第14話 吉凶入り乱れ!ツッパリ『凛』と真面目『凛』の日常!!(14)



クラスメートから遅れて体育館についた時、入口の扉は閉まっていた。



「よいしょ!・・・・・・あれ?」



開けようとしたが開かない。



「すみませーん!入れて下さい!」



ノックしながら頼んだけどあかない。



「すみませーん!中に・・・」


「うるせぇ!!」


ドンっ!!


「きゃ!?」


「遅刻した奴は入ってくるな!」



ノックしていた戸を、蹴り返されたのだと察する。


同時に、頭の上で声がした。



「あははは!ビビってるよ~」


「ばーか!」



見上げれば、体育館の二階から私を見下ろして笑ってる奴らがいた。



「外で聞いてろ、ゴミ!」


「そのまま、そこのゴミ箱に入れば~?」


「上手いな!」



全く知らないクラスの男女から浴びせられる暴言。



「お前らなにしてる!?早く整列しなさい!」


「「「はーい!」」」



そんな教師の声に答え、私に悪口を言った奴らが引っ込む。


乱暴にのぞいていた窓を閉めて赤い舌を出して笑う。


視界から消える。



(締め出された・・・?)



まさか、教師も集まる始業式で締め出しとか・・・!?



(先生も、大人もいじめっ子の味方をするなんて・・・・!!)



そこまでされるとは思わず、呆然と立ち尽くす。



(・・・・ひどい・・・・!!)


つらい。


悲しい。


苦しい。


みじめ。



(ひどい・・・泣きそう・・・・・!!)



そんな感情が頭の中をぐるぐる回ったけど―――――




(・・・いつまでも、ここにはいられない。)




誰も助けてなんてくれない。


動かなきゃいけない。


1人で。



気持ちを切り替える。


体育館に背を向けた歩き出す。



「菅原はサボり魔~」



そんな声が聞こえたかもしれないけど、無視して歩いた。





(これからどうしよう・・・・)



教室に戻っても、鍵がかかってるから入れない。


時間がつぶせそうな場所を探す。



(疲れた。座りたい・・・。)



周りからの悪意に、気分が悪くなる。



(保健室に行こうかな・・・?)



体調不良ということで、休ませてもらえないだろうか?



(そうしよう。)



どう動くか決まったので、保健室へ向かおうとしたのだが―――



「ふざけんなよ!!」


「ひっ!ごめんなさい!ごめんなさい!!」



罵声と悲鳴が響いた。




(なに!?)


「また負けやがって!!」


「ごめんなさい!!」



反射的に声のした方へ、後者の裏側へと視線を向ける。



(あれは・・・!?)



1人の女子生徒が数人の女子生徒に囲まれていた。


取り囲んでいるのはヤンキー女達で、そいつらの顔には見覚えがあった。




(私をトイレの個室に閉じ込めて、水をぶっかけた奴ら!渕上の仲間だ!!)




なにあれ!?いじめ!?私以外もいじめてるの!?



「今日はこれぐらいで勘弁してやる!」


「ちゃんと用意しとけよ!」


「またな、吉田ちゃーん?」


(吉田ちゃん・・・?)



ギャハハハ!と下品に笑いながら、離れて行く渕上の仲間のヤンキー達。




(『吉田』って・・・)



「うっ、うっ、ひっう!」




1人残され、座り込んで泣いている女子生徒。


服装からしても、一般の生徒で間違いない。




「大丈夫ですか?」




気づけば、その子の側まで行っていた。


身をかがめて、話しかけていた。



「ひっ!?」



震える声で、その子が小さく叫んで顔を上げる。


相手と目があった瞬間、どちらともなく、「あ!」と小さく叫んでいた。




「す、菅原さん!?」


「吉田さん・・・」


(やっぱり、吉田さんだ・・・。)




同じ学年で、同じ委員会のG組の生徒。


英英辞典を借りたのを最後に、ずっと会っていなかった相手だった。




〔★思わぬ再会だった★〕




驚く私以上に、吉田さんは狼狽(ろうばい)する。



「な、なんで・・・!?始業式、は・・・?」


「あ・・・気分が悪くなったから、保健室へ行く途中で・・・」


(さすがに締め出されたとは言いずらい・・・。)


「大丈夫?」



制服はもちろん、顔も汚れていた。


土の地べただから、座り込めば当然だけど・・・



(こりゃ、リンチされて汚れた感じだな・・・)



『凛道蓮』目線で察する。


手足にちらほらと、すり傷がついていた。


手当てが必要だと思う。



(とはいえ・・・渕上に目をつけられている私が、これ以上彼女に構うのはよくない。)



そう判断して、持っていたハンカチを吉田さんの膝に置く。



「使って。」


「え!?」


「それ、使い捨ててくれていいから。私と一緒にいるところを見られたら、吉田さんに迷惑がかかるから、もう行くね。」



手を出すのはここまで。


これ以上は関わらない方が良い。



「私、保健室には行かないから、吉田さんが行って下さい。さよなら。」



相手が何か言う前に立ち去る。


急いで背を向けて、速足で動いたのだけれど。



「待って!!」


「わ!?」



背後から抱き付かれる。



「よ、吉田さん!?」


「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!あなたには・・・ずっと謝りたくて・・・ひどいことを言って、ごめんなさい・・・!」


「え?」


「は、話!少しだけでいいから・・・話を聞いて!話し相手になって・・・!」



ボロボロ泣きながら見上げられる。


懇願される。




「・・・・・・場所を変えましょう。ここは目立ちます。」


「え!?い、いいの?」


「保健室で、怪我の手当てをしましょう?」


「い、いや!保健室は――――!」


「どうして?」


「さっきの・・・保健室で寝るって、言ってたから・・・」


「それは行かない方がいいですね。とりあえず、制服の汚れを落としましょう?人目につかない場所で。ね?」


「うっ、うぅ―――――――・・・・・!」



そう言えば、吉田さんが首を縦に振る。


何度もうなずく彼女の口から嗚咽が漏れる。


そんな相手の姿に、いろいろ思うところはあったけど・・・




(長居は無用。)


「行きましょう。」




出来るだけ優しく、小さな声で言ってから、吉田さんを助け起こす。


そして、周囲を警戒しながら保健室へと向かった。







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