第30話 初めてのキス
王女の護衛を急遽することになったロッサ達は緊張の糸を張り巡らせながらデリオールの国へと向かうのだが途中まで危険なことは特に無くデリオールの城まで辿り着いた。城へ着くと謁見の間へと案内されロッサ達は待っていると国王がやって来て言った。
「おぉ!そなたらが我が娘アリスを守ってくださった旅人達だな!」
するとアリスが胸を張りながら自分の父にロッサを指さし紹介した。
「そうなのだ!そして私の旦那様候補のロッサだ!」
いきなりのアリスの発言にロッサ達は声を合わせて驚いた。
「えええええええええええええええええ!」
「ちょっと待ってよ!いつからそんな話になったの?」
ロッサは慌てふためく。そしてマナがアリスに対抗してこんな事を言っていた。
「ロ、ロッサは私の物なんだから駄目よ!」
「え?」
二人は目を合わせる。突然のマナの発言にロッサ達は目を逸らし顔を赤らめる。アリスは楽しそうにこう言った。
「あーはっはっは!冗談なのだ!」
そんな風にアリスに踊らされていた人達を見ていたアリッサは呆れていた。
「やれやれ・・・。」
すると国王が汗を拭いながら言った。
「ま、まぁ我が娘はちょっとやんちゃなのだ。許してやってくれ。」
国王は護衛の謝礼としてかなりのお金と勲章を授与すると言うがロッサ達は勲章の授与だけは断った。成り行きで助けたわけだし勲章を貰う程何もしていないとロッサは言ったのである。
「そうか?ならば困ったことがあればわしに遠慮なく言うが良いぞ!その時は助けになろうぞ!」
ロッサはそう言う国王の言葉を素直に受け止めて言った。
「はい!困った時があったら頼りますよ!」
「そうか。それでは次このデリオールに来たときは国王のデニスに用があると言えば普通に通してくれるでな。私を名前で呼ぶ仲だと兵士達は分かってくれるであろう!」
するとグローリのお腹からとても大きな音が鳴った。
「わりぃー!腹減っちまった!」
グローリの言葉を聞いたデニス王は盛大な料理を出してくれてロッサ達と食事をした。食事の中でアリスは気になったのかエルフであるアリッサに話しかけていた。
「アリッサはエルフなのかぁ?」
「そうだとも。エルフの集落からロッサ達の旅の仲間に入れてくれたのだ。」
アリスとアリッサは楽しそうに会話している。
グローリは「うおおおおおおお!」と叫びながら飯をかきこんでいる。よほど腹が減っていたのだろう。
マナはと言うと今さっき盛大な失言をしてしまったので恥ずかしさからあまり食が進んでいないようだった。ロッサは気を使いマナに言った。
「食べなよ!美味しいよ!」
「そ、そうね。いただきます。」
ロッサの言葉で少しずつ食べ始めたがまだロッサの顔を見るのは無理そうだった。そんな様子をロッサの肩から見ていたマロンが呟いた。
「百十八歳の恋ってか。」
マロンの皮肉めいた言葉にロッサが注意する。
「コラコラ。聞こえたらえらい目に合うよマロン。」
「どうせ聞こえないから大丈夫だよ。」
するとこちらを睨んでいたマナがそこにはいた。
「なんか私に対して失礼な会話してない?」
マロンは体を震え上がらせるとロッサが片言で言った。
「ソンナコトナイヨ!」
「ふーん。まぁいいけど。」
そんな風にして食事を楽しみ今日は城に泊まって行くと良いと言われるとそうすることにしたロッサ達。すると部屋の中は豪華なベッドがあり風呂場は広すぎて体を休めるにしては大きすぎていた。豊富な夜食もありそれを食べて一同は眠りに着いた。
次の日。
「うーーーん。なんか重いなぁ。」
ロッサは自分の両腕が重くなっているのをひしひしと感じながら起きてみると左腕にはマナ。右腕にはアリスが引っ付いて寝ていてロッサは困惑していた。
「い、いつの間にこんな状況に・・・。こ、国王にバレたら殺されるぅ!」
急いで二人を起こしアリスを部屋から出て行かせようとしたロッサ。
「ふ、二人とも起きてって!特にアリスはここにいちゃダメでしょ!」
そう言うとマナとアリスが起きて言った。
「うーーん。ん?な、なんであんたがここにいるのよ!私が忍び込んだ時はいなかったのに!」
「はーはっはっは!イイ顔が見れたのだ!それでは退散するのだ!」
アリスは満足気に言うとその場を去って行った。
「アンタ。あの娘に何かされなかったわよね!てかしてないわよね!」
ロッサは両手を上げて言った。
「何もしてないしされてもないよ!」
「そう。それなら良いのよ。」
そう言うと去り際にロッサの頬にキスをして自分の部屋に戻っていくマナだった。マナにとっては百十八年生きてきての初めてのキスだった。ロッサにとっても初めてされたキスであった。ロッサは突然キスされた頬を触りながら「ほへ?」とした顔で惚けていた。
「なんかマナが積極的になってきたねぇ。」
刺激的な朝を迎えるロッサだった。
次回へ続く・・・。
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