2話 仲間と協力!
「メグ、ちょっといいかな?」
メグムが臨時教室から帰ってくると、ハナはメグムに話を切り出した。
「さっき、食堂で話してたことの続きなんだけど……。私は、練習をメグムに協力してほしい……!」
そう言うと、メグムは不思議そうな顔をする。
「どうしたの、あらたまって。えっへへ。私はそのつもりだよ、ハナ?」
「だからね、私にも、メグの練習を手伝わせてほしいの……!」
ハナは言葉を続ける。
「メグは歌とダンスの教室を中心に受けてるでしょ? だから、私に、歌とダンスを教えてほしい! 私は卓球教室を中心に受けてるから、リンリン先生から教わった技術とかをメグにも教えるよ! お互いに、臨時教室があるときは、遠慮せず、そっちに参加する! そうやって、私は、メグと一緒に成長していきたい!」
「ハナ……」
「だって、私も、メグのウィナーライブが見たいもん! 私も、たっきゅーと!のアイドル、美甘メグムのファン1号だから……」
すると、ハナはメグムに抱き着かれる。
「えっへへ。ありがとうね、ハナ。私のことを考えてくれて……。うん、私も、ハナと一緒に成長したい」
「こっちこそ、ありがとうねメグ。また受験のときみたいな練習の復活だね!」
ハナとメグムはお互いに顔を見合わせて笑い合う。
「それなら、朝のランニングも復活させよう! えっへへ。たっきゅーと!には体力が不可欠だからね!」
「ええ! う、うん! 頑張る!」
「ううん、どうせなら、いまからランニングをしよう! 汗をかいたら、お風呂に行けばいいもんね! さぁ、行くよ、ハナ」
「えええっ! いまから!? 待ってよメグ~!」
勢いよく部屋を飛び出すメグムをハナは追いかける。ハナは懐かしさを感じながら、メグムの後を追った。
☆ ☆ ☆
「リンリン先生! ちょっといいですか?」
卓球の教室のレッスンが終わったあと、ハナはリンリンに声をかける。
「どうしたアル? ハナ」
ハナは思い切って、質問をする。
「カットマンに勝つためには、どうすればいいと思いますか!」
それを聞いて、リンリンは不敵に笑う。
「次のイベントのことアルネ? 聞いてるアルヨ、愛歌は強敵ネ。でも、ハナも負けてないアル。たくさん私の講義を受けてくれるお礼に、ヒントをあげるアル。今日の夜に、体育館にくる。いいあるネ?」
「え、いいんですか! ありがとうございます!」
リンリンの思わぬ返答に、ハナは目をか輝かせる。
「素直でよろしいネ」
そう言って、リンリンはハナに手を振り去っていった。
(ヒントって、何を教えてもらえるんだろう……!)
ハナは夜が待ちきれなかった。
☆ ☆ ☆
夜。
ハナは体育館へと行くと、明かりがついており、扉も開いていた。中に入ると、一台の卓球台と、ユニフォームに身を包んだ、リンリンがいた。
「よくきたあるネ。さっそく、始めるアル」
ハナはラケットを取り出す。
「見たアルヨ。入試のときの試合。いい試合だったアル」
入試のときの試合というと、ハナが愛歌に負けてしまった試合だろう。
「でも、ハナの卓球には、プレイスタイルがないアル」
「プレイ、スタイル……?」
「そうネ。わかりやすい例を出してあげると、天使歌羽、茉子シュバインシュタイガー、美甘メグム、天使愛歌には、プレイスタイルがアルネ。わかるアル?」
その四人のプレイスタイル。ハナは考える。
「歌羽さんは、天使のような軽いフットワークとボールタッチに、『デビルフェイク』を使って、相手を惑わすスタイル。茉子さんは『春夏秋冬の舞』から多彩なドライブを仕掛けるドライブマン。メグは、一球を冷静にプレイできて、表ソフトから繰り出される『オレンジスプラッシュ』は強力です。愛歌は、歌羽さんと同じようなフットワークを持つ、攻撃もできるカットマン……」
「うんうん。いいアルネ。じゃあ、ハナは?」
「私は……」
ハナは、自分のプレイスタイルを考えて、あらためて、特徴がないことを知る。四人と比べると、一目瞭然である。
「楽しいことだけを、ずっと取りいれて、打ってきました。特にプレイスタイルとか、なかったんですね。私」
そう言うと、リンリンは笑う。
「よくわかってるアルネ。自分のことを。ハナが自分で意識する必要があるのは、そのスタイルアル」
「そのスタイル……?」
ハナは良く分からず、首を傾げる。
「楽しいことだけを、取り入れる。簡単そうに見えて、誰でもできるわけではないアル。試合で見せた、歌羽の『デビルフェイク』。恐ろしいセンスであると、私は思うネ。それを、これから伸ばすアル、ハナは」
リンリンはラケットを握り、台につく。
「いまから、今晩で、カットマンの技術の基本をハナに叩き込むネ」
