第13話 吉凶入り乱れ!ツッパリ『凛』と真面目『凛』の日常!!(13)



この女は、学校が言いなりになるほどのお金持ちで、見た目もいいからモデルもしてる。


それどころかレディースの総長までしてるボスだ。


声を聴くだけでも気分が悪いが、目だけでその存在を確認。


夏休み前は、奴の機嫌次第で、いじめの被害が変わっていた。



(新学期も、その流れが変わらないはずだから、朝一で様子を確認しておかないと・・・)



そう思って視線を向けたのだけど、




(誰!?)




目にした相手は、いつもと違った。


茶色の髪の毛が黒くなっていた。


夏休みデビューで、黒い頭が茶色になるのはわかるけど・・・黒くなってる!?



(なにそれ、腹黒だって自己紹介してるんですか?)



〔★凛は心の中でディスった★〕




「渕上さん、イメチェンイイ感じだね~!?清楚で可愛い!」


「ありがと。」



山崎という男子の言葉に、そっけなく答える見た目は可愛い女。


そいつに、取り巻きの難波・鳥海が群がる。



「てか、アルがダメって、フッチーダイエット中?」


「え~必要ないじゃん?細いよ?学校で一番のスタイルなのに~」


「ルノアはダイエットしてない。」



右腕と左腕の問いに答えたのは、イケメン男子。


その男、飯塚アダムと言って、渕上ルノアの彼氏だった。


さらに言えば、こいつが原因で私はいじめられることになった。




(瑞希お兄ちゃんよりもブサイクなくせに・・・ムカつくわ。)




「ちょーみんな注目!聞いてくんねぇー?」



馬鹿男が何を言いだすかと・・・視線を下げたまま、耳だけ向ける。


クラスメートは、みんな飯塚の方へと集まって行く。



「なになに?どーした?渕上さんと婚約発表?」


「まだ早いし。」


「うわ、否定しねぇの!?ノロケごちそう様~」


「いいから聞けよ!ルノアさ~めっちゃすごいことになったんだよな。」



(すごいこと?)



警察に補導されて、モデルの仕事がなくなったのかとワクワクした。



「すごいことってなに?」


「教えてよ、アダム君!」


「それがさ~」



飯塚の口から出たのは、私の希望とは違っていた。




「詳しいことは、今日のお昼の番組で全国放送されるんだけど、ルノアを支えたみんなには、一足先に報告ってことでさ~なぁ、ルノア?」


「まぁね。」



感情のない声が返事をする。


声の主を見れば、飯塚の体に腕を回しながら笑っていた。



「真面目路線にチェンジするから、みんなもそのつもりでよろしく。てか、その辺の話を詰めたいから、新学期も頑張ろう会はあたしのパパのホテルで良い?山崎の方はさ、テスト勉強お疲れ会で使うってことでさ?」



飯塚に体を預けながら、上から目線で言うクラスのボス。


それで山崎と言うクラスメートがうなずく。



「も、もちろんもちろん!つーか、ルノアさんのお父様のホテルの方がいいでしょ!?楽しみっす!」


「あたしもあんたの家のホテル、楽しみにしてるから。よく見て勉強してね?」


「もちろんですとも!感激っす!」



全力で媚びを売る姿・・・すごく哀れに見える。


しかし、ペコペコしているのは周りも同じだった。



「フッチーすごい!ますます、雲の上の住人じゃん!?ジャニアイドルと仕事する時は、サインもらってきてほしいでーす!」


「てか、いつからルノアは女優活動の入っちゃうの!?マジ、遊べなくて寂しいよぉ~」


「別に芸の活動しなくても、アイドルのサインぐらいママに言ってもらってあげる。女優の仕事はもうしてる。シリーズものの主演も決まったから。」


「「えー!?すごーい!!」」


「同じ高校生なのに、ミラクルすぎるよな~!?」


「飯塚、気をつけないとフラれない?」


「あたしはフラない。アダムが必要だから。」


「フッチーの愛の宣言キター!でもでも、別れさせられたりとかしない!?ロミオとジュリエットにならない!?」


「ならない。」


「聞いたか、アダム!愛されてんじゃんか!?」


「いや、俺の方がルノアを愛してるから。」


「よく言うわね、アダム。」


「マジだって、ルノア。」


「あたしを裏切ったら赦さないから。」


「俺のセリフだ。つーか、焼きもちしか焼かねぇーよ。」


「馬鹿。」



ヒューヒューという周りの冷やかしの中で、後悔ラブロマンスを披露するいじめっ子コンビ。




(新学期早々・・・縁起悪いな・・・)




見たくないものを見せられて、ものすごく不愉快になる。




〔★凛は精神的ダメージを受けた★〕





「なにしてるの、みんな!早く体育館に移動しなさい!」



怒鳴り声をあげながら、担任が教室に顔を出す。



「移動してないのは、うちのクラスだけですよ!?」


「はーい、井谷先生!ほら~菅原さんのせいで怒られた!」


「ホント菅原さん、協調性がなーい!」



(なんで私を出す!)



ムッとしたら、ムッとした顔で担任が近づいてきた。



「菅原、新学期早々、クラスの輪を乱すのはやめなさい。あまり目立つようなら、内申点もあきらめた方がいいわよ!?」


「そんな!私は何も・・・」


「ちょっとーさっさと教室から出てよ、菅原さん!カギしめられない!」


「井谷先生まで巻き込むとか、ホントに迷惑だよね~」


「え!?なっ!?」



気づけば、私と担任だけが教室にいた。


入り口では、ニヤニヤ顔の鳥海と難波がカギをチラつかせながら見ていた。



「菅原、さっさと出なさい!」


「っ・・・!すみません・・・!」



ムカつきながら謝り、素早く教室を出る。



「やっと鍵かけれるよ~」


「気をつけてね、菅原さん?」


「もー気をつけて!」


「気―をーつーけーて!」


バシバシ!


「うっ!?」



冗談風な口調で、数人がかりで私の背中を叩く。


思いっきり叩かれたので、バランスを崩して前へとこけてしまった。



「い、痛!?」


「きゃははは!オーバーリアクションだ!」


「わざとらしいね~」


「被害者ぶって気持ち悪ーい!」



座り込む私を笑い者にしながら言ってしまうクラスメート達。



「いつまで座り込んでるの!?大げさですよ、菅原!!」


「井谷先生・・・」



私が暴力に近い攻撃を受けても、私が悪いみたいに言う女教師。



「まったく、わざとらしいことばかりして!入学した時は、まともだと思っていたけど、ずいぶん悪い方に変わったものね!?」



私をにらみながら、通り過ぎる担任を見て思う。




(あんただって、変わったよ。)




性格とかは、入学式のままだけど、その口の利き方が変わった。



(呼び捨てで呼ぶようになってる・・・)



いや、もともと、こういうクソな性格だったんだろう。


人間の本質は変わらない。


いじめられるようになってからわかったことがある。




(教師=善人はウソだ。)




筆記試験で点数を取って、面接でも聖職者らしいことを言えば、誰でも合格できるだけの話。


それが社会の仕組みなのだ。


大人の本性を知ることが出来ただけでもラッキーだと思いながら立ち上がる。


みんなから遅れたけど、私も始業式が行われる体育館へと向かった。







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