第5話 めちゃくちゃ会議

「だーかーらー! 団長殿が着る剣術闘技会の服は群青色! 両肩掛けで足首まである黒のマント! 膝まであって濃い緑のブーツ! それ以外認めないのじゃ!」


「いーや! その服はセンスなさすぎじゃん! 団長は純白の服に、右肩掛けで腰までの長さの黒いマント! 膝までの黒のブーツ! 白黒メリハリある服の方が団長に似合うに決まってるじゃん!!」


紫の髪色を団子にして和服風に騎士団服をカスタマイズして紫色のマントを羽織っている3番隊隊長のノルン・カーマ


灰色の髪のおかっぱ少年で灰色のマントを羽織っている5番隊隊長のピラーサ・フラン


この2人が顔を見合わせていがみ合っていた。


それを他の隊長達が呆れた顔を浮かべながら見ていた。


「お前らこいつらの喧嘩止めとけよ」

「嫌です」


会議を行うと必ずといっていいほどこの2人の喧嘩が起こる。全員慣れたので静観している。まだ喧嘩を続けている2人を見て、軽くため息を吐いて2人に拳骨をした。


「痛ったいじゃん!」

「団長殿! 何をするのじゃ!」

「お前ら座れ。いいな?」

「「はい。ごめんなさい」」


お互いに悪態をつきながら離れた1番端の席に座った。


他の席を見渡してから空席があったから席に座ってる面々を確認して、いない1人を確認して大きなため息をした。


「セレスト、あのバカ連れてこいって言ったじゃねぇかよ」

「連れてきたけど、一瞬でどっか行ったんだよ」

「じゃあ、あいつ抜きで始めるか」


1人来てないバカを放っておいて会議を始めようとした時黒い髪をオールバックに撫で付けていて1人だけマントを羽織っていない2番隊隊長のツェルン・フェアラートが手を上げた。


「団長! 本日も美しく! それでいて強さを纏っていて最高です! 結婚してください! 以上です!」


「黙れ」


「ありがとうございます! 以上です!」


これがツェルンのいつもの挨拶だ。こいつらには俺が女ということは伝えてないからこの中では男だ。だから男だと認識してながら会う度に『結婚してくれ』と言う。それがツェルンの良いとこでもあるし、面倒くさいとこだ。


