第64話 勇者と魔王がふたりきり その10

 一刻も早く魔王とその側近を部屋から追い出そうとするハンナに、ユウもさすがに抵抗する。


「ちょっとハンナ! 私のに対して失礼じゃない!?」

「大事な人?」

 マオもハンナも、そしてティファニーも、ユウの発言に目を丸くした。

「あっ、えっ、ちょっ……てへ」

 ユウはどうにもごまかせずに、舌をぺろっと出した。

「ちょっと、ユウ様! 大事な人って誰のことをおっしゃっているんですか?」

「ユウちゃん! 大事な人って私のこと?」


 怒涛の勢いでハンナとマオがユウに詰め寄った。右にマオ、左にハンナ。二人に挟まれて、肩を掴まれて「どういうこと?」と体を揺すられ、ユウの目はぐるぐると回転した。


「っていうか! 魔王!」

「は、はい」

 ハンナが対象をマオに切り替えて、指差しながら啖呵たんかを切った。

「あんた、そもそも人間の敵なんでしょ! どうしてユウ様と仲良くしてんのよ!」

「えっと……敵ってどういう……?」

「魔族が人間の敵じゃなかったら、何なのよ! 私にわかるように説明してご覧なさいよ!」

 なんと、ハンナは超強力睡眠薬の副作用でなかば酔っ払いと化していた。


「それは俺が説明しよう」

 すると、どこからともなくそんな声が聞こえてきた。



※ 少しお休みします。次回は1月23日(月)更新予定です。

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