第15話 第参試合
「お〜団長さんおかえり」
隊長席に戻ってきたセラスタにポルトがそう言った
「んで? 体調はええんか?」
「まぁ、良くは無いけど大丈夫だろ」
自分の体調なのに曖昧な答えをしたセラスタの脇腹をポルトは肘で小突いた
「ん? どした?」
「なんか小突きたくなっただけや」
曖昧な理由で小突いてきたポルトに困惑した表情を向けて首をかしげた
『只今から再開いたします!
対戦カードは先程申し上げた2人です!』
カルエトの声の後に目を瞑り静かに歩いてくるノルン
観客はただ静かにノルンを見ていた
そんなノルンに対して自分の愛刀を肩に担ぐようにして一歩一歩を大きく歩くゼースト
「対照的な2人ったい」
そんな2人を見てマカトが呟いた
すると突然ゼーストが自分の愛刀を会場の中央に刺してセラスタに向かって言った
「団長! この試合俺は拳でやる! いいよな!」
ゼーストの突然の言葉に観客もざわついた
セラスタの言葉を会場の全員が黙って待っていた
「良いだろう。ズルフィカーレは俺が持っておこう」
それを聞くとゼーストは会場の中央に刺してあるズルフィカーレを抜いてセラスタの方に投げた
「今の俺じゃ無かったら死んでたぞ?」
「あんただから投げたんだ!」
ズルフィカーレを邪魔にならないところに置いてカルエトに目配せをした
『第参試合 開始!』
カルエトの開始の声を聞いて2人が同時に距離を詰めた
「ノルンに近接戦でどれだけゼーストは張り合えるんだろうな?」
「どうやろなぁ……?」
「結構張り合えるはずじゃん」
セレストの問いにポルトや他の隊長達がお互いの実力を考えていた
「団長はどう思うのさ?」
「ん、俺か?」
アレストに聞かれてセラスタは2人を見ながら自分の唇に手を当てて少し考えた
「俺は……秘密にしとく」
「えぇ!? 秘密にしなくてもいいじゃん!」
「そうったい!」
少し笑いながら秘密と言ったセラスタに距離を詰めてピラーサとマカトが何で秘密なのかを問いただした
「ほらほら2人ともあんまり団長を困らせないの」
セラスタに詰め寄るピラーサとマカトをアレストが剥がした
(ゼーストのことだ、危なかっしい戦い方考えてるんだろうな)
戦ってる2人を見ながらそう考えていたセラスタを見てポルトがピラーサとマカトに言った
「まぁまぁ団長さんにも分からんことが有るっていうことやろ〜?」
「ポルト、お前後で殴らせろ」
「え? 怖〜」
少々馬鹿にするような仕草と口調で言ったポルトの方を見向きもしないでセラスタ言った言葉を聞いて本気にしていない態度で怖がった
少しして会場に鈍い音が響いた
「今のはだいぶ重いな」
「せやな」
会場に響いた鈍い音はノルンがゼーストの顎に一発入った音だった
「あの一撃は後々響くんじゃない?」
アレストの言葉にセラスタが黙って頷く
「マカト、すぐに治療できるようにしといてくれ」
「分かったったい」
そう言われたマカトは席を離れて治療道具の準備をしに行った
「止めるか? ゼースト立つのがやっとじゃねぇか?」
「もう少し様子を見る」
セレストが立ちあがろうとしたのを抑えてゼーストの様子を見た
(またゼーストの気概を折る訳にはいかない)
顎に重い一撃が入って少しフラついていたゼーストが大きく一歩踏み出してノルンのお腹に重い一撃を叩き込んだ
「あれ防ぐんか……俺やったら死んでるんやけど」
「そうだな。お前だったら防げたとしても両腕使い物にならないだろ」
重い一撃でふっ飛ばされたノルンを見てポルトが痛そうな顔をしながら言った
それを聞いてセラスタが馬鹿にするように鼻で笑って言った
「ん? 団長さん? 馬鹿にした?」
「した」
セラスタに笑顔で聞いたらすぐに肯定の言葉が出てポルトは黙って拳を握りしめた
吹っ飛ばされたノルンが立ち上がる
「ノルンちゃん意外と余裕そうだね」
立ち上がったノルンを見たアレストが安心したような顔をした
「ゼースト楽しそうだな」
「ん? そうか?」
セラスタの言葉を聞いたセレストはゼーストを見て嬉しそうに笑ってるセラスタを見て思わず微笑んだ
(この試合どっちが勝っても面白いな)
そう思ったら口角が上がって愛刀を握っていた
「俺も早くやりたいな」
そう呟いたセラスタを隊長達が見て頭を抱えた
(流石ゼーストの師匠……)
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