八ノ巻~恩返し~

 謹慎が終わり、城内の見廻りをしようと廊下を歩いていると、長政様を見かけ私は長政様に声をかけた。すると、長政様は文を持ちながら私の方へ駆け寄ってきた。


「莉菜っ!」


「どういたしましたか?」


「朝倉の城を義兄上が攻めたと」


「何だって……長政様!今すぐ、三成たちを集めてください!」


 私は長政様にそう伝えると、長政様はすぐ三成たちを大広間へと集めてくださった。


───大広間。


「長政様。信長との約束は違いますよね?」


 大広間にて。三成、大谷さん、兄上の高虎を集まり、私たちは長政様に信長とのもう一つ約束事があることを問う。すると、長政様は頷いた。


「あぁ。市との結婚のさい、それがしから朝倉家に手を出さないを条件として義兄上に申し出をすると、義兄上は了承してくださったのだが……」


「元々、朝倉と織田は不仲なんですよね?」


「よく知っているな」


「元の時代にいる時に習いましたから」


「そうなのか!」


「えぇ。まぁこれしかわからないんですけどね」


「そこに関しては気にすることはない。さて、本題に入るが、浅井は織田に味方をした方がよいのか、それとも朝倉に味方をした方がよいのか……」


 長政様は悩みだしてしまった。この先の出来事もなんとなく覚えている。浅井は朝倉に味方をして、浅井は織田に……滅ぼされる。私は、長政様に恩があり、まだ何も恩を返してはいない。それなのに、浅井が滅んでしまったら……。私はそんなことを考えていると、長政様はなぜか、三成たちに席を外して欲しいと頼み、三成たちは大広間から去ってしまった。


 長政様は、私にこう言った。


「隠し事なんて、莉菜らしくないぞ?」


 と。長政様に何もかもバレバレなのか……。私は、諦めて長政様に浅井のこれからのことを全て包み隠さず話した。長政様は真剣に私の話に耳を傾けてくださった。


「浅井が滅ぶのか……」


「はい……」


「……莉菜」


「はい」


「自分自身の流れは変えられるが、歴史や時代の流れは変えられない。たとえどんなことをしても、浅井はそのうち滅ぶ運命だ。莉菜の救いたい人は三成なんだろう?それくらいなら流れは変えられる。某のことは気にするな。莉菜の生きたいようにすればいい。そなたはなのだから」


「自由……。自由って何?」


「……そのうち分かるさ」


「分かりました。私は長政様の最期までお側にいます」


「そうか。某の最期を見届けてくれるのか?」


「はい。それが私今出来る」


───恩返しですから。


 私はそう長政様に言うと、長政様は小さく頷き、抱き締めてくださった。長政様はとても温かく、優しいお方。私は、その方の最期を見守ることにしたのであった。

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