第43話「償いと浄化の旅・1-2」三章・番外編



生まれた時から罰を受けているようだった。


実母はわたくしを産んですぐに亡くなり、父はわたくしを「母親殺し!」と言って罵った。


父に粗雑に扱われるわたくしを見ていた使用人たちも、わたくしを軽んじるようになった。


それでも父が再婚するまでは家庭教師の先生をつけてもらえたし、ドレスも貴族の令嬢らしい物を着せてもらえた。食事も父と一緒に取ることができた。


あの頃は幸せだったのだと、今ならわかる。


父が継母と再婚してから、この家にわたくしの居場所はなくなった。


父は継母と義妹と四人で食堂で食事をするようになり、わたくしは使用人たちと一緒にキッチンで食事をするように命じられた。


父は継母と義妹を連れて四人で、観劇や食事に出かけていた。


父は継母や義妹と話すときはとても嬉しそうに笑っていた。


父がわたくしと話すときはいつも眉間にしわを寄せ不機嫌そうにしていたので、父がよく笑う人なのだと父の再婚後に初めて知った。


疎外感は感じていたが、それでも父が生きている間はまだましだった。


父が亡くなると、すぐにわたくしは物置き部屋に移され、ドレスのほとんどは姉たちに奪われた。


そして使用人の仕事をするように命じられた。


洗濯、掃除、薪割り、お風呂の水汲み、お皿洗い、お料理、裁縫……仕事を上げればきりがない。


日が昇る前から働き、その仕事は深夜まで続く。


粗末なベッドでは疲れも取れない。


「どうしてわたくしがこんな生活を強いられるのですか? わたくしも伯爵家の娘です!」と言って、一度仕事を断ったことがある。


その時は継母に頬を思い切り叩かれた。


それでも伯爵家の血を引くのはわたくしだけなので、わたくしが伯爵家を継ぐと思っていた。


しかし、それは間違いだったと知ることになる。


一番上の姉が伯爵家の親戚から婿養子を取り、家を継ぐことに決まった。


いったい、いつまでこの生活が続くのかしら?


わたくしが何をしたというの?


前世の行いが悪かったというの?






わたくしが十八歳のとき、わたくしに縁談が舞い込んだ。


縁談……? そんな縁起のいい話ではない。


継母と義妹が散財を重ねたせいで伯爵家の財産は底をつき、今は借金まみれ。


わたくしは彼女たちの借金のかたに裕福な貴族に売られることが決まったのだ。


無論、わたくしに拒否権はない。


嫁ぎ先は名門公爵家。


前々妻も前妻も若くして謎の死を遂げている。


彼女たちの死は、表向きは病死ということになっているが、本当は公爵に暴力を振るわれ、そのことが原因で亡くなったという黒い噂がある。


「お前は、社交界で何人もの男をたぶらかしたそうじゃないか!?

 それでは飽きたらず若い使用人とも関係を持っていたそうだな!?

 この阿婆擦れ!

 そんなふしだらな女には俺が罰を与えてやらないとな!!」


公爵家に嫁いで、夫に初めて言われた言葉がこれだった。


そしてわたくしの頬を思い切り叩いた。


社交界で複数の男と関係を持っていたのは、一番上の姉だし、使用人に手を出していたのは二番目の姉だ。


二人はわたくしに罪をなすり付け、わたくしの不名誉な噂を流したのだ。


公爵は来る日も来る日も「しつけ」と称してわたくしに暴力を振るった。


ある日、公爵にいつもより強く殴られた。


そして……運悪く倒れた拍子にタンスの角に頭をぶつけて……死んだ。


その日はわたくしの二十歳の誕生日だった。










『まだだよ、まだ君の罪は消えてない。

 もう一度生まれ変わって罪を償うんだ』


ふわふわとした感覚のなかで、わたくしはそんな言葉を聞いた気がする。





――転生一回目・終わり――




※この話だけだと救いがないですね。

デルミーラの転生物語はもう少し続きます。

救いがある終わり方にしますので、もう少しお付き合いください。



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