第12話 吉凶入り乱れ!ツッパリ『凛』と真面目『凛』の日常!!(12)



両親が知らない娘の一面。


私が、私であることが嫌いな理由。


その答えは通っている高校にあった。



「げ!ゴミ原来たじゃん?」


「菅原さん、休むと思ったんだけどな~夏休み明けだろう?」


「マジメ馬鹿は規則正しい生活するんだよ。大穴狙って儲けたぜ!」


「あーあ、1000円損した!」



舌打ちに合わせ、お菓子の空箱が飛んで来た。



「きゃ!」


「へーい!当たった!」


「ぎゃはははは!」



(飛んでくるのはわかってたよんだよ、クズがっ!)



よけると、さらにやられるので、最初の一撃は受けるようにしてる。


下駄箱で靴を履き替えて教室に向かう。



「1-Aのゴミ、学校来てるじゃんか?」


「来ない方に、1000円かけたのによ~」


「あたしも~!マジ菅原死ねばいいのに。」



知らない同級生、あるいは上級生から暴言を吐かれる。そうです。


両親が知らない菅原凛の秘密は――――――





(いじめられっ子であること。)





時々飛んでくる消しゴムやゴミをよけることなく、無抵抗で自分の教室に向かう。



「おはよう~夏休みどうだったー?」


「終わるのが早すぎるよ!始業式サボって帰りたーい!」


「・・・。」



にぎやかな教室に無言で入る。


その瞬間、うるさかった室内が静かになった。



「・・・。」


(新学期早々、これかよ?)



クラスメート全員が私を見てニヤニヤしてる。


少し前まで、一緒にいた子も変な顔で見てる。


それらを気にしないようにして席につく。


私が座ったのに合わせて、また周囲がうるさくなる。




(・・・・・・これもいじめ行為の1つか・・・・)




うるさくなったところで行動に出た。


新学期初日に、私はやらなければいけないことがあった。




(返してもらわないと。)




夏休みの登校日に、いじめっ子達から奪われた宿題を取り返すこと。


気は進まないが、後で困るのは自分なので、いやいやながらも動いた。



「宿題を返してください。」



私の夏休みの宿題を奪った、大嫌いないじめっ子の難波と鳥海に話しかける。


こちらの同意を得ず、自分達荒くをするために写すのが目的で強奪した。


私の問いかけに奴らは・・・



「だからさ~」


「わかるよね。」



知らん顔する。


無視されるのは、もちろん想定内。


もう一度大きめの声で言う。




「私が貸した夏休みの宿題を、全部返してください。」


「―――――うるさい!宿題は出したんだよ!」




そう言った難波の視線の先を見れば、机に提出物が山積みになっていた。



(あの中に、私の宿題があるの?)



確かめようとした時だった。



「邪魔。」


「あ。」



わざとらしく鳥海は言うと、私の背中に拳を押しつけられてグリグリしてきた。



(なにそれ!?手で押しのけるならわかるけど、グーでわざわざ押しのける!?)



不愉快極まりない。


だけど、こちらから手出しはしない。


『菅原凛』として動ける範囲が決まっているから。



(とにかく、確かめないと・・・!)



爆発しそうな怒りを抑えて、宿題が置かれている机に向かおうとしたのだが・・・




「邪魔!」


ドン!


「あっ!?」




ゆく手を遮られ、突き飛ばされた。



「なにを・・・!?」



私を突き飛ばしたのは、別の女子だった。


その女子を含め、チャラい服装の男女が提出物が置かれた机の前にいた。


いたというか、私を近寄らせないようにして集まっていた。


私を見ながら、下品な笑みを浮かべて話し始める。




「なぁ、菅原さん以外で、新学期も頑張ろう会しないか!?」


「いいねぇ~!?カラオケに行っちゃう!?」


「ボウリングがよくない?」


「てか、俺のところのホテルで貸し切りできるけど?」


「え~マジで!?行きたい、行きたい!」


「菅原さん、俺らが嫌いみたいだから、好きな物同士で交流しようぜー!?」



(うぜぇーな・・・!)



しつこいくらい、わざとやってるのはわかってる。


宿題の側に、私を近づけないようにしてることも理解した。


だから、これ以上粘っても意味がないと判断する。



(宿題は、後で確認しよう・・・)



悔しいけど、諦めて席に戻る。


そんな私をニヤニヤしながら見る気持ち悪い奴ら。


こっちの反応を見て楽しんでいるらしい。


何もリアクションがないと、ウザさが増加するので、傷ついたふりをしてうつむいてみた。


下を向いた私の動きに、バカ共はすぐに食いついてきた。



「あれー?菅原さん、どうしたのかなぁー!?」


「泣いてんの~?嘘泣きでしょう!?」


「私らとあわないなら、学校やめればいいのにー?」



こいつらっ・・・・!!


(マジで、『菅原凛』じゃなかった、ぶっ飛ばしてやってるのに・・・!!)




じっとうつむいていれば、誰かが私の頭を殴った。



バシッ!


「痛っ!?」


「あたり~!」



上履きでたたかれたとわかった時、悪意のある声で叩いた男子が言う。


それを見て、手を叩いて笑う他のいじめっ子達。


そんな暴力と侮辱に我慢して、お地蔵様になってやり過ごす。


動きを止めた私の側で、明るい会話は続く。



「じゃあさ、山崎のホテルで決めちゃう!?」


「いいよ、いいよ!新しくしたバイキング、めっちゃ美味いんだぜ?」


「え~!?アルはある系!?」


「駄洒落かよ~」


「昼間から飲んじゃうとか、どんだけダメんず~!?」



法律違反の会話が聞こえてくるが無視。


あまりにも馬鹿な会話に嫌気がさす。




(未成年がお酒を飲むのはアウトでしょう?)


「未成年がお酒を飲むはアウトでしょう?」



私の思いを口にしたのは1人の女子。




「ルノア!?」




それもただの女子じゃない。



渕上ルノアは、私をいじめているいじめっ子のリーダーだった。




〔★諸悪の根源だった★〕









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