6限目-3
Dear my friend.
It's almost time for the cultural festival. The whole school is floating.
*****
午後イチの授業は眠くてたまらない。程よい疲れと満腹感で自然と睡魔が襲ってくる。
秋雨の降るなか、少し肌寒い窓際の席に座り外を見る。どんよりとした雲と、しとしとと振り続ける雨にテンションが下がる。
心做しかクラスメイトや同じ授業を受ける同級生のテンションも少し低そうだった。文化祭前で皆がそわそわワクワクしている風潮があったので、ちょうど良い差し水の雨になったのかもしれない。
日課となってしまった机の落書きメッセージへの返事をしたためる。
Dear my friend.
I really do.
Are you looking forward to the cultural festival?
相手のことは何も知らない。学校生活を謳歌してるのかもしれないし、行事ごとを心底面倒くさがっているのかもしれない。
こうして思うと不思議だなー、私とメッセージの相手はお互いのことを殆どきっと知らない。こうして英文で会話をしながら、会ったこともない。もしかしたら、校舎のどこかですれ違うことくらいはしているかもしれない──それだけの関係で、それ以上でも以下でもない。
時間や場所を問わず不特定多数と出会うネットやSNSの世界とは違い、私たちは特定の場所の特定の時間をすれ違いながら関わりあっている──それが不思議で面白い。
「安芸ー、次自習やって」
現代社会の授業が終わり、教室に帰った私と咲希は早織たちからそう情報を仕入れる。現代文の先生が急用ができたとかいう話らしく、プリント1枚だけが配られ、それが終わったら各自で自習らしい。
私たち4人はさっさとプリントを終わらせ、集まりとダラダラと今日出された他の教科の課題を進めていく。課題をするといっても、ほとんどやっているフリで雑談に花が咲く。
「咲希らが付き合ったんって、去年の文化祭からやったっけ?」
話題は自然と咲希と彼氏・一輝の馴れ初めになる。
「せやでー。文化祭マジックってやつやったんかもな」
文化祭や体育祭、修学旅行などのイベントの時には不思議とカップルの誕生が多い。みんな、浮き足立ってるんだろう。
咲希も去年、文化祭のときに無事に付き合うことになった。確か、少しだけ一緒に文化祭を回ったりしていた気がする。NIKKUは1年生の時から文化祭のステージに立っており、軽音バンドの溢れる北高で1年生から文化祭ステージに立つことは至難の業と言われている。
NIKKUの結成は確か高校に入ってからだったはずだから、たった数ヶ月でそこまで登りつめたNIKKUはやはり普通の高校生ではない。
「まあ、でも最近はめちゃくちゃ大変そうやけどな」
「もうすぐ文化祭やもんな」
どこか疲れた様子の咲希はため息混じりにそう言う。私たちはNIKKUの活躍に期待すると共に、同じ高校生で同じように授業を受けて課題をこなしテストに備えるNIKKUのメンバーの多忙を想像するとゾッとする。
軽音活動は結局のところ趣味の延長みたいなものであり、それをしたからと言って何か成績や将来に直接的に繋がることはほぼ無い。極たまに音楽活動が認められて、そういう道に行く人もいるというが一握りでしかない。
経験したことがある訳ではないけど、それがとても大変なことは想像がつく。それでも音楽をするということは、めちゃくちゃ音楽が好きで大変でしんどくてもやりたいという情熱があるのだろう。
そういうものがないから、少し羨ましい。
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