第54話 レイド部隊の階層守護者攻略戦

054 レイド部隊の階層守護者攻略戦


扉は巨大だが、押すと勝手に開いていく。

ギギギ、ガシャン!部屋の中は薄暗く、ボスの姿はその奥にいるため識別はできない。

すでに、戦いは終わり、その前に戦っていた者の残滓はない。


銅級冒険者ではどのように戦ったところで勝つことなどは不可能。

アンジェラは、流れる涙を抑えることができなかった。


こんなことなら、無理にでもパーティーを組んでおくべきだった。

恥ずかしさに負けた自分の所為で彼を死なせてしまった。

自分の指導官(といっても、アンジェラは優秀だったためにすぐに終わってしまった)だった頼りなさげな男。一言でいうとさえないおっさん。しかし彼女は何故かこの男に心惹かれていた。この殺伐とした世界で、この男は本当の意味で優しかったからである。

人の身を案じる男、この世界では数少ない希少種であった。


現パーティーのリーダーは今回のことを不問に付すという。

こんな身勝手な男がリーダーだったとは、なんと自分の人の見る目のなさよ。

アンジェラは歯噛みした。


このレイドが終わったら、この街を出よう。彼女は心の中で決めた。


「よし行くぞ!」死神の鎌のリーダーが号令をかける。

金級以上の冒険者たちは、先頭に立って皆入っていく。

さすがに、自分だけで引き返せるような深度ではない。

行くしかなかった。


ギギギ、ガシャン!今度は閉じ込めるためのその音が冒険者に重くのしかかる。

ここでは、生き残るために勝たねばならない。

勝って出ていかねば、死んでこの迷宮に消えることになる。


LV35オーガジェネラルとLV30オーガソルジャー3体、LV25オーガメイジ、そしてLV20オーガクレリックが部屋の奥の間から出てくる。


オーガはオーク程、大きくない。

しかし、とても筋肉質だ。

LV35オーガジェネラルは、それ以外のオーガよりも一回り大きかった。

「ガーーーー」吠えた。

銀級冒険者の一部はそれによって、恐怖のためしびれた状況に陥る。

「散開、メイジとクレリックをつぶせ、俺たちはソルジャーを止める」

さすがに、数十名のレイド部隊だけあった。

そして、プラチナ級の冒険者たち。6人の死神の鎌が、ソルジャーを止めている間に、メイジ、クレリックが倒され、欠片となって飛び散る。


負傷した冒険者は下がり、治癒の魔法を受ける。

その間は新手の冒険者が受け持つ。


死神の鎌のメンバーは今度はジェネラルの攻撃を開始する。

ほかのレイドメンバーはソルジャーを取り囲んで、弱らせていく。


それでも、プラチナ級の昇給条件たるオーガであった。

ソルジャーの攻略で冒険者が3名返り討ちに合う。


「死にさらせ!」オーガジェネラルにハンマーが襲い掛かる。

今回のミスリルゴーレム用に、ハンマーを持ってきていたのである。

ジェネラルの左腕のカイトシールドが砕け散る。

さすがに、6人に囲まれていては、避けようがなかったのである。

そして、左腕も折れてしまう。


「ガーーーー!」

「もう一息だ!」死神の鎌のメンバーとそれ以外の冒険者の前衛がさらに熾烈に襲い掛かる。

ジェネラルの怒りの蹴りが、冒険者を一人を死体へと変える。

しかし、背中に剣が突き刺さる。


「ッグ」さすがに強健なオーガジェネラルといえども、内臓まで達する傷では、血を吐き、膝をつく。

「もう一押しだ!」

鎌のリーダーが叫ぶ。





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