第24話 エルミッヒの決断
戦士風の女は冒険者じゃないのか?
だが、すぐそばにあるカバンの中身は、奴隷を従わせるための魔法の首輪。
まさか、こいつも売人側?
ありうるよな。用心棒的ポジションか、実はボスとか。
どっちだ? どっちだ? どっちだ!?
一瞬考えた俺は女に近づくと……ガチャコンと首輪を装着してやった。
カバンの中から拝借したものだ。
そして、魔力を流す。
よし、
奴隷女をズルズルと引きずっていく。
どこか安全なところで治療しよう。
そして、傷を完治させるのだ。
いや~、壁となる前衛がほしかったのよねー。
ほら、フックの能力って一人にしか使えないから。
コイツが売人側だったら自業自得だし、たとえ冒険者側だったとしても、それはそれで。
これで情報も得られるし、戦力も得られる。それに女だから……ムホホ!
やったるで~!!
――――――
あれから三日経った。
女はまだ目を覚まさない。
その間、俺はかいがいしく看病した。汗を拭いたり水を飲ませたり。
もちろん、魔法で傷の回復も加速させた。その甲斐あって女はかなり回復したようだ。
そろそろ目を覚ましてもいいと思うんだがな。
しかし、困ったことに食料が底をついた。そろそろ外に調達しにいかなきゃいけない。
ここは洞穴の中だ。入口を枝や草で見えないように塞いでいるが、目を覚まさないままの女を置いていくのはイヤなんだよなあ。
「う……」
女がうめき声をあげた。
だが、まだ目は覚まさない。
この女、年のころは20前後だろうか、かなり引き締まった体をしている。
髪の色はブラウン。目鼻立ちはクッキリしており、なかなかの美人だ。
だが、気の強そうな印象は受ける。
う~む。これはかなりの掘り出し物の予感だ。胸もシリもおっきいし。
「うっ」
不意に女が目を開いた。
まじまじと覗きこんでいた俺と目が合う。
女は瞬時に横へ飛びのいた。
速い!
まさに電光石火だ。遅れて女の上にかけていた毛布がフワリと地面に落ちる。
いいねえ、すごくいい。これは期待がもてるんじゃないか?
「おはよう」
そう声をかけるも、女は俺から目を離さないままジリジリと後退していく。
そのまなざしは非常に鋭く、警戒しているのは明らかだ。
怒り、困惑、疑い、驚き、いろいろな感情が見てとれる。
ただまあ、素っ裸なので、なんかオモロイ。
「まっ、とりあえず服でも着ようか」
俺は洗って乾かしておいた女の衣類を指さすのだった。
コップに入った水を手わたしてやる。女は素直に受け取った。
だいぶ落ち着いたようだ。
最初、すぐには服を着ようとはしなかった女だったが、自分の首に首輪がついていることに気づくと、納得したような、諦めたような表情になったのだ。
「名前は?」
「……ベロニカ」
こちらの質問にもちゃんと答えてくれる。
「状況は理解できてるか?」
「ああ、わたしはお前の奴隷になった」
間違っていない。が、なんか俺が人でなしみたいでイヤだな。
「ちょっと違う。死にかけたお前を俺が助けたんだ。そりゃあ、精魂込めて看病したんだぞ。その過程で、なんとなく首輪がついてしまったんだ。わかるか? なんとなくだ」
「……」
返事はない。
だが、表情から全く納得していないのがすぐに分かった。
当たり前か。
「すまん、今のはウソだ。お前が気に入った。だから俺のモノにしたかった」
「……」
これまた返事はないが、なんとなく納得しているような印象を受けた。
もういいや。取り繕うのはやめよう。俺は自分の欲求に素直に生きることにしたのだ。
がんばって魔王を倒しても、褒められるどころかこの始末だからな。
どうせ怒られるなら、やりたいことを好きなだけやって怒られるほうがマシなのだ。
「お前たち争っていたな。その経緯を教えろ」
俺がそう尋ねると、女はポツリポツリと話しだした。
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