶を差し出してきた。
「……
「ん、そうだね」
僕はくすりと笑って、ディムナーテからカップを受け取った。
◇◆◇
「最近の調子はいかがですか? お客人」
《王都トルネリア》の北街区、大運河沿いにそびえる《
そこに黒ずくめの
「さっきまで上々でしたけど、たった今、最悪な気分になってしまいました」
そう
コジットもため息をつきつつ、小さい笑みをみせる。
「お元気そうで何よりです。少し、ぼくが《王都》から離れてる間に、ツラい目に遭わせてしまったようで、慌てて帰ってきました。きみに何かあったら
ツラい目にあわせた──それは、《王都》の正門前に並べられた《
エクウスの親族は、そのほとんどが《王都》
それでも、今回
なので、コジットも彼なりに慎重に言葉を選んでいるようだった。
「……それはそれとして、最近、お客人のことを探っている人が増えているようですよ」
どうやら、あと半年先を待てない人がどこかにいるようだ、と、コジットは肩をすくめる。
エクウスが、ゆっくりと立ち上がった。
「まさか、それは……」
「おそらく、北のお方でしょうね。
「それをわかっていて、なぜ、アミコーラ殿は僕にそのことを伝えたのですか?」
金髪の少年のその問いかけに、一瞬、言葉に詰まる黒髪の少年。
すると、全てを悟ったようにエクウスが笑う。
「……そうですか、僕の人質としての価値が無くなってしまったんですね」
「南領の《宰相派王国軍》を壊滅させ、南領自体の制圧も完了しつつあります。そうなると、今度は北領へ全軍を振り分けることができるようになりますし、《セネリアル州》と全面衝突するのも時間の問題ということらしいです」
そうなると、手元に置いている人質は意味を無くしてしまう、というかむしろ邪魔な存在だ。
だったら、《革命裁判》なりなんなりで理由をつけて、
コジットは
「最近の《革命軍》や支持する兵士や民衆たち──彼らはいろいろあって、特に王族や貴族相手に対して正常な判断力を失いつつあります。まあ、結局のところ、僕たちの
「自業自得──?」
いぶかしげに問い返すエクウス。だが、コジットはそのことについては答えなかった。
「──というわけで、せめて、ぼくだけでも冷静に判断し、動きたいと思っているわけです」
「それは僕としてはありがたいかぎりですが、結局のところ、なにをどうすれば良いんでしょう?」
「とりあえず、ぼくの方からアクションを起こしてみました。次は、ドラックァ殿がどうリアクションを見せるか、っていうターンですね」
そう言い残して、一礼してからコジットはエクウスの部屋を後にした。
◇◆◇
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