第23話 12月20日 土曜日 C

 また2日後。今回は文が予定が――で、1日空いた。って、俺たち本当に2回に1回遊びに来ていた。

 今まではあまりこちら。津方面には来なかったのに。用事がないからな。でもここ1週間はよく来るわだった。

 ちなみに今日は土曜日。休日のため朝から俺達はゲーム内に居た。まあ朝っぱらから文が起こしてきて、寝ぼけつつやって来たって感じだがな。なんかあまり家からSCAWセンターまでの記憶が無いんだよな。本当に寝惚けていたというか。俺良くちゃんと来たである。まあ途中で湖奈と一緒になったからだろうが。

 そうそうその湖奈はちょっと不機嫌だったりした。理由は――あれだ。土曜日に無理矢理朝っぱらから起こされたのと――今の俺達が立っているフィールド。階層が原因だろう。


「暑いはボケー!」


 文が叫ぶ。


「暑すぎるな」

「煮えてます!一旦退避しましょう!汗だくです!」

 

 俺と湖奈もそれぞれ目の前を見つつ言う。


 森の階層から下の階層へと進むと、今度は灼熱地獄だった。マグマグツグツゾーンとでも言うのか。降りたらなんか暑いな――と思った矢先。目の前で噴火してたよ。 

 さすがにマグマがこちらまで来るということはなかったが。今までの階層では暑い寒いの感覚がなく。ちょうどいい感じ。動いても汗をかくとかいうことはなかったのだが。そう、SCAWセンターまでは寒い中の移動だが。そりゃ当たり前だな。12月だし。今年も寒いし。でも、ゲーム内はSCAWセンターの個室からログインしているから。室内の温度が反映されているとか思っていたが。どうやら違ったらしい。今までの階層は温度が適温だっただけで――この先は、この階層からは違うらしい。


「文。これはヤバい。一旦戻ろう」


 俺は目の前の眩しいくらいのマグマを見つつ文に話しかけた。どう考えてもこのまま攻略は無理だ。


「仕方ないな。こんなの聞いてないぞ」

「もう、朝早く起こされて――いきなりマグマ地帯とか。船津先輩最低ですホント。マグマに飛び込んでください」

「いや、オレも知らなかったからな?ってか。攻略進めたい。ってこの前別れ際に言ってたの湖奈だからな?」

「知りません。忘れました。暑いです。あっ、斗真先輩――汗かいたからあまり近くは歩かないでください」

「汗までリアルだな」


 今俺達3人はホント汗だく。身体の水分全部なくなるのでは?といったレベルで汗が噴き出している。俺と湖奈はローブだからか。さらに暑く感じているかもしれない。なんか文だけ普通に装備脱いでいたがな。脱げるのかよ。だったが――そうそう、ちなみに俺と湖奈もローブの下は肌着――と言うより服だ。なので脱げなくはないが――でもなんか脱げなかったな。

 

「シャワー浴びたいですよー」


 ガックリの様子で湖奈が上の階層へと進む。


「これこの階層出れば何もなかったようになるんじゃないのか?汗も止まるとか?」


 また文がそんなことを言いながら後ろから付いてきていたが。いや、確かに俺も思った。あの場所だけがダメなのでは?と、でも実際は――。


「……ベタベタだな」


 町まで戻って来ても俺達汗だくだった。


「気持ち悪いです。あと――恥ずかしいです」


 地上に戻ったからと言って汗がすぐに乾くということはなく。周りのプレイヤーたちは何故俺達が汗だくなのかわからない状況だろう。

 ちなみによく見ていると、他のプレイヤーの中には汗だく。または――なんで凍ってる?って、奴も居た。あとドロドロの奴も――って、これはあれだな。他のプレイヤーと情報共有していればわかったことかもしれないし。

 俺たちももっと他のプレイヤーを観察していれば――だったかもしれない。俺達よりはるか先を行くプレイヤーは結構いるはずだからな。


 でも今はプレイヤー観察よりこのベタベタ何とかしたいだったな。

 ちなみにそれからお店の方をちらりと、見てみると――やはりあった。


 暑さ寒さ耐性ドリンク。


 というものがお店で売っていた。ちゃんとお店にあったのに俺達はちゃんと確認していなかったようだ。今度はこれを購入して潜るべきだな。


「シャワー浴びたい――」


 って、それよりさすがに――だな。湖奈が元気がない。今の状態を何とかしてやりたいのだが――。


「っか、湖奈。ゲームの中なんだから別に汗だく。ドロドロでも良いんじゃないか?そんなの」

「嫌ですよ!絶対嫌ですこんな気持ち悪いままとか――あー、1回ログアウトしようかな――」


 俺がどうするべきか考えていると文が湖奈にそんなことを言い湖奈が文句を言っていた。


「いやいや、湖奈。ログアウトしたら何もなかったになるなら。別に今のままでいいじゃん。SCAWセンターまで行って再度の方が面倒だろ?どうせこの先難易度上がればなんだし」

「でも――斗真先輩にこんな汗だくの姿見られ続けるのは――」


 そう言いながら俺に背中を向ける湖奈。


「いや、湖奈。見ないから気にしな――」

「むー、見てほしいです!」

「……どっちなんだよ」


 湖奈の考えは難しい。ってかわからん。

 ちなみに、俺たちはお店のところでこんな言い合いをしていたので、お店の人。多分この人たちはプレイヤーというか。今までのゲームみたいに「何か買いますか?」的な事しか言わない。ということはなく。人工知能でも入っていそうなお店のキャラが俺達に話しかけてきた。


「あの――お客さん?この建物の裏にホテルありますよ?長時間プレイをして。この町で生活している人も居ますから」

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