第66話 参戦
オーガンさんの合流と、敵の先発部隊の動きをトラップで防いだことが大きなきっかけとなり、魔境組の士気は跳ね上がる。
あっという間に形成は逆転。
敵兵の中には訓練を受けておらず、金が目当ての者が多かったというのもこちらの勝利を呼び込んだ原因だろう。
大義も忠誠心もないのなら、何より優先させるのは己の身。
早々に撤退をしていくグローム軍を見送る――はずが、
「む?」
敵と衝突した場所の近くにある高台から向こうの動きを探っていると、明らかにさっきより兵の数が増えている。
「増援部隊か……」
情報では、国境付近にもグロームの勢力が集結しているという。
向こうもエクルド王国とこの魔境を同時に攻め入ろうと戦力を分散させている――そう思っていたが、ここへ来て増援ということはまだまだ余力があるらしい。
底知れぬグロームの兵力に、せっかく盛り上がった気持ちが急速に冷えていく。
さすがに、いくら個人の力が弱くても同じ手にあっさり引っかかるってことは考えられないし、ヤツらも対策を練るだろう。それができる時間を稼ぐくらい兵の数は揃っている。
「どうしますか、エルカ様」
「……真っ向勝負は避けたいところだけど」
一瞬、投降の文字も脳裏をよぎったが、それはできない。
何か、俺の知識で挽回できる策を――そう悩む俺のもとに、強力な助っ人が駆けつけてくれた。
「やれやれ……随分と騒がしいねぇ。ゆっくり昼寝もできやしないよ」
「本当はみんなのことが心配だったくせに!」
「ここで好き勝手やられるよりはマシか」
パーディとホミルの親子に、ゾウィル――アル以外の魔境のヌシたちが、俺たちの前に姿を現したのだ。
「み、みんな……」
「協力をしてくれるのか!?」
俺たちと同じくらい、同じヌシのアルも驚いていた。
「勘違いしないでもらいたいわね。あくまでも私たちが暮らす魔境を守るために力を貸すということを忘れないで」
「まあ、そういうわけだから、ね?」
パーディは頑なに俺たちとの協力体制を認めたくはないという姿勢だったが、娘であるホミルのフォローを聞く限り、ただのツンデレだろうな。
意外だったのはゾウィルだ。
「ゾウィル……」
「俺も基本的にはパーディと同じ姿勢だ。今回は手を貸すが、だからといっておまえたちに全幅の信頼を寄せているというわけでもない」
「それでいいさ。信頼をこれからの行動で得ていく。――ただ、今この瞬間だけは、力を貸してほしい」
「分かった」
こうして、全四体のうち三体のヌシがこちらに加勢してくれることになり、再び魔境組のボルテージが上がる。
「いくぞ!」
「あんたが仕切るんじゃないよ、アルベロス」
「同感だな」
三体のヌシが一斉に襲いかかってきたことで、迫りつつあったグロームの軍勢は再びパニックに陥った。
さあ、ここからが本番だ!
ここでヤツらを食い止め、グロームの戦力を削りまくる!
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