第47話 エクルド城へ
思わぬトラブルに見舞われたが、なんとかガフリーを追い返すことに成功。
ただ、【ホーリー・ナイト・フロンティア】では裏切り者となるあのガフリーが、縁もゆかりもないはずのエクルド王国に姿を見せていた理由はなんなのか。
ヤツが俺を追いだした、例の教会関係者であるというのも不気味さに拍車をかけていた。
というのも、グローム王国から魔境へと移住してきた者たちの数が日に日に増していき、もう王都はほとんど抜け殻状態だったという。
まあ、向こうが俺を追いだした結果なのだから、自業自得といえばそうなのだが……そう捉えるかどうかは分からない。むしろその逆で、俺を恨んでいるかも。これ以上、逆恨みという言葉が合う状況はないだろう。
しかし……ヤツらが俺を狙ってこのエクルドに刺客を送って来たとは考えづらかった。
何せ、この地へ来ようと決めたのはつい先日のこと。
グロームの教会関係者が、手を打つ暇はなかったはずだ。
ということは、別の目的でガフリーはこの国に来ていた?
いずれにせよ、あまりいい予感はしないな。
しばらくすると、その場に大勢の騎士たちが到着。
騒ぎを聞いた王都の人たちが連れてきたようで、最初はよそ者である俺たちが疑われるハメになった――が、ギャラリーが次々と俺たちの行動を証言してくれたため、すぐに誤解はとかれることに。
さらに、話を進めているうちに俺がグローム王国で予言者をしていたことと、イベーラがリドウィン王国の貴族であることが知られる。
「グロームの予言者にリドウィンの貴族……」
集まった騎士たちは、最初こそ警戒している素振りを見せていたが、こちらの素性がハッキリしたことで態度が急変。
特に、俺が例の予言者であるという点が、彼らにとって大きかったらしい。
「エルカ・マクフェイル殿……あなた方に、ぜひとも我らの主であるエクルド王にお会いしていただきたい」
「えぇっ!?」
あまりにも唐突な提案に、思わず驚きの声が漏れる。
展開が早すぎると思ったのだが、これには理由があった。
「実は、前々から国王陛下はあなたにお話を聞きたいと」
「エクルドの国王陛下が?」
面識もないエクルドの王が、俺に会ってみたいと――やはり、目的は予言か。
とはいえ、なんでもかんでも答えられるわけじゃないからなぁ……エクルド王が望むような答えを用意できるか、ハッキリ言って自信はない。
でも、これは好機だ。
もともと、今回は時期尚早として町の様子をチェックする程度にとどめておこうって話だったが、一気に進展して友好な関係を築ける絶好のチャンスが巡ってきた。
ここまで来て、会わないという選択肢はない。
俺は同行しているイベーラやリリアンたちに事情を説明。これを機にエクルド王国と親しい関係を築くため、国王に会うという判断をしたと告げた。
みんなはこちらの意向を汲んでくれて、ともに国王に会うため城へ向かうことを決めてくれた。
「それでは、こちらへ」
騎士たちに案内されて、俺たち一行は王都最奥部にあるエクルド城へと向かう。
そこは、リドウィンの城に比べると大きく、どことなく造りも立派に映った。
あっちはエクルドに比べたら小国だから仕方のない面はあるけど。
……まあ、大陸でも指折りの大国であるグロームに住んでいた俺やリリアンからすると、これでもかなり小さいって印象を受けるんだけど。
ともかく、つり橋を渡って城の内部へ入ると、先に連絡を受けていたこともあってか、俺たちを迎える準備が整えられていた。
「お待ちしておりましたよ、エルカ様」
まず出迎えてくれたのは、金髪の美人だった。
「あ、あなたは?」
「わたくしは神官のフェイディです。あなた方を国王陛下のもとへ案内するよう仰せつかっております」
神官のフェイディさんは深々と頭を下げ、俺たちを城の奥へと導く。
「グローム王国で暮らしていたあなたには、この城は小さく感じるのでは?」
「サイズを比べると確かにそうですが……王都の熱気も含め、中身は見劣りしませんよ」
「そう言っていただけると嬉しいですね」
これについてはお世辞でもなんでもない。
心からの本音ってヤツだ。
「さあ、到着しましたよ」
ひと際大きな扉の前に立つフェイディさん。
どうやら、この先にエクルド国王がいるらしい。
門の左右に立つ兵士へフェイディさんが目配せをすると、ふたりはそっと離れる。それからフェイディさんが扉へ静かに手をかざすと、一瞬紫色に光り、やがてゆっくりと自動的に開いていく。
魔力仕掛けの扉というわけか。
「さあ、どうぞ」
いよいよ王の間へと足を踏み入れる。
高い天井からぶら下がるシャンデリア。
広い空間には大勢の兵士たちが並び、俺たちが入ってきたと同時にすべての視線がまるで威嚇するようにこちらへと一斉に向けられる。
筆舌に尽くし難い緊張感。
これはリドウィンの時とは全然違う雰囲気だ。
全員の体が強張る中、玉座に座るエクルド王が立ち上がって声をあげる。
「よく来てくれた」
重く、威厳のある低音ボイスが響き渡った。
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