第55話 無の空間

 バーゼルが男手をかき集めている頃。ロッサはマクティスが作り出した無の空間の中で修行を行っていた。


「体は重いし暑いし空気が淀んでるよ。」


 ロッサはそんな空間の中でまずやり始めたのは基本的なトレーニングだった。


「よし!まず初めに腹筋だ!」


 ロッサは自分の身体能力を高めるために根本的に体を鍛え始めていた。


 外の世界で二十分後。バーゼルが男手をかき集め終わっていた。


「ロッサよ!男手をかき集めて来たぞ!ってあれ?いねぇな。」


 するとマクティスがバーゼルを見かけるとこう呟いた。


「おやおや、もう集めたのですか。早いですねぇ。まぁ、あちらの時間ではもう二十時間程経っている頃でしょう。そろそろだしてあげましょうか。」


 するとマクティスは無の空間の入り口を開けてみた。その中には全身汗だくで腹筋をしているロッサがそこには居た。


「19998。19999。20000。」


 ロッサはちょうど一時間に千回ペースで腹筋を行っていた。ロッサの腹筋は限界だった。


「ひいぃぃぃぃぃ!腹が割れるううぅぅぅ!」


 ロッサは腹が痛いのか辺りを駆け回っていた。それを見ていたバーゼルは言った。


「おーいロッサ!早速作業するぞぉ!」


 ロッサは腹筋を終わらせた所で腹も減っている体にムチを打って作業を手伝いに行った。大森林の一角に辿り着くとバーゼルがこう言った。


「ここら辺の木を切り倒してくれ!」


「え、切り倒しちゃっていいの?」


 そう言うとドリアードが現れロッサに言った。


「大丈夫ですよ。森は広大なのですから少しぐらい切ったところでまた元に戻ります。」


 ロッサはそれを聞くと安心して難なく木を切り倒した。


 バーゼルはロッサの切ってきた大量の木材を加工して建築を始めた。それと同時にエルフ達に自分の技術を伝授しようとしていた。エルフ達は非常に覚えが良く作業は順調に進んで行った。そんなエルフ達を見ていたバーゼルは一人呟いた。


「覚えが良いと教えがいがあるなぁ!」


 バーゼルは嬉しそうだった。そんな中ロッサは端っこで食事をしていた。


「二十時間ぶりのご飯は美味いなぁ!」


 その様子を見ていたマクティスはこう思っていた。


(中々忍耐力がありますねぇ。)


 マクティスはそう思うと何やら無の空間の調節をし始めたのだった。


 一方、他の三人はというとロッサと同じく個別に無の空間に入れられていた。グローリは五倍の重力の空間。マナは魔力が狂っている空間で上手く魔法を操作する修行。アリッサはどこからともなく敵の影が出てきて矢を連続で射ることが出来る空間。それぞれの時間は外の世界と同等に流れている。ロッサよりは過酷ではないが個々にとってはかなり厳しい条件である。


「皆は何処に行ったんですか?」


 ロッサはマクティスにそう聞くとマクティスはロッサと似たような空間で修行をしていると伝えた。ロッサは自分だけが無の空間に入っているわけじゃないと知ると修行へのやる気がより一層高まった。


 バーゼルが建築をしだして二日後。


「ロッサよぉ!できたぜ!」


 バーゼルがロッサを呼びつけてできたての家を見せていた。


「おお!すごいじゃないか!」


 なんと、綺麗で頑丈そうな木造の家がそこに建っていたのだった。


「これからどんどん作るからな!」


「うん、任せたよ。」


 ロッサはそう言うと同時にある一つの問題があると気が付いた。それは労働力の無さだった。エルフ達だけでは流石に効率も悪いだろう。力仕事が苦手な種族であるエルフにとっては重労働である。


「もっと良い労働力が欲しいなぁ。力が強くて体力のある種族がなんかいないかぁ。ま、これから見つければいっか!」


 ロッサはそう言うとまた修行を始めようとするとマクティスに突然こう言われた。


「今度の空間は重力が十倍になっているので気を付けてくださいね。」


「十倍かぁ。やってやりますよ!」


 ロッサはまた無の空間に入って行った。ロッサは十倍の重力の中でまた基本的なトレーニングを始めた。この調子で鍛えて行ったらまた一段階、二段階と強くなれることに確信をしていたロッサ達は個々の修行に胸を震わせるのであった


「マクティスも凄い事やらせるなぁ。」


次回へ続く・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る