16話 蘇る記憶
突然首飾りから聞こえて来た声に羽白は手を引っ込めた。
「……っ!」
羽白は机から後ずさり、安曇を庇う。
「……、何で声が、」
羽白の困惑した声が聞こえたらしく、再び欠片から声が響いた。
『私の声が聞こえるのですね…!私は、ウィザーリア王国の王室召喚士を務めているベルナデット・シュナイダーと申します』
「…ウィザーリアだと…!」
「ウィザーリアって…」
「……俺の国だ」
羽白と安曇は机の上の首飾りに近づいた。
ベルナデットの声は続く。
『あなたが恵斗を助けてくれたお方…羽白様ですね?』
ベルナデットに名前を呼ばれた羽白は驚いた。
「!何で俺の名前…、恵斗の事も知っているのか?」
『はい。2人が命を落とす前にやむなく私が別の世界へ飛ばしました』
「じゃあ…この世界には、あんたが?」
『はい。…恵斗と未斗は双子の兄妹です。風と星の民…本来交じり得ない民の間に生まれた『奇跡の子』…2人はいずれ、2つの村の架け橋になるでしょう…そして、特に恵斗は…2つの村だけではなく、この国を救う存在になりうる子どもなのです』
「未斗…」
恵斗がその名前を呟いた時、頭の中を走馬灯のように色々な記憶が駆け巡った。
赤い燃えるような髪をした父。透き通るような碧髪の母。そして母と同じ髪の色をした、いつも一緒にいた小さい女の子。
あの日…家にたくさんの人がやって来た。
皆母と同じ碧髪の人ばかりだった。
いや、それよりも少し前…怪我をした人が家にやって来た。
その人もやっぱり、母と同じ髪の色だった。
「茅、彗!!逃げろ!!村の奴らが来る!!」
「颯様!」
「兄様…!?酷い怪我!」
あの怪我をした人が、きっと母と羽白さんの兄…颯さんだ。
扉の辺りで話す3人を小さい自分は見上げていた。
そしてその自分の背中に隠れていた…未斗。
「未斗…、俺の、双子の妹、」
恵斗の記憶が段々と蘇って来る。
その後父に連れられて、未斗も一緒に家の近くにある小さい納屋に向かった。
「とと様か、かか様が迎えに来るまで2人でここにいるんだ。すぐに来るからな」
頼んだぞ恵斗、と父に言われて頷いた。
結局それが父との最後の会話になった。
父の言う通り、すぐに帰って来ると思っていた恵斗は
泣いている未斗を慰めながら納屋で迎えを待っていた。しかし父はとうとう帰って来なかった。
次に納屋の扉を開けたのは…。
「…羽白さんだった、」
気がついた時、恵斗はその場に立ち尽くしていた。
恵斗はなくしていた記憶を全て思い出したのだ。
「恵斗…、あなたまさか、全部思い出したの?」
「…はい」
記憶を取り戻した恵斗の髪は、元々の黒髪ではなく完全に碧髪に変わっていた。
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