第33話昇級戦・次戦上
二回戦の相手は先ほどの筋骨隆々のゴリラとは異なり、金髪碧眼の細身のイケメンが入場してくる。
すると女性達からの黄色い歓声がワッと沸きあがる。
「ちッ――――」
俺はこういう誰からも好かれるタイプのイケメンが大嫌いなんだ。
コイツもコイツでファンサービスのように、ニコニコとした笑顔のまま観客席に向けて、笑顔を振りまきながら手を振っている。
お前はアイドルか!
俺の苛立ちに気が付いたのか愛想を振りまくのを辞め、こちらを値踏みするようにジッと見つめる。
「君凄いね。一年のこの時期でもう上位クラスに昇級するなんて才能あるんだね」
「はぁ……ありがとうございます」
いきなり褒められるとは思わなかった。兄達が無双していくせいで、俺は完全に
こうして外面だけの言葉でも褒められる経験は余りないのだ。
「言葉で語らうのも僕は好きだけど……やっぱり魔剣士たるもの剣技で語らうのが、その人の人となりを良く知れると僕は信じているんだ。君はどうかな?」
「俺は特にそう言うのは無いですね。強いて言うなら過ごした時間でしょうか?」
「面白い。君の全てを僕に見せてくれ!」
「東は! マイケル・フォン・スパロウ! 対する西はアーノルド・フォン・クローリー! 両者互いに卑怯な手段を用いないことを国王陛下及び神に誓うモノとする……」
審判役の教師が決まり文句を口にする。
審判役の教師の手刀が振り下ろされると同時に、互いに剣を抜剣し剣を構える。
対するマイケルは上段。俺は中段と、構えこそ違うものの相手の構えから察するに、見かけによらず随分と攻撃的な剣術を好むようだ。
俺も相手も互いの得物は
「アレ……使わないの? その曲刀?」
マイケルは上段に構えた剣は少し下げ、今は戦う意思はない事を言外に示した。
ならばと俺も剣先を少し下げて、こちらも今は戦う意思がない事を示す。
「曲刀……ああ、刀の事ですか。そうですね今はまだ抜くつもりはありません。先輩方と違って切り札は最後まで取っておきたい質なもので……」
「聞いている話に比べて随分と秘密主義者なんだな君は、まぁいいさ僕の実力で君本来の得物を抜かせるまでの事!」
声高らかに宣言すると、マイケルの姿が揺れる。
次の瞬間にはマイケルが直ぐ目の前に現れていた。
(コイツ、スピードアタッカーか!)
今の俺では速度は完全に劣っている。勝機を見出すにはそれ以外の全てを用いるしかない!
【
完全に想定外の速度だが技術では俺の方が格上だ!
迫りくる袈裟斬りを逆袈裟斬りを当てる事で、マイケルの攻撃を
剣を打ちあげがら空きになった胴体目掛けて、【
ドン!
「かはっ――――!!」
マイケルは回避する事が出来ず俺の拳を受けるが、意識を失う事無く冷静に【
見たところ相手の
「魔剣士同士の戦いで、まさか格闘術を使われるとは夢にも思わなかったよ……」
「まぁ俺は一族の中でも異端児でしてね。異国の刀剣や武術、食、文化に目がないんですよ。格闘術もその一環でして……たしかルールでは『魔力を纏った攻撃』であれば問題なかったハズですが……先輩が不服であると言うのなら、仕切り直すか四割程度、
「いや。結構! 君の本気を見せて貰うぞ!」
マイケルは力強くそう宣言し、剣を構え試合を続けようと言外に促す。
俺も剣を構え直し互いのアイコンタクトで試合を再開した。
互いに【
大きく振りかぶった剣が互いに交差しぶつかる。
「「はぁぁああああッ――――!!」」
鍔迫り合いが起こり剣を握る手に力が入る。
ギチギチと刃が相手の刀身に食い込んでいくのが分かる。剣を見ても凡夫の作品でない事は一目瞭然だが、刀鍛冶としての腕でも俺より劣る鍛冶師の作品だと分かる。
「お返しだ!」
マイケルの宣言の後、太腿に痛みが走る。左脚による蹴りにより膠着状態が崩れる。
「――――ッ!」
(不味い!)
その場で防御魔術を発動させながら後方へ飛び退く――――
刹那。
次の瞬間には右からの横薙ぎが放たれて、俺の防御魔術を簡単に破壊した。
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