第55話

 「うぅ・・うぅ・・ごめんなさい」

 

 泣き出す春。

 駅前近くであるこの場所は人通りも多く。

 

 「あら、別れ話?」

 

 「女の子泣かすなんてサイテー」

 

 周囲の視線がグサグサと刺さるような感じだ。

 

 「分かったから。ほら、泣き止んで」

 

 「・・・昔みたいにぎゅっとして」

 

 ここで?!

 

 「あのな。こんな人が多い場所で・・・」

 

 「分かった」

 

 春は俺が言葉を言い切る前に言葉を返してきた。

 

 「分かったらいいだけど、それとそのアプリ消してくれない?」

 

 スマホを渡すと春は、タタッと手慣れた様子で操作を始めた。

 

 「(・・・人が少ない場所ならいいだんだね)」

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