第2話
メニューを見ると一通りのドリンク類に少しの軽食があった。
サンドイッチ、トーストにカレーにナポリタン。
想像するとお腹が鳴りそうになる。
そういえばお昼も食べてなかった。
しかし仕事を辞めた手前贅沢も出来ない……
どうしようかと悩んでいるとカウンターにいた店主がお水を持ってきてくれた。
「ご注文決まりましたら声をかけて下さい」
「は、はい」
店主さんの顔をみて挨拶するとその顔をみて固まってしまった。
店主さんは優しそうな線の細い感じで髪は猫っ毛なのか細くサラサラで後ろでひとつに縛っていた。
歳は私より上そうだが若くも見える。
そして左の薬指に指輪が光っていた。
「何か?」
じっと見つめ過ぎてしまい声をかけられる。
まさか見とれていたなどいえずに急いで注文をした。
「え、えっとコーヒーとサンドイッチをお願いします」
「はい、サンドイッチは中身は何にしますか?」
見るとメニューにサンドイッチは卵かハムを選べるようだ。
「卵で……」
「しばらくお待ち下さい」
店主さんはニコッと笑って注文表を手に取りサラッと書いた。
店主さんがはけると少し落ち着いて店内を眺める。
品のいい雰囲気にうるさくなりすぎない音楽が流れて本当に素敵だった。
お店の中はお客さんが数名いるがみんなこの空間を楽しんでいるのかお客さんまで店内の一部のように馴染んでいた。
私はそんな素敵な空間で求人誌を手に取り眺める。
しかしどうもピンとくる仕事が見つからない。
こうなったら選り好みしてる場合じゃないかな……とも思うがなんとなく選ぶ気になれずに本を閉じた。
今のアパートに住み続けるのは無理かもしれない。
家賃を考えると前の会社ぐらいもらってやっとだった。
それでもオートロックの付いた安めの物件だったがそれよりも安くなると今度は防犯が不安になる。
今度は携帯片手に物件を見たりして唸っているといい香りが店内に広がった。
店主さんが私のコーヒーを入れていた。
そして程なくコーヒーとサンドイッチが運ばれてくる。
「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます」
お礼を言ってサンドイッチに釘付けになる。
サンドイッチは薄めの食パンに焦げ目がついてパンと同じ厚さの卵が挟まっていた。
「いただきます!」
手を拭いて早速かじりつく。
「ん~、おいしい……」
そしてすかさずにコーヒーを一口。
これも美味しい!
最高の組み合わせにあっという間にどちらも空になってしまった。
「おかわりどうですか?」
すると店主さんがニコニコと笑ってコーヒーを勧めてきた。
「でも……」
二杯も飲んだら料金が……
財布の中身が気になった。
「お客さん美味しそうに食べてくれたからサービスです。初めての方にはよくやってるサービスなんですよ」
そう言ってさわやかに笑って貰えば断るのも悪い。
何よりおかわりしたかったのでお礼をいい快く貰うことにした。
「ありがとうございます。本当に美味しいですね」
今度はゆっくりと一口飲んで声をかけた。
「ありがとうございます。あれ?」
店主さんは私のテーブルに置かれた雑誌をみて声を出した。
「あっ……その……」
求人誌をサッと隠す。
「すみません、お客様のプライベートな事を……でも素敵なスーツ姿なのでお仕事中かと思いました」
「実は……」
私は誰かに聞いて欲しかった事もあり優しそうな店主さんに仕事を辞めた事を話してしまった。
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