傾国の悪女①
「ふぅ⋯⋯慣れないことをしてどっと疲れたわ⋯⋯」
部屋に戻るなり、一気に気の抜けたマリアンヌはソファまで歩く気力もなく、扉にもたれかかって深いため息を吐く。
ノアはエスコートするという宣言通り、ご丁寧にもマリアンヌを部屋まで送り届けてくれた。その間中、常に気を張っていたマリアンヌは心身ともに大分疲弊していた。
「それで、どうだったんだ?」
「サタン様⋯⋯」
サタンは部屋に戻ってきたマリアンヌの姿を確認するなり、興味なさげにテーブルの上に置いてあるクッキーをつまみながら尋ねて来た。
「サタンさまにもお土産買ってきたよっー! ターゲット2人の偵察はもうばっちり!!」
「ほう⋯⋯。では茶でも飲みながら話を聞くとしよう。⋯⋯おい、人間。茶の用意を」
サタンはマリアンヌの顔を見ながらそう言った。アスモデウスの方を見ると、先程まで隣にいた彼はちゃっかりと席についている。
「はいはい⋯⋯」
マリアンヌは疲れた体に鞭を打ち、渋々と3人分のお茶の準備をすることになったのだった。
✳︎✳︎✳︎
「僕の見立てでは⋯⋯兄のセオは内向的な性格で、純真無垢でありのままの自分を受け入れてくれる寛容な女の子が好きそう。弟のノアは退屈を嫌い刺激を求める外交的な性格で、大胆で積極的な女の子が好みだねっ! う~ん⋯⋯ 2人とも見事に正反対の性格してるねぇ⋯⋯」
「ええ、どちらも一筋縄ではいかなさそうね⋯⋯」
「義弟2人をお前の虜にして仲違いさせるんだろ? つべこべ言わずやるしかないだろう」
薄ら笑いのサタンから「お前に出来るとは思えないが」という声が聞こえてきそうで、マリアンヌはムッと頬を膨らませた。
「時に、ご主人さま————。恋ってしたことある?」
「え⋯⋯⋯⋯?」
それまで笑みを浮かべていたアスモデウスがやけに真剣な表情でマリアンヌに尋ねる。
マリアンヌは暫しの思案の後、戸惑いながらも口を開いた。
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