修行の旅 編

第38話 強さを求めて

 魔王ディアに襲われた場所へもう一度到着していたロッサ達はあまりの崩壊の仕方に絶句していた。まるでこの場所に隕石でも降ってきたかのようなその跡は見るも無残だった。


「改めて見ると凄い破壊力だ。」


「ここに居た人達は皆死んじゃったのかなぁ?」


「多分そうだろうな。」


「罪もねぇ人達を・・・。」


 ロッサはその光景を目に焼き付けると自分を責めた。自分がもっと強ければこのような結果にならなくて済んだのではないかと自分自身と葛藤していた。


「・・・ッサ!ロッサ!」


 マナに呼ばれていたことに気付いたロッサはマナを見る。


「こうなったら魔王ディアなんかに負けないくらい強くなって見返してやるのよ!」


「そうだなぁ!もっともっと強くならなきゃなぁ!やられたままじゃあ腹の虫が治まらねぇ!」


「その通りだ!」


 それぞれ魔王ディアに見返してやろうと心に決めたのだった。


 その後その場で座り込みこの地で亡くなった人達の為に祈りをささげたロッサ達だったのだ。


 ロッサ達は強くなりたいと願うのだがどういう風に強くなればいいのか今の状況では分からないでいた。するとロッサが皆に言った。


「修行するにしても僕達より強い人に修行をつけてもらいたいよね。」


 アリッサがその言葉に反応して言った。


「うむ。私達三人より強い者は沢山いるだろうがロッサより強い人となると魔王ぐらいの者じゃないか?」


「そうだよね。うーーーん。どうしよう。」


 悩んでいるロッサにマナが一つ提案をする。


「困った時の魔王ゾールじゃない?魔王ゾールの所へ行って助言を聞きましょ!」


 ロッサは手を叩き言った。


「その手があった!」


 早速ロッサ達は魔王ゾールの元へ空間転移を使って再度向かった。魔王ゾールは急に現れたロッサ達に驚いていた。


「ぴゃあああああ!」


「ぴゃあああああってどこから声出してんの?」


 魔王ゾールは魔王の威厳を保つため咳ばらいをし態勢を立て直していった。


「う、うるさい!ビックリしたんだから仕方が無いだろう!それに何の用だ!この前出発したばかりだろう?」


「それが・・・。」


 ロッサは魔王ゾールに自分達がもっと強くなりたいから良い相手はいないかと尋ねてみた。


「修行の相手ねぇ・・・。」


「どうだろういないかな?」


「お前達を鍛えるのに丁度良い相手はいないこともないが・・・。」


 それを聞いたマナが魔王ゾールを急かす。


「誰なのよ!その相手って!」


 魔王ゾールは落ち着いてマナの言葉に答えた。


「うむ。ズバリ!他の魔王を倒して行くっていうのはどうだ?」


 それを聞いたロッサ達一同は不思議そうな顔で声を合わせて言った。


「へ?」


 ロッサ達は理解するまで数秒かかった。すると魔王ゾールが補足説明をしてきた。


「倒すと言っても殺す事じゃないぞ!一番弱い魔王から順番に倒して行って最終的に魔王ディアの野郎に辿り着ければいいねって話だ!そうすれば旅をしながら自分達を鍛えれるぞ!」


 その提案を聞くとロッサが言った。


「それはいい考えかもしれない。」


 しかしマナがある疑問に気づき魔王ゾールに言った。


「でもそれはロッサが強くなる方法でしょ?私達はどうやって強くなるのよ?」


 それを聞いた魔王ゾールは自信満々でこう言った。


「大丈夫だ!魔王の側近もかなりの実力者揃いだ。頼めば修行させてくれるだろう!多分な。」


「多分って・・・。」


 確定ではないが魔王ゾールの提案が二つありあともう一つの提案があるという。それは人の姿とドラゴンの姿両方の姿になれる言い方を変えれば龍神族という種族がこの世界にいるかもしれないと言うのだ。エルフよりも伝説の歴史が長く本当に存在しているのさえ怪しい種族で魔王よりも強い者達がわんさかいると言うらしい。


「そんなおとぎ話みたいな種族いるの?」


 ロッサは魔王ゾールに聞いてみた。


「いるかいないで言うと私はいると思う。現に魔王ディアを退けたのは誰だ?龍神族ぐらいじゃないとアイツを追い返せないぞ?あの時出てきた光ってのは龍神族の誰かなんじゃないかと私は思ってる。」


 だがしかしそれは憶測でしかないので確証はできない。ロッサ達は一先ず強さが一番下の魔王から戦いを申し込もうと目標を立てた。すると魔王ゾールが教えてくれた。


「魔王達の中で一番弱いのはヴァンパイアの魔王ロックハートだな。あいつのp強さは一番下だが頭が良いし類いまれなる魔法を使う者だ。」


 そう言うと何もない空間から広い地図を映し出し魔王ゾールは指をさしながら場所を説明してくれた。


「ざっと私の城から北西に二千キロくらいだ!」


 距離を聞いたロッサ達は驚いていた。


「に、二千キロ・・・。」


 マナは肩を落としていた。


「しばらくは硬い地面で寝ることになるな!」


 何故かアリッサは胸を張っている。


「俺は構わねぇけどよぉ。遠いな。」


 グローリはえらく冷静だったのだ。それぞれ距離の遠さに反応していると魔王ゾールが馬車に関して言ってきた。


「そう言えばお前達の馬車はどうしたんだ?」


 実はロッサ達が魔王ディアに襲われた直後に馬達が衝撃で逃げ出してしまっていて行方が分からなくなってしまっていたのである。つまり、魔王ディアに襲撃された場所へは徒歩で行っていたのである。


「実は馬が逃げちゃって・・・。」


 それを聞くと魔王ゾールは楽しそうにロッサ達に言った。


「そうか!逃げたか!これも鍛錬だ!歩いて行ってこーーーーい!」


 ロッサ達は声を合わせて言った。


「えーーーーーーーーーーー!」


 ちなみに徒歩だと二千キロは二週間かかるらしい。


「大丈夫だ!途中に村や町はあるのだから心配するな。」


 遠い遠い目的地にやる気が上がったり下がったりするロッサ達はヴァンパイアの魔王ロックハートの元へ旅立つのであった。


「空間転移届かないのかな?」


次回へ続く・・・。

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