「ツェルン! おぬしは男なんだから結婚できるわけないのじゃ! 団長殿と結婚するのはわらわなのじゃ!」 


「ノルン! お前が団長に釣り合う訳無いじゃん!」


ツェルンの言葉にノルンとピラーサがまた喧嘩を始めた。こうなるともう収拾がつかない。頭を抱えてると軍岐室の扉が乱暴に開かれた。


「最悪だ……」


「よぉし団長! 殺ろうぜ! 本気のやつ! 本気の勝負! 剣術闘技会なんか待ってらんねぇよ!」


金色の髪を刈り上げて右腕に大きな切り傷を付けている大柄な男が愛刀のズルフィカーレを持って飛び掛かって来た。


「ゼースト……」


飛び掛かって来た男1番隊隊長ゼースト・バーンを片手で簡単に投げ飛ばして、動かないように投げ飛ばしたゼーストの上に座ってくだらない言い争いをしている隊長達を見た。


「で? どーすんだ? 隊長」


セレストが顔を覗きこんで聞いてきた。少し目を瞑ってから小さくため息をして立ち上がった。


「さて……お前ら……レヴァンティンか雨ノ羽々斬り《あめのはばきり》どっちがいい?」


腰に降ろした2刀の柄を撫でながら喧嘩している隊長達に笑顔で聞いた。


「どっちも嫌です……」


立ち上がって喧嘩していた隊長達がセレスの言葉を聞いて大人しく椅子に座った。


「いよぉし! 隊長! 殺ろうぜ! 両刀だ! 両刀!」


立ち上がって楽しそうにズルフィカーレを抜いているゼーストをまた投げ飛ばして椅子にしてその場を大人しくさせた。


「じゃあ明日開催される剣術闘技会の会議を始めようか」


なんで毎回こんなに会議を始めるのが遅いのか……


「とりあえず、今年の剣術闘技会もトーナメント方式で良いね?」


会議の司会は毎回アレストがやっている。剣術闘技会はトーナメント方式ということを確認したらツェルンが手を上げた。


「団長は優勝者が戦うということですか? 以上です!」

「団長はどうしたい?」

「今年は少しやり方を変えないか?」


少しやり方を変えると言った団長を隊長達が興味津々な顔をして見た。


「トーナメント戦上位4人で2人1組のペアを作って、ペア戦で勝ったペアが俺と勝負できる権利を得る」


「それは団長殿が2対1になるってことなのじゃ?」

ノルンが手を上げて質問した。


「2対1でもいいし、1対1対1でもいいし、そこは自由だ」

「じゃあそれにする?」


アレストが反対意見があるかを聞いたら全員賛成していたから、今年の方式は決定した。次に話し合う内容に移った。


「次は貴族の観戦……」

「い!や!だ!」

アレストが次の内容を言ってすぐにセレスが反対した。


「団長が嫌だって言ってるなら無しじゃん!」

ピラーサが机を叩きながら同意していた。


「カルエト」

「はいはい~っす!」


全力で反対するセレスを見てアレストがカルエトを呼んでカルエトがアレストの横に移動した。


「えぇ~と! ある人からお手紙が届いてます!」


カルエトがある人から手紙が届いているという言葉に

全員が首を傾げた。


「ある人……?」

「はいっす! じゃあ読みますね~ 『毎年準決勝からの観戦だけど、今年は隊長以上だけなんでしょ? だったら最初から最後まで観戦したいな~』っとのことっす!」


「あぁ!? 一体誰だよ! そんなふざけたこと言うやつは!」

セレスに椅子にされてるままのゼーストが声を荒げた。


「ちなみにこのお手紙をくれたのはキルトさんっす

!」

「良し! 最初から最後まで貴族の観戦OK!」

キルトの名前が出た瞬間セレスが手のひらを返した。


「キルトさんだったらしょうがないね」

他の隊長達もキルトからだったらという感じだった。


「でも、騎士団で護衛は出さない」

「ん? どういうこと?」


通常では騎士団が貴族の護衛をするのだがそれをしないと言った団長を隊長達が驚いた顔をして見た。


「各貴族には親衛隊とかいるだろ? 各々自分のとこの騎士に守ってもらう」


「いいと思います! 貴族の中には護衛の騎士に手を上げる輩もいるらしいので! 以上です!」


ツェルンの発言を聞いて他の隊長達が慌てた。ツェルン自身も慌てて自分の口を両手でふさいだ。


「うん。ツェルン? その話詳しく。どこの貴族だ?どこのど阿呆だ?」


「団長 その話は後にしろ」


ゼーストが瞬時にセレスの腰にある両刀を奪ってセレストが軍岐室から出ようとするセレスを机の上に押さえつけた。


「団長大人しくしろ! その貴族はキルトさんとサミさんが既に解決してる!」


「断る。俺自身でもこれ以上騎士団の人間に手を出せないようにするからセレスト離せ」


「こっちも断る」


セレスを押さえつけてるセレストだったが、一瞬セレスとセレストの間に風が起こった。


(俺を引きはがすために魔法使いやがった……! この場でバレるのはマズいな)


セレスの魔法のことを知っている3人が慌てた。アレストとカルエトもセレスを押さえに向かった。


((間に合わない…!))


セレスの魔法の発動に間に合わないのが分かったが、至近距離で魔法が当たればあの場にいるセレストが一番危険だからせめてセレストを後ろに引っ張ろうと2人が手を伸ばした。


(せめてセレストが直撃しないように…!)

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