第3話 その日見た表情は現実かはたまた幻覚か
「よーしじゃあこれで席替え終わりなー後は各自で班長決めて報告しろー」
周りが新しい席に一喜一憂する中、良也の班は前側の席である、誠司と南月の声だけが聞こえ、後ろ側の席である良也と南月の声は全く聞こえない。
「……ほーら、心結もなんか話してよー!」
「良也、後10秒で喋らなかったらお前を強制的に班長にさせるぞ」
が、2人の一言によって良也の班から聞こえる声が2から4になった。
◆ ◆ ◆
「……み良也です。よろしく」
「最初のところが聞こえん。やり直し」
「誠司、流石に勘弁してくれ。もう5回くらいやり直してるぞ」
自己紹介なんて1回でもまあまあ精神削るのに。と後に付け足し良也は左にある窓の外を眺める。
暑い季節が過ぎ、木の葉が色付き始めたこの季節。日差しもゆるやかになり、過ごしやすい季節になったが、すぐに寒い季節がやってくる。
寒いよりは暑い方が好きな良也は少し憂鬱に感じつつ、外を眺めていると、窓に反射する顔があった。
その鼻梁の整い、
窓の反射で目を合わせる良也と心結。その心結の顔はじっと良也を見つめ、なにやら言いたそうな顔をしていた。心結の顔がほんのり赤く見えたのは窓の外の夕焼けのせいなのか、はたまた本当に赤くなっているのか。
ゆっくりと心結の方を見るが、心結の表情は窓に写っていた甘い表情ではなく、いつもの凛とした表情だった。
無意識に心結の顔を見つめていると、心結はふいと南月の方を向いてしまった。
「……誠司、ちょっといいか」
「別にいいけど、どうした?」
良也は女子2人、特に心結に聞かれないよう、小声で誠司に話しかける。
「さっき俺が外見てる時、辻原の表情おかしくなかったか?」
「なんだ、辻原が変顔してたのかと聞きたいのか?」
「いやそうじゃなくて、……なんと言えばいいかな、普段絶対に俺に見せない表情してなかったか?」
「あー……そう言われればいつもとは違う顔してたかも」
良也が自分の持つ精一杯の表現で聞くと、誠司は考える仕草をしながらそう答えた。
「んーまあ辻原が良也に真顔以外を向けることはないと思うし、勘違いなんじゃね?」
「純粋にひどい……」
◆ ◆ ◆
その日の放課後、良也が靴箱に向かっていると途中で南月に話しかけられた。
「お、仲上くん帰り?」
「ああ、もうすることないし、家帰って夕ご飯の準備しようかなと」
「……そっか、仲上くん一人暮らしだもんね。ちゃんと自炊してるの偉すぎ」
それはそうと、と前置きし、南月は本題に入る。
「でさ、仲上くんが良ければなんだけどちょっと話したいことがあるから、一緒に帰らない?」
「一緒に帰る……ちょっとならここで話したほうが良くないか?」
「まあそうなんだけど、ちょっと人に聞かれたくない話でさ」
南月が良也にする話だとおそらく心結に関する話なので良也も薄々その話なんだろうなとは思っていた。けれど、前教室でした程度の話なら別に一緒に帰らずともここで話せば良いはずだ。
多少引っかかるところもあるが、良也はその誘いを了承し、南月と一緒に帰ることになった。
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