第23話 父と娘
鬼の里から旅立ち一週間が経った頃。ロッサ達はある砂漠地帯に足を踏み入れていた。とても暑そうなマナがロッサ達に愚痴っていた。
「あっついわねぇ!なんであんた達はそんな平気そうなのよ。」
修行でこの砂漠地帯の気温は涼しいくらいのロッサとグローリは言った。
「修行でエグイ思いをしたからね。これくらいどうってことないよ。ね?グローリ!」
「そうだなぁ!あれに比べたらまだ楽だな!」
そういう二人にマナは暑さでどうにかなりそうな様子で言ってきた。
「はぁ。はぁ。か弱い少女をいたわりなさいよ!」
すかさずロッサがマナに問いただす。
「少女ってマナは百十八歳でしょ?少女じゃ・・・。」
マナに言い終わる前に叩かれたロッサ。
「そういうことは女の子に言っちゃだめなの!」
ロッサは渋々頷いた。
「は、はぁ。」
なんか悪い事でも言ったかなと思うロッサだったがそんな事は気にせず先に進んでいた。ロッサとグローリは暑さに慣れていたが流石に熱すぎる気温に馬車を引いている馬達を悲鳴を上げていた。
「ひぃぃぃぃぃぃ。あちぃぃぃぃぃぃぃ。」
それを聞いたロッサはそろそろ休憩にしようかと思っていたその時。遠くの方に青く茂っている場所が見えてきてロッサは言った。
「あれは!オアシスじゃないかな?」
すると馬車を引いてくれている馬達が水を見ると叫びながら走った。
「み、水があるうぅぅぅぅぅぅ!」
馬達は夢中で走り馬車の中はガタガタ激しく揺れ動いた。すぐさまオアシスに辿り着いた馬達は水をがぶ飲みしていた。
「ぷはぁ!うめぇ!」
ロッサ達も続けて飲んでみた。確かに美味しいと言えるほど透き通った水だった。するとロッサは思った。
「ここにオアシスがあるなら近くに町かなんかあってもいいはずなんだけどなぁ。」
そう言うロッサに皆口をそろえて「確かに。」と言った。辺りを見回してみると何にも無いただの砂漠地帯で、町があってもおかしくない不自然なへこみにオアシスがあった。するといきなり風が強く吹き上がった。強く吹いた風が辺りの細かい砂を落とし始めると家の瓦礫みたいなものが埋もれていた。埋もれていた瓦礫を見るとロッサは瓦礫に近づき呟く。
「これは一体・・・。」
気になったロッサは魔力探知で周辺の地形を確認してみた。すると周辺の地形を見るに元々町があった痕跡があり全てロッサ達の周りの砂山に埋もれていた。もう既に壊滅状態であり町が丸々滅んだ状態だった。ロッサは驚きながら言った。
「どうして町が飲み込まれているんだ?」
ロッサ達は詳しく調べようと周辺を探索しているとある気配がしてそちらを見てみると一体のガイコツがこちらに向かってきていた。ロッサ達は身構えるとガイコツが話しかけてきたのでとりあえず話を聞こうと身構えるのをやめた。そしてガイコツは言った。
「ここは私が生きていた頃。サマンサと言う町があった場所なのだ。」
ロッサはガイコツに聞いてみた。
「何故こんなに砂が埋もれて・・・滅んだんですか?」
するとガイコツは空を見ながら言った。
「私が滅ぼしたんだ・・・。」
話を聞くと昔サマンサの町があり、貧富の差が激しくほとんどスラム街のような廃れた町になってしまい女・子供は攫われ売り飛ばされる始末。男共は強制的に労働をさせられるために連れて行かれ帰って来るかも分からない怪しい仕事をさせられていたと言った。本当に酷い環境で金持ちの裕福な人達はそれを嘲笑いながら見物すると言った最悪な環境だったらしい。その環境下でサマンサの町の上級国民達に嫌気がさしたガイコツの魔法使いが悪魔に魂を売り一日で皆を道連れに町を滅ぼしてもらったのだというではないか。
ただ一つ心残りがあるというガイコツはこの世に留まり続けているというのだ。その心残りとは愛する妻を強引に連れていかれ子供とも離れ離れになってしまってどうしているか分からないという。
「私の妻はヴァンパイアだったが殺されたようで私が悪魔と契約してサマンサの町を滅ぼしたその日。牢屋で妻の亡骸が放置されていたのを今でも覚えているよ。娘は今どうしているのか・・・。生きているのか・・・。」
ロッサはガイコツの魔法使いの妻はヴァンパイアでマナもヴァンパイア。マナの魔力とガイコツの魔法使いの魔力の質が似ていることを確認するともしやと思いガイコツの魔法使いに確認してみた。
「もしかして・・・その娘の名前ってマナとか言いません?」
するとガイコツの魔法使いは驚きながらロッサに言ってきた。
「ほぁ!何故私の娘の名前を知っているんだ!まさかマナを知っているのか?!」
ロッサは確認すると落ち着きながら隣にいるマナを見ながら言った。
「知ってるも何もここにいるのがマナですよ。」
ガイコツの魔法使いとマナはお互いに目を合わせると感動の再開を果たしたのだった。するとマナが言った。
「ま、まさか私にお父さんがいたなんて・・・。」
マナの父はマナの様子を見ながら言った。
「無理もない。攫われたのはお前が赤ん坊の時だったからな。はぁ、良かったお前のお母さんはもうこの世にいないがこの数百年心配で心配で・・・。さぞ苦しい人生を歩んできたろうに・・・。すまない。」
マナは肩を落とす自分の父に明るく声をかけた。
「お父さん!顔を上げて!辛いこともたくさんあったけど今が一番楽しいからいいのよ!私は今生きているし幸せよ。大好きな人もできたしね!」
そう言うとロッサの方を向き笑いかけるマナ。ロッサは少し照れるような顔をした。マナの父は二人を見ると安心したのかマナに言った。
「そうか・・・。今お前さんは幸せなのか。それをきいてお父さんは安心したぞ。これで私も安心して逝けるよ。そこの君。マナをよろしく頼んだよ!」
ロッサはそう言われると黙って頷いた。
するとマナの父の周りに光が差し込みマナの父の体が生前の姿を取り戻しながら薄く消えていくようだった。するとマナの父は自分がはめていた指輪をマナに手渡しこう言った。
「その指輪は魔力を溜めておける指輪だ。お前さんの母が身に着けていたものだ。大事にするんだぞ。お前さんは私とお母さんの子供だから人より異常に魔力が強いはずだから悪の道へ進んじゃあいけないよ。私の様にならないで欲しい・・・。それでは私はそろそろ逝くとしよう。さらばだ。」
マナの父はゆっくりと光が差し込む空へ飛んで行きながら消えて行った。
「やっと二人一緒になれたわね。あなた。」
「あぁ。長い間待たせたね。逝こうか。」
マナは天高く昇って逝った父を見送ると言った。
「お父さん・・・ありがとう。」
人生でたった一度。自分の父親に会えたマナは一粒の涙を流すと笑って終わらせた。
「さぁ!湿っぽいのは終わり!旅を再開させるわよ!」
いつものマナに戻ったと思いきやグローリとロウガが二人して号泣していた。
「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
マナは号泣している二人に言った。
「何よ!二人してそんなに泣いちゃって!」
「だってよぉぉぉ!」
「わおぉぉぉぉぉぉん!」
ロッサはマナの父にマナを守ることを心に誓い空を見上げるのであった。
「まさかマナがこの場所で生まれたとはなぁ。」
次回へ続く・・・。
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