第18話 第参試合
2人が同時に距離を詰める
同時に放った拳は会場に鈍い音を響かせる
鈍い音が会場を風のように通りすぎる
その直後崩れ落ちたゼーストを支えるノルンがいた
『勝者!ノルン•カーマ!』
「ノルン隊長おめでとう!」
「ゼースト隊長もよくやった!」
観客がノルンとゼーストを称える言葉を送られながらマカトに肩を貸してもらってノルンが、セラストに肩を貸してもらってゼーストが会場を後にした
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「団長……俺は」
「ゼースト楽しかったか?」
控え室に向かう途中でゼーストが小さくつぶやいた
「楽しかった……けど」
「着いたぞ」
何かを言おうとしたゼーストの言葉を聞かずにゼースト控え室の扉を開けた
「治療はしたからとりあえず休め」
椅子に座って悔しそうに拳を握りしめるゼーストを見て黙って部屋から出ようとしたセラストが止まって言った
「拳っていうノルンの土俵で頑張ったんじゃないのか?」
控え室の扉を閉めると中から何かを叩きつける音がした
「流石に冷たいんじゃない?」
「アレストか」
ゼーストの様子を見に来たアレストが眉をひそめてセラスタを見ていた
「ゼーストは俺より強くなってもらいたいんだ。甘えられたら困る」
「多分ゼースト君は『あんたに甘えるくらいなら死んだほうがマシだ』って言うよ」
アレストの言葉を聞いてセラスタは小さく
「ゼーストのことは俺が1番分かってる」
と呟いてそのまま司会をする席に座っているカルエトの方に向かった
「あれ団長どうしたんすか?」
「誰が勝ち上がったか確認したくてな」
少し暗い顔をしているセラスタの顔に気づいたが何も気づいていないフリをしてセラスタに勝ち上がった人を教えた
「セレスト副団長、アレスト副団長、ノルン隊長の3人っすね」
それを聞いて礼を言ってカルエトの頭を撫でてセラスタは控え室に行った
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控え室で自分の刀の柄を撫でて刀を机に置いて目を瞑って瞑想していた
第壱、第弐、第参試合を頭の中で振り返りながら自分が行う試合の展開を確認する
控え室にもカルエトの司会の声がかすかに聞こえた
カルエトの声のすぐ後に観客の声と会場の空気が揺れているのを感じた
(空気が揺れてる。そろそろか)
椅子から立ち上がって机に置いた刀を腰に帯刀して控え室を出る
控え室から出た瞬間控え室の中とは段違いの空気の揺れと会場の盛り上がりを感じた
「アレスト様! 応援していますわ!」
「セレスト副団長! 頑張れ!」
「ノルン隊長! さっきみたいな熱い試合期待してるぞ!」
観客の各々が隊長の名前を呼んで応援している
耳を澄ませば負けた隊長達の名前を呼ぶ声も聞こえる
「ピラーサ隊長! 来年楽しみにしてるぞ!」
「ツェルン隊長! 決勝で戦うところ待ってるぞ!」
「ゼースト隊長! 団長に勝つとこ見せてくれ!」
勝った隊長、負けた隊長関係無く投げかけられる観客からの声援を聞いて割れた鏡の破片を反射しているように眩しい秋の日差しの差す会場を眩しそうにしながら誇らしい笑顔を浮かべて帯刀してる刀の柄を撫でた
「団長としての威厳を見せる戦いにしなくちゃな」
『さあ! いよいよ剣術武闘会決勝! 我らが団長の登場だ! セラスタ•アルベル団長!』
カルエトに名前を呼ばれて黒のマントを靡かせながら出てきたセラスタを見て観客の歓声が強まる
「セラスタ団長様!」
「団長!」
「本日もお美しいですわ!」
目を瞑って観客の歓声を聞き、セラスタのことを倒すべき敵として見ている3人の視線を受け
「楽しめそうだな……」
目を開いて不敵な笑みを浮かべたセラスタを見て3人がすぐに構えた
『敗退条件は左腕の紐を切られることです!
それでは剣術闘技会決勝! 開始!』
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