第57話 強さの先

 ロッサ達が村に留まり始めてもう一か月が経っていた。ロッサは時間軸が違う無の空間で特訓をしていたらあっという間に歳をとってしまい無の空間に入る前のロッサの年齢は十九歳だったのだが一か月ちょくちょく入っていただけでロッサの体は約五年の月日が経っていた。見た目も青年と少年の間ぐらいのあどけない感じだったのが今やもうしっかりとした大人の青年になっていた。


 みるみる大人になっていくロッサにマナ達はそれぞれこう言った。


「たまらん!」


「なんか気づいたらおめぇも立派な顔つきになってきたじゃねぇか!」


「男前が進んだな。」


 するとマクティスが言った。


「合計して約五年ほどの時間をあの中で過ごしたのは大したものです。強さもほぼほぼ限界に近い所までいったんじゃないですか?」


 ロッサはマクティスにそう言われると限界に近い所まで強くなれた事を伝えると丁度会話を聞いていたであろうタールが話を聞いていてやってきた。


「ほほう。強くなったか!それでは私と戦うのである!」


「女の子と戦うのはちょっと・・・。」


 ロッサは困ったような口調で言った。


「なぁーに!大丈夫だ!これでも私はドラゴンの中でも強い方なんだ!なんせ四天王の一人だからな!」


 ロッサはドラゴンに四天王がいることをここで知った。するとタールが言った。


「あぁ、いるともさ。東西南北それぞれ見守るドラゴンが私を入れて四匹な!私は南のドラゴンなのさ!強さも魔王級だぞ!」


 それは本当なのかとロッサはマクティスに確認してみるとどうやら本当らしい。マクティスとやり合ってマクティスは勝ったことが無いという。


「うげっ!そんな強いドラゴンがいたなんて、魔王よりも強いんじゃ・・・。」


「確かに他の魔王よりも強いですが、あの魔王ディアよりは弱いですよ。私も敵いません。昔から異常な強さですからねあの人は。」


 タールは自分が弱いと言われると少し機嫌が悪くなっていた。そんなタールを見たロッサは気を遣うようにこう言った。


「タールってば東西南北のドラゴンの中で一番強いんでしょ?」


「ま、まぁな!私が一番強い!」


 それを聞くとマクティスがタールにツッコんだ。


「何を言ってるんですか。あなたは一番弱いでしょうに。」


 タールは図星を付かれたみたいでそろりと逃げていった。


「ちょっとぉ!僕と戦うんじゃないのぉ?」


「また今度なぁ!さらばだ!」


 タールはそのまま逃げ去って行った。仕方が無いのでロッサはマクティスと手合わせをすることになった。


「それでは五年間の集大成見せてもらいますよ!」


 マクティスは風魔法で作った剣を構える。ロッサも構えるとマクティスは自ら特攻してきた。ロッサは動くことなく剣に手を置くとカウンターを狙っていた。


 マクティスはその攻撃を見抜きロッサの死角から木の根で作った自分の分身を襲わせた。ロッサは剣を抜き分身を斬るとそこに隙が生まれマクティスが剣で攻撃をしてきた。するとそこに居たはずのロッサが居なくなりマクティスは驚いていた。元魔王のマクティスさえ追えないほどの速さでマクティスの背中側に移動したロッサは剣を首元に突き立てる。


「僕の勝ちです。」


 それを見ていた三人と二匹は驚いていた。


「あのマクティスさんい勝っちまいやがったぁ!」


「また強くなったのね!」


「これはすごいな!」


「流石は主!」


「強くなったねぇ!」


 するとマクティスはロッサを称賛した。


「流石ですね。五年ほどの時間を使って修行させたのは正解でした。本気でやってもあなたには敵わないでしょう。参りました。」


 ロッサはマクティスを倒せたことの嬉しさを内に潜め感謝を述べた。


「良い修行場所を提供してくださってありがとうございます。あなたのおかげでまた強くなれました。」


 ロッサは冷静である。


「成長しましたね。感情の高ぶりを抑え何時いかなる時も冷静さを保つという術を身につけたみたいですね。肉体だけではなく精神も強くなりましたね。私は感激しています。」


 それと同時にマクティスは心配事も口にした。


「あなたを見ていると限界に近い所まで辿り着いてしまったような気がします。もう強くなることは難しいでしょう。そんな気がします。」


 その意見にロッサは同意した。


「それは僕も思います。」


 明らかに強くなったロッサの実力は限界に近い所まで上がり切っていた。もし今の自分よりも魔王ディアや魔王ゾールが強かったらと思うと先が無いのである。


 だが元魔王ナンバー2のマクティスに勝ってので自信を持てとマクティスに言われるとそれを胸に刻むロッサだった。


 戦いが終わるとマナがとりあえず休憩をしようと提案してきたのでロッサはマナの提案を受け入れた。するとマクティスはこう言ってきた。


「それでは今夜は宴にしましょう。私を打ち負かしたお祝いです。」

 

 ロッサ達は宴が開かれる前にバーゼルの所へ行くと少し手伝いをした後に宴を楽しんだ。宴は夜通し行われ村人皆幸せそうだった。


(この笑顔を守って行かないとな・・・。)


 そう心に誓うロッサであった。


「笑顔は大事だなぁ。」


次回へ続く・・・。

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