第49話修羅場
煉瓦造りの立派な店の
店内は温かみを感じる化粧板で覆われており、所々見える煉瓦がお洒落に見える。
「やぁ! アルタ昨日、
アルタの顔色は酷く、いかにも徹夜続きの社畜と言った様子だった。
「アーノルド来てたの? ごめんなさい。今忙しくて……」
そう言った彼女の手元には、手縫いの洋服が置かれていた。
「裁縫ならお針子さんにお願いすれば良いじゃないか? 君はデザインを起こすまででいい。ううん、アルタの性格を考えても
アルタの忙しさを見て俺はそう呟いた。
そして
その高い専門性が故にパタンナーと言う専門職まであるぐらいだ。
「確かに私の本分は宝飾職人だけど……革や洋服まで自分で作らないと気が済まない完璧主義者なのよ! 足元から頭までコレが私の掲げるブランドコーデなのっ!」
アルタは力なく擦れた声で叫んだ。
無理、無茶、無謀……それでもクリエイターにはやらなきゃいけない時がある。きっと彼女にとっては今なのだろう……
「分かった。山場いつまでだ?」
ミナの剣の装飾の件では無茶を言った。その責任が俺にはある。流石にデザインを起こしたり、
「遠方からの依頼で間に合いそうにないのは、二枚ぐらいかな……あとはまだ時納期まで間あるし……」
衣装二枚なら以前やった事があるレベルだ。二人でやれば終わる。
「俺も手伝う!」
「けど!」
アルタは語気を強めて否定する。俺だってそうだ、「出来が悪いから誰かが残りやるから」と言われたら、クリエイターなら自分だけで完成させたいと言う欲は絶対にある。
その感情を否定するつもりは全くない。だが、クリエイターではなく、経営者としてのアルタの理性は不味いと思っているだろう。だから俺はソコを突く……
「間に合いそうにないんだろ?」
「――――っ」
否定の言葉も肯定の言葉も何も出ないようだ。
鞭のあとは飴だ。
ここで畳みかける!
「何年幼馴染をやってると思っている……俺に裁縫を仕込んだのはお前だろう?」
俺はそう言ってアルタの手を握る。
「……お前の
力強い言葉でアルタに声を掛ける。
「分かった。手伝って、アーノルドが手伝ってくれれば1.3人分の作業が進む! 今夜は眠れると思わないで!」
1.3人分って何気にヒドイな……俺0.3人分の戦力しかないじゃん。まぁ本職でもない俺が0.3人分の戦力と言うのは、喜んでいいモノか少し悩む。
「もう少しニュアンスが違うと嬉しいんだけど……」
俺は茶化したように笑う。暗く落ち込んだアルタの心を明るくするべく軽いネタをかます。
「馬鹿言うんじゃないわよ。何年幼馴染してると思ってるのよ」
「それもそうだな」
ジョークとは言え踏み込み辛い部分に踏み入ってしまった。
「今度お礼してあげるわ、暇な時に新しい靴と初めてだけど革鎧作ってあげる。冒険者してるんだし鎧ぐらい着ないとね」
「いいのか?」
「いいわよそれぐらい。お祝い事やお祭り時が一番忙しいけどそれ以外は暇だもの、新しい事に挑戦したいのよ……」
昔みたいに大きな毛布に二人で包まれながら、針を刺して糸を通していく……
毛布からは太陽の匂いがするし、隣からはアルタの……女の子のニオイもする。
俺は出来るだけ意識しないように気を付けながら、一針、一針丁寧に縫っていく……気が付くと朝になっていた。
昼になる頃には作業は終了し、ロースとモモ肉のステーキとヒレカツ、筋とアバラで出汁を取っと煮込みを二人で平らげ、俺は家に帰る気力も起きずに、徹夜明けのアルタと一緒にベッドで気絶するように意識を失った。
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【あとがき】
まずは読んでくださり誠にありがとうございます!
今の作者には、これぐらいのラブコメ成分が限界や……
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