第57話 決行の夜に

057 決行の夜に


「皆、聞いてくれ」それは晩飯を用意しているときだった。

死神の鎌のリーダーが言った。

「皆も感じていると思うが、このまま、前進することできないと思われる、領主様の命に背くことになるが、皆の命のほうが大事だ。明日撤収を開始する。今日は、明日に備えて、英気を養ってくれ。特別にオーク肉のスープを作ったので、皆で食べよう、酔わないぐらいなら酒も飲んでよい。ああ、荷もちの者もスープを食ってくれ」いままでにない、下種1号の優しい言葉。あまりにもあからさまだな。遠くであざ笑う男がいたことを知る者はいなかった。


「おお、たすかった」ほとんどものがこう考えただろう。

そして、このリーダーが本当はいいやつなのかもと誤解した人間も多くいたに違いない。

人間とは、自分の都合のいいほうに考えてしまう存在なのだ。

それが、罠であるとしても。


特製のスープには特製の出汁が入っていた。

少量の睡眠薬で十分だった。皆は極限まで疲れていたのだ。

ぐっすり寝入ってしまう。

彼らもそれを食べていた。食べないと疑われる可能性があるからだ。

だが、彼らは、解毒薬を先に飲んでいたのである。


「よし、荷物は持ったか」

「ああ、大丈夫だ」

死神の鎌が4名、そして、アンジェラのいたパーティーのリーダーと前衛の2名と眠ったアンジェラであった。


さすがに戦闘になれば、死神の鎌だけでは、対処できないため、仲間が増えたのである。

セーフティーゾーンを抜け出す彼ら。

後に残された者たちだけで、40階層の転移装置まで、たどりつくことは難しいと思われた。

ここに来るまでに、盾として使われ、戦闘の主力になる前衛たちが死亡または負傷しているパーティーが多かった。


・・・・・

「何とかたどりついたな」

そこは、41階層のセーフティゾーン。

彼らは、宝箱の宝物と、アンジェラを担いでやってきた。

必死で戦闘をさけて、やってきたのである。

アンジェラは、さらに睡眠薬を増量して、ぐっすり寝ている。

「さあて、やっとお楽しみの時間だ」ここにいる女性はアンジェラだけだ。

他は皆男ばかりである。


「寝ていて、反応がないのは少し寂しいところだが、起きたら厄介な強さだろうしな」

「俺たちもやっていいですよね」それは、彼女のパーティーのメンバーだ。下種3号だろうか。

「ああ、俺たちの後にならいい。まずは俺からだ、死んだカカバの弔いにもなるだろう」

カカバとは初めからアンジェラに絡んでいた男だった。


「リーダーは早いから俺たちの番はすぐ来るぜ」と別の鎌の男。

「ハハ、早く番が来すぎて驚くかも」

「黙れ、たたっきるぞ」

リーダーは、ぐったりしているアンジェラの皮鎧を脱がす。

甘い、いい匂いがする。

「やっぱり、いい女はにおいまでいいぜ、息子がたぎってきたぜ」


獣の宴が開かれようとする夜であった。

しかし、遠くからその様子を覗いているものがいたのである。


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