第15話 階層ボスの部屋

015 階層ボスの部屋


やっとのことで、即席パーティーは整った。

ジン、ゴブリンLV10、ゴブリンLV8、エンジェルLV10だ。

モンスターカードの展開は3枚までと決まっているらしい。


エンジェルは、まさに羽の生えた、頭に金色の輪っかがのっかている。真っ白な人だ。

いや、人じゃないな。天使だ。勿論カードにその姿がえがかれている。

なかなかに、うまい絵だ。このレベルの絵だと、コレクターもこのカードを集めるだろう。というような、描きっぷり。

しかし、その分ゴブリンも非常に醜く、キチンと描かれている。

はっきり言って、あまり見たくないほどリアルだ。


ゴブリンは、緑の小鬼だ。

だが、ゴブリンもエンジェルも眼が真っ赤で怖いです。

意思疎通はできそうだ。スライムのように、勝手にとびかかったり、どっかに行ってしまうということはないようだ。


ゴブリンの武装は石斧と短剣、エンジェルは弓である。

エンジェルは治癒魔法もできるらしいので後方で頑張ってほしい。


このパーティーで10階の階層ボスの部屋を突破する!


巨大な石の扉が待ち構えている。押せば開く。自動的に開いていく。

そして入れば、ボス敵を倒すまでは出られない。

一定時間はいらないと扉は、また自動的に閉じるのだが。


死してしかばね拾う者なし。死して屍拾う者なし。

かつて、このような科白があった。

つまり、死んでも知らん。と命令権者が使い捨てだよという告知。

そして、自分達の覚悟でもある。死んでも墓に入れてもらえない切なさを覚悟しているということである。


敵はゴブリンジェネラルLV10、ゴブリンソルジャーLv5 3体である。

いわゆる、ゴブリンの上位個体群である。

ジェネラルはソルジャーよりも上位職である。

同じレベル10であれば、上位種の方が強い、かなり強い。

それが、この世界の掟。


そう、掟だ。

強いものが、弱い者から奪う。

弱肉強食。この世界で29年間味わった。真実の掟。そこには、人権などと甘いことを言う人間はいない。なら、お前が代わりに死んでやればよいといわれる。異世界転生には、このような非常に厳しい側面が存在する。


ファンタジー世界だが、物理法則は全く現代社会と何ら変わらない。

現代社会の方が、まだセーフティーネットが存在する。

たとえ穴だらけでもな。


だがこの世界にはそんなものはない!

強い者が勝つ。

弱い者が死ぬ。奪われる。蹂躙じゅうりんされる。そして、強さが正義となる。負けは罪となる。


「行くぞ!」

「ギギ」

「ファー」エンジェルの声は何らかの叫びのような、歌のような反応だ。

一応わかってはくれているようだ。


広間に入ると扉が、ギギギと軋みながら閉まっていく、ド~ンと腹に響く、精神を圧迫するための巨大音が響く。

すでに、精神戦が開始されているのだ。

逃げ道を閉ざされたのだ。明らかに、冒険者の精神の焦りと恐怖を増幅させる。


広間の中央の向こう側に彼らの存在を認識する。


ボッ!ボボボ!次々音を立てながら周囲に炎が灯っていく。

炎で広間が照らされれば、戦闘開始だ。


「速攻!」ゴブリン2体と俺が、突撃をかける。

エンジェルは高く舞い上がり、弓矢による援護射撃。

ゴブリンソルジャーは剣で応戦するが、俺の短剣が首にグサリと深く突き刺さる。

即死だ。

そのソルジャーの剣を奪い取り、別のソルジャーへと襲い掛かる。

ビユン、猛烈な音で俺が剣をふるう、槍の柄ごとソルジャーの首を跳ね飛ばす。


その時、ゴブリンLV8が別のソルジャーに倒される。

だが、俺はすでにその最後のソルジャーへと飛びかかっていた。

あまりの突進力に、ソルジャーと俺は転がってしまう。

俺は、ソルジャーが受け止めると思っていたのだが、俺の力が強すぎた。

馬乗りになり、首を突き刺す。ドパッツと返り血が俺の顔に飛び散る。


ジェネラルは、エンジェルの牽制の矢で動けなかった。

ゴブリンソルジャー3体を瞬殺し、血まみれ(返り血)の俺は、ジェネラルを見る。

<回り込め>声に出さずとも、カードプレイヤーの意志を感じ取ることができるモンスターたち。


ジェネラルを前後にはさみ、エンジェルがさらに別の角度から矢を放つ。


エンジェルの矢が、ジェネラルの兜に当たり音を立てる。

「やあー」俺が電光石火でジェネラルに切り付ける。

ジェネラルが剣で受けようとするが、俺の剣はジェネラルの腕を直撃する。

ガントレットが砕け、俺の使っていたソルジャーの剣も砕ける。

ゴブリンLV10が背中を切り付けるがジェネラルの鎧に傷がつく程度だ。


うるさいとばかりにジェネラルは小盾でゴブリンを殴りつける。

俺は、そのすきに落ちている、槍に飛びつき、投げつける。


グサリ!それは、ジェネラルの鎧を貫通して突き刺さる。

エンジェルの矢が、ジェネラルの顔に突き立つ。

「グエエ」思わず苦鳴を上げるジェネラル。


俺は、自分の成長を実感し、戦いの中で、やれるという確信をその時、得たのだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る