第66話 平和への道のり その2

「そんなの嘘よ! アッシュ、あなた魔王城に飛ばされて洗脳されたんでしょ! 装備も脱ぎ捨てて変な格好しているし!」

 ハンナがそう叫んでも、アッシュは冷静に話を続けた。


「ハンナ……よく思い出してみろ。これまで人間は魔族から攻撃されたことはあるか?」

「……」

「魔王城に戦いに行ったときもそうだ。どうして俺たちは魔物と一匹も戦わずに魔王の部屋へ辿り着けた?」

「……それは、魔物がどうぞこちらですって案内してくれたから……」


 勇者ユウが魔王討伐のために魔王城に乗り込んだとき、ハンナも確かに何かおかしいと思っていたのだ。「勇者だ、魔王を倒しにきた!」と堂々と名乗っても、「どうぞどうぞ」と歓迎され、「魔王の間へは行かせぬ!」と邪魔をしてくる中ボスもいなかった。むしろ「こちらが魔王の間でございます」とか、「お飲み物はいかがなさいましょう」とか大事なお客様として丁重に扱われた(さすがに飲み物は怖くて断ったけど)……。え、やっぱりアッシュの言っていることは正しいの?

 

 ハンナの心が少し揺らいだ。

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