第20 -金田1

 入念に体を洗いながら松村と話しをしていた。


 男二人して入るには少し狭い風呂だが、こいつと話しておきたかった。


 お互いの話を擦り合わせしておきたかったし、釘を刺しておかないと、さっきからビビり過ぎてるし、うっかりバラしそうだしな。



「本当に…大丈夫なのかな…」


「んだよ、今更もう遅いって。お前も共犯だからな」



 ま、証拠なんて何一つ残してないから大丈夫だろう。


 俺らが口を滑らせ割らない限り。


 もし仮に疑われても証拠自体がない。今時メッセにしなかったのは、綾香ちゃんも昔の敦志の話と俺の演技にびびったんだろう。


 ああ、しかし凄かったな…風俗嬢なんて目じゃ無いくらい恐ろしく具合が良かった。



「…俺…昔から好きだったんだ…」


「俺もだっつうの。敦志のやつ、無茶苦茶だったからな…ザマァ見ろ、あのサイコ野郎が。お前ボコられたのいつだっけ。俺は高1の夏休み」


「…俺は…初めては……中学の時だ」


「あ? そうだったんか…?」


「ああ。綾ちゃんとは…関係無かったけどな…」


「へぇ。今日は良かったな」



 綾香ちゃんは松村も呼んでいた。そんな話、聞いてなかった俺は、一瞬美人局かとびっくりしたが、どうやら俺以外にも敦志は漏らしていたようだ。


 多少ムカつくけど拗れて流れたら嫌だし黙って綾香ちゃんに従った。どうやら相当怖くなったようで、短期に集中させたようだ。


 この部屋はゲストハウスみたいに貸し出されている古いマンションで、監視カメラとか万が一に怯える綾香ちゃんを安心させるため、死角も多いようなこの場所を本当に苦労して探した。


 俺も怖いしな。


 尤も、最近はそうでもないが。


 道具も何もかも言われた通りに用意した。多少は疑ったが、そもそも敦志が俺らを追い込む理由がない。それにあんなに必死にペコペコ頭を下げておっぱいをぶるんぶるん揺らしてたらどうでもよくなった。