「カットマンの基本を……?」
どうして、カットマンの基本を自分が学ぶ必要がるのだろう。ハナは困惑する。
「時間がおしいから、いくアルヨ、ハナ!」
ハナは、まだ、リンリンが伝えてくれていることをいまいち呑み込めていなかった。それでも、ついていこうと思った。
「はい! お願いします!」
☆ ☆ ☆
気づけばハナは、体育館の床にあおむけになって寝ていた。どれくらい時間がたったか、わからない。それでも、
「これが、私のプレイスタイル……」
ハナは、すがすがしい気持ちだった。卓球の見方が、新しく変わる感覚。
「ハナには、説明するよりも、体験してもらうほうが、はやかったアルネ」
リンリンは腕をくんでハナに微笑んでいる。
「でも、いいんですか? 私ばっかり、ここまで教えてもらって……」
リンリンの指導はとてもありがたかった。それでも、自分ばかりがこんなにも好待遇でいいのだろうか。
「別にハナだけじゃないアル。お願いされれば、誰にでも平等に教えるのが、講師ネ。愛歌にだって、特別なレッスンを教えたアルヨ」
「そうなんですか! 愛歌も」
「きっと前よりも、強敵になってるネ」
ハナは、少しほっとした。自分ばかり、ずるい気がしていたのだ。そして、燃えてきた。
(愛歌も、もっと強くなってる……!)
リンリンの講義を受けて、強くならないわけがない。自分で経験したからわかる。
ハナは身体を動かそうとするが、疲労感がすごい。それでも、なんとか立ち上がると、リンリンに向かって深々と頭を下げた。
「ありがとうございました! これから、もっと卓球が楽しくなりそうです!」
「ふふふ。それは良かったアル」
そう言って、リンリンは笑ってくれた。
ハナは、愛歌とたっきゅーと!をするその日が、とても待ち遠しくなった。
☆ ☆ ☆
食堂での夜ご飯を終えると、ハナとメグムは、お互いに臨時教室がないときに、イベントに向けての自主練習を始めた。
内容は、『フラワーギフト』のウィナーライブの練習と、卓球の練習を日によって交互に行っていく。
今日は、『フラワーギフト』の練習の日だった。
「えっへへ。今日はスペシャルゲストを連れてきたよ、ハナ!」
ダンスルームの中で、メグムは得意げに笑う。
「スペシャルゲスト……?」
「私だよ、ハナ!」
そして、現れたのは、エミだった。
「エミ! エミも一緒に練習してくれるの?」
「もちろん! ダンスには自信があるよ!」
エミは一回転をして、ポーズを決める。動きはキレキレだった。
「えっへへ。歌は椿先生に教えてもらって、私も自信があるから、ドリームチームだよ!」
メグムはハナに小さくピースを作る。
「すごく心強いよ! なんか、もういま前よりもいいライブができそうな気分だよ!」
そう言ってハナは笑う。
「よかったら、私も練習に混ぜてくれませんか? 二人の技術にも、興味があります」
ハナが振り向くと、そこには愛歌がいた。
「愛歌! もちろん! よかったら、一緒にウィナーライブの練習をしよう!」
メグムとエミも頷いている。
ハナは、すごくいい仲間に恵まれたと思った。みんなと一緒にどこまでも成長できる気がした。
☆ ☆ ☆
次の日。
ハナとメグムは自主練習のため、卓球ルームに集まっていた。
「今日は、私がスペシャルゲストを連れてきたんだ!」
「スペシャルゲスト……?」
今度はメグムが首を傾げる。
「そろそろくると思うんだけど……。あ、きた!」
ハナが入り口の扉を見ると、そこには愛歌がいた。
「今日はよろしくお願いします。ハナ、メグム」
愛歌を見て、少しメグムは驚く。
「二人とも、いいの? 今度試合があるのに……」
心配そうにしているメグムとは裏腹に、ハナと愛歌は顔を合わせて笑う。
「大丈夫だよ! お互いに、手の内を見せることはしないし」
「それに、練習できる相手がいるのは、嬉しいことです。メグムとも、一度一緒に打ってみたいと思っていましたから」
それを聞き、メグムは安堵する。
「あれ、みんないる! わ、私も混ぜてもらってもいいかな……?」
そこに、少し遠慮がちにエミが現れた。
「えっへへ。そんなに気を使わなくても大丈夫だよ! 一緒に打とうエミ」
メグムが笑いかけると、エミは嬉しそうに喜んだ。
最初はハナとメグムだけで行われていた自主練習も、次第に、エミと愛歌が参加するようになった。それぞれの持ち味を発揮し、練習の密度はどんどん濃いものになっていった。
何日も、レッスンと自主練主を続け、そしてついに、イベント当日を迎える。
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