第31話 急募!
チワ~っす。
カラコンと扉を開いて、冒険者ギルドの中へと入った。
ムワっとした空気が流れる。
もう昼だというのに、ムサ苦しい肉体労働者でいっぱいだ。
周囲をみわたす。
部屋の中央にはテーブルとイスがいくつかある。
正面奥には受付カウンター、右の壁際には依頼を貼り出すクエストボードだ。
これも前の冒険者ギルドと同じだな~。
こっちのほうがだいぶ大きいけど。
「エルミッヒ様。まずは正面の受付カウンターに行きましょう」
「うん?」
受付カウンター? ベロニカにそう言われ、頭に疑問符が浮かぶ。
順番としてはクエストボードで依頼を選んでからカウンターじゃなかったっけ?
「ゴブリンですよ。ここに来るまでに討伐した」
「あ、そうか」
そうだった、そうだった。
たしか四匹討伐したんだよな。その賞金がでる。
冒険者ギルドでは通常依頼の他にも、モンスターに懸賞金がかけられているんだった。
討伐の証明は、ゴブリンなら牙だ。一本だけニョキっと伸びている犬歯を折る。
そいつを受付に渡しゃあ金がもらえるワケだな。たぶん、昼メシ代ぐらいにはなるだろう。
さすがはベロニカ。昼も夜も大活躍じゃないか。
「そっちはベロニカに任せるよ。俺はクエストボードでも先に見とくから」
「わかりました」
メンドクサイことは奴隷に任せるにかぎる。
ベロニカのプリプリしたオケツを見送ると、クエストボードへと向かう。
なんかいい、依頼があればいいな~。
「あれはベロニカか?」
「なんで、あんなやつと……」
なにやらヒソヒソ話が聞こえた。
どうも俺たちのことを言っている様子。
ほう。ベロニカのやつ、意外と人気があったのか。
まあ、あのチチとケツでは無理もないだろう。ただ、違法な奴隷の売買に手を染めていたぐらいだから、けっこう悪かったんだろうな。
強さもあいまって、なかなか口説けなかったってとこか。
フン! 愚民ども。
ベロニカはすでにズッコンズッコンのヌッチョンヌッチョンなのだ。
それが全部俺のモノなのだ。
「おう、おまえ!」
「フン!」
クエストボードを眺めようとしたら変なオッサンに立ちふさがれた。
ジャマなのでとりあえず吊った。
「ホゲゲゲゲ」
オッサンは吊られたまま天井に張りついている。
なんかそういう生き物みたいでオモシロイ。
不思議だね。このヒモ。屋内でも使えるんだ。
いったいどういう原理なんだろう。
オッサンを吊るヒモも、俺が引くヒモも、天井を貫通して上へと伸びている感じだ。
ベロニカはヒモもフックも見えないと言っていた。
たぶん、俺意外には見えないし触れないんだろう。一度吊られたら助ける方法は、俺を倒す以外なさそうだ。
しっかり稼いで奴隷で身を固めないとな。
「な! 飛び上がったぞ」
「アイツ魔法使いか?」
「
またもやヒソヒソ声が聞こえた。
うん、こいうのは
これで、そうそう絡まれることはないだろう。
なになに。
クエストボードを端から眺めていく。
ただ、チームでクエストを受注する場合、その中で最もランクが高い者が基準となる。
俺だったらベロニカが銀ランクのため、銀以下はすべて受けられるってこったな。
とはいえ――
「ロクな
割のいい依頼はすぐに持っていかれる。
こんな昼過ぎまで残っている依頼はみながやりたがらないものばかりなのだ。
「お! 告知タイプの依頼があるぞ」
告知タイプの依頼とは、受注に制限をもうけず、一番早く達成した者、あるいは参加者全員に報酬が支払われるものだ。
とうぜん、クエストボードから依頼の紙をはぎ取らず、そのまま残しておくものだ。
参加型なら受付に一声かけ、早い者勝ちなら達成した時点で受付に完了を伝える。
これも前にいた場所と同じだな。
「ふ~ん。領主からの依頼か」
♢♢♢♢♢
急募!
強盗事件が
暗闇、裏路地などで金品を巻き上げられたという報告が相次いでいるのだ。
主に狙われるのはひとりで行動する者。
冒険者も襲われたと聞く。注意されたし。
犯人は最近よく耳にする『ガズラファミリー』なる、ならず者だと思われる。
ヤツらを討伐するにあたり、領主は冒険者ギルドにも協力を要請をするものである。
成功報酬 銀貨――
♢♢♢♢♢
へ~、強盗集団か。
治安がよさそうに見えてもいろいろあるんだな。
しかし、あれだな。
ガズラファミリーってどこかで聞いたことがあるような気がする。
はて? どこだったか……。
「エルミッヒ様!」
ベロニカが駆け寄ってきた。
ゴブリンの牙の換金が終わったのだろう。
しかし、彼女は立ち止まると「あれは?」と天井を指さした。
「さあ?」
俺が吊り上げた冒険者だな。
ジャマなのでそのまま天井に張りついてもらってる。
「変わった生き物だよな~。トカゲとかクモとかそんな感じのヤツなのかもしれん」
討伐すればいくらもらえるかなあ?
「わたし、あんなに吊られたら、痛くて死んじゃうかも」
ベロニカは血の気の引いた顔で吊られたオッサンを見ていた。
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