 それに敦志にムカついていたのもある。


 やられた方は覚えているもんだ。


 あいつは昔から頭がおかしかった。


 綾香ちゃんにちょっかい出せば、すぐにボコってきた。


 綾香ちゃんを初めて見た時は震えて言葉が出なかった。こんな漫画みたいな清楚な美少女っているんだなってすぐに惹かれて好きになったが、すぐに諦めさせられた。


 全然関係ないのによ。


 ほんと狂ってやがったな。


 それがこうなるとはなぁ。


 人生わからないもんだ。



「ははは。それにしても簡単だったな。旦那の犯した罪は私が支払うから全部教えてってよ」



 こんなことになったキッカケは、綾香ちゃんとたまに会うスーパーだった。


 この夏の異常な暑さのせいか、むしゃくしゃしていたところに、超美人妻になった綾香ちゃんが居て、俺の顔を見るとすぐに話しかけてきたのだ。


 そして高校の時のことを聞いてきたのだ。


 宮田のことかと一瞬たじろいだが、俺の心配をしてきた。なんでも酔って帰ってきたあいつが、何やら不穏なことを呟いていたそうだ。


 それがずっと気になっていたらしい。


 そういえば、昔からこっちがひやひやするくらい誰にでも優しい子だったと思い出した。


 その申し訳なさそうなシュンとした態度と、ペタペタと俺の身体を慰る姿と、大きく開いた胸元にドキドキした俺は、いつの間にか昔ボコられたことを話していた。


 罪悪感でも刺激して、少しくらい構ってもらい、潤いを分けてもらおう、そんなくらいの感覚だったように思う。


 まあ、多少は盛った。というか宮田がされたことを俺に置き換えて喋ったんだが、俯いてブルブルと震えていた綾香ちゃんの優しさにつけ込んで良かったな。


 悪ぃな、宮田。


 サンキュー。


 思えばお前も可哀想だよ、ほんと。


 でもサンキューサンキュー。


 つーか、敦志のやつ、アルコール飲めるようになったんだな…同窓会の時は少し飲んだだけでも鬱陶しかったが、今度誘うか。うまい酒が飲めそうだ。



「……上手く誘導された気もするけどな」


「そうか? まあ溜まってたんだろ。なんだ? ああ、美人局か? あの子にそんな考えなんかないって。何せ俺らごときにホイホイ騙されるんだからな」



 松村とは卒業してからあまり連絡はとってなかった。今回の話もあって、それとなく確認もしたが、まさかお前もだったとはな。



「ッ、そう…だな。にしてもショックだったな…」


「はは。こんな提案されるなんてな。贖罪の気持ちだろうけど、なんか敦志の性癖見えて気持ち悪いよな」



 目隠しと口枷が特にな。


 まあ、そんなわけないがな。


 興奮するだけだがな。


 とりあえず一戦終えて、次は3Pだ。今度は服も脱がせて好きにしていいらしい。どうやら最初はやっぱり怖かったらしく、さっきのでいろいろと吹っ切れたみたいだ。


 俺らも飛びつきたかったが、綾香ちゃんには何だかんだで敦志カードがあるしな。極力嫌がらないよう気持ちを抑えるのが大変だった。


 覆面とか逆効果だろ。まあ、「顔を見るのが…恥ずかしくて…」なんて言われたらな…


 ま、突っ込むまでが倫理の境界線だしな。


 これで無茶苦茶できるだろ。


 それにしても儀式って言われて何事かと思ったぜ。目隠しや口枷はともかく、全ていいえで答えるってなかなか良いよな…


『旦那裏切って気持ち良くなってんだろ?』


『ひひへっ…』


 うははは。癖になりそうだ。


 口枷なしが楽しみだ。


 絶対ベロチューしてやる。


 しかし、清楚系の人妻って何であんなに色っぽいんだろうな…監視カメラとか目隠しとか口枷とか口頭のみの連絡とか面倒なお願いばかりだったけど、いやぁ信じてよかった。


 もう死んでもいいくらいだ。


 あいつ本当に恐ろしいからな。俺も必死だったけど、ヤるまではどこか熱に浮かされて突っ走っていたな…


 ま、あの念願の初恋青春おっぱいで頼まれたら仕方ないだろ。敦志の嫁ってのがまたヤバい橋過ぎてヤバいし。


 碌に動けずに爆発してしまった。


 女用コンドームとか初めてだったが、この為だったんだな…綾香ちゃんが恥じらいながら言うから何かと思ったが…


 あの腰使いと締め付けヤバすぎだろ。


 ま、これであいつをようやく許せそうだ。


 それにしても、あの敦志がセックスレスか…アホ過ぎるだろ。まあ子供出来たら勃たないってやつ居るからなぁ。


 ウィンウィンだな。


 会った時の顔が楽しみ過ぎる。


 ま、ちょっと期間開ける約束だけどな。


 偶然なら仕方ないだろ。


 優越感が爆発しそうだ。うははは。



「いや……そうだな…もう遅い、よな…」


「変なやつ。ま、とりあえずもう一度楽しもうぜ」


「でもな…」


「ああ? またかよ。だからあいつ出張中なんだろ? 大丈夫だって。それにいざとなったらまた宮田のせいにしようぜ」


「…そう…そう、そうだよな…あいつが悪いんだ…あいつが…」



 変なやつだな…宮田は別に悪くないだろ…むしろ感謝しろって。宮田様々だ。殴ってほんと悪かったな。あとサイコ旦那様々だ。


 つーかこいつ、名前通り賢者かよ。鬱タイム長すぎだろ。


 まだ初日じゃねーか。


 俺なんかまだまだギンギンだぜ?


 あん? つーかお前もじゃねーか…なんだその寂鬱感に見合わないブツは。


 たらたら先走ってんじゃねーか。キモ。


 こいつもやべぇな…汁男優かよ…


 あーなんかお前の小学校の時のあだ名知ってるぞ。思い出した。なんだっけ。洗濯屋だっけ。いっつもパンツ濡らしてたんだろ? ははは。


 ま、いいや。


 絶対この一週間で寝取ってやるぜ。


 あーたまんねぇわ。


 あの高1の夏、ボコられる前にまるで戻ったみたいだ。


 神様っているんだな。

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