第11話 吉凶入り乱れ!ツッパリ『凛』と真面目『凛』の日常!!(11)
「そんな言い方ないだろう!?誰のために、毎日毎日、仕事仕事仕事の激務をしてると思ってるんだ!?凛とお前のためだろう!?」
「私も仕事をしてるじゃない!?家事もほとんどしてるのよ!?凛の面倒だって私よ!?あなたは仕事仕事仕事だけじゃない!?」
「嫌味か!?だいたい、中学受験が成功してれば、こんなにお金はかからなかったぞ!?お前が受験直前に変なことをするから、凛だって困ったんだぞ!?そうだよな、凛!?」
「逆よ!進路変更することで、無駄な教育費を削減したの!中学校で楽した分、凛も余裕を持ってあゆみが丘学園に入れたんだから!そうよね、凛!?」
「やめてよ、2人共・・・・!」
いい加減聞き飽きたので、もめる両親へ『悲しい声』を出しながら言った。
「お父さん、お母さん、私のために喧嘩しないで!2人共大事だから、そんなこと言われたら選べない!!選べないよ・・・」
「凛、今は感情論の話じゃない。ハッキリ言いなさい!」
「そうよ!どっちが正しいか、わかるでしょう?」
「・・・わかってるよ。お父さんとお母さんが、私のために頑張ってくれてるってわかってるから、私も勉強を頑張れてる。お父さんが私のために無理をして、お母さんが私のために我慢してくれてるから、私は幸せなんだってわかってる。」
「無理って・・・」
「我慢なんて!そんなこと・・・」
「本当に両親に恵まれていて、私はいつも感謝してる。だけど・・・・私が原因で、喧嘩をしてしまうが・・・・すごく悲しい。ちゃんと、結果を出すからもう怒らないで・・・?」
「か、悲しいって、凛・・・」
「あ・・・怒ってない、もう怒ってないから。ごめんね、凛。ごめんね・・・!」
私の優等生発言で、両親の怒りは沈下する。
そこを狙ってホッとした顔をする。
「よかった!いつもありがとう!大好きだよ、お父さん、お母さん。」
明るく言えば、2人は気まずそうに笑う。
子供だましの良い笑顔で私に伝えてくる。
「もちろんだ!お父さんも凛が大好きだ!凛のために無理してでも頑張るからな~!?」
「お母さんもよ。凛が大好きだから、凛のために我慢して頑張れるわ。凛も、それに答えてね?」
「うん、ありがとう!」
(茶番だな。)
外面でニコニコしながら、内心では悪態をつく。
(『凛のため』、『凛のため』・・・『私のため』って言うけど、知ってるんだからね?)
よくもまぁ、恩着せがましいことが言えたものだわ。
両親の言葉の端々に見え隠れする『感謝をうながす』態度。
(娘を有名高校に入れたことを自慢しているくせに。)
周りから、『すごい』と言われ、『さすが菅原さんだ』と言われて、気持ちよくなってることは知ってる。
『親の教育が良い』と言われ、『子育ての成功者』のつもりでいる。
(・・・親の意見は聞くよ。私より長く生きてて、社会経験がある。失敗の経験もあるから、同じ間違いを子供にさせないようにという気持ちは伝わってくる。)
理解してるよ。
(理解してるから、逆らわないで従っている。)
頭では、理性ではわかってるけど――――――――誤解してる。
『納得してる』と勘違いしないでよ。
(私は、あゆみが丘学園になんか行きたくなかった・・・)
行きたくないと言ったけど、正論で返されて、言い返せなかった。
なによりも私の生存権を、働けない未成年の私が生きていくためのお金をにぎるあなた達の言い分を聞いただけ。
奨学金を使ってでも、別の学校に行くべきだったかと後悔したこともあったけど、今はこれでよかったと思っている。
――凛!――
(・・・・・・・瑞希お兄ちゃんに再会できるルートだったから、これで正解だったんだよ。)
そう思うことが、私にとっての何よりの安定剤。
真田瑞希様が、唯一の心の支えだから。
「凛、今日はお父さんもお母さんも遅くなるから、先にご飯食べちゃってね?」
「わかった。もしかしたら、友達とテスト勉強会するから、私も遅くなるかもだけど。」
「あら、前に話してた夏休み中に学力が下がってないか確かめる、新学期最初の学力テストの勉強会のこと?」
「うん。」
「だったら、夕食は作らないでお金を渡しておくわね。みんなと何か食べなさいね?」
「え?お弁当作っていくからいいよ。持ち寄りみたいにしようって話してるから。」
「だめよ!お弁当作る時間がもったいないわ!凛もお友達も!勉強時間にあてなさい!はい、お金!」
「・・・ごめん、お母さん。」
「そこはありがとうだぞ、凛?ほら、お父さんからもだ。甘い物を買って、糖分をしっかりとるんだぞ?おつりは、お小遣いにしていいからな!」
「ありがとう、お父さん。お母さんも、本当にありがとう・・・。」
「いいのよ。どういたしまして。」
「しっかり勉強しておいで。」
両親から現金を受け取り、何とも言えない気持ちで微笑む。
(嘘ついてごめんね・・・)
友達と勉強なんてしない。
そもそも、私に友達なんていない。
菅原凛に友はいない。
(・・・おつりは返そう。)
使ったように見せかけて、それらしい金額は返そう。
嘘がバレないための工作。
使ったいう設定の金額は、私の意思を無視する両親への慰謝料として『預かって』おく。
お金のことで嘘をついていることへの罪悪感は消えないけど―――――
(外に方法がないでしょう?)
「ごちそう様!行ってきます!」
「いってらっしゃい、凛。」
「しっかり勉強してくるんだぞ?」
「はーい!」
無邪気な声を出しながら玄関を出る。
お父さんもお母さんも知らない。
(私に友達がいないことを。)
友達がいないことに気づいてないのだから、わかるはずがない。
(私がいじめられていることに。)
気づくのを待つべきか、自分の口から言うべきか。
まだその答えを出せずにいる。
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