第51話 大蛇のゾウィル
第三のヌシであるゾウィルの居場所が判明した。
ただ……彼との接触は、命懸けになるだろう。
アルやパーディの時も同じくらい危険ではあったが、ふたりにはまだ関係を深めるキーワードが存在していた。そこをきっかけに信頼を得たのだが……大蛇ゾウィルについてはまったくそれが思い当たらない。
【ホーリー・ナイト・フロンティア】でも、個別のエピソードはないし、残り一体も含めてキャラが薄いと言わざるを得ない。
しかし、周囲で不穏な動きが広がる中、現状のままでは何かと不安だ。せめて、直接会って交渉可能かどうかだけでも見極めるとしよう。
というわけで、今回は危険な旅になるので俺とアルだけで行こうと思っていたのだが、
「当然、私も行きますよ」
と、リリアンが立候補。
これに煽られ、イベーラもついてきそうな勢いだったが、さすがにゴーテルさんたちからストップがかかる。本来ならイベーラにも待機をお願いしたいのだが……この目は引き下がりそうにないな。
「……分かった。でも、無茶はしないように」
「それはむしろこちらのセリフです」
「うっ……」
言われてしまった。
そして否定できないんだよなぁ。
ただ、ここで無茶をして、今までの苦労を水の泡にするわけにはいかない。パーディにとっての娘のように、ゾウィルと交渉を円滑に進めるための要素が見つかっていない。何をしてくるか読めない相手……少し、身震いがする。
だが、やるしかないな。
「行こうか、リリアン、アル」
「えぇ」
「おう」
「怪我に注意して、頑張ってきてくださいね」
俺たちはイベーラをはじめとする村人たちに見送られながら、森へと入っていった。
鬱蒼と生い茂る草木をかき分けて、奥へと進んでいく。
「こっちまではまだ足を運んでいなかったな」
「でも……なんだか、パーディの住処があった場所よりも不気味な感じがしますね」
リリアンの言う通り、この辺りは特に日当たりが悪くて全体的に薄暗い。とても昼間とは思えなかった。
その時、案内役として先行するアルの足がピタッと止まる。
「どうかしたのか、アル」
「いや……ここから先は足元に注意するんだ」
「足元?」
「ヤツの住処は沼地だが、そこはいわゆる底なしというヤツだ。一度足を取られたら、自力での脱出は不可能だろう」
「底なし沼か……」
モンスターだけでなく、場所自体が厄介ってわけか。
「忠告ありがとう、アル」
「では、足元には十分注意して進みましょう」
「だな」
俺とリリアンはアルからの忠告に従って慎重に進む。
しばらくすると、足元が水っぽくなってくる。
「どうやら、ここから危険地帯のようだな」
「ですね。……どうします?」
「うーん……」
これ以上前進すれば、底なし沼に沈んでいく可能性がある。
しかし、ここまで来て引き下がれなかった。
そこで、俺がとった行動は――
「上から攻めよう」
「「上?」」
アルとリリアンの声が重なった。
俺が提案したのは、上――つまり、木の枝つたいに前進していくという案だった。
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