第62話 勇者と魔王がふたりきり その8

 タオル一枚挟んでいるけど、ユウちゃんの唇の感触と息が漏れてくる。きゃー、これって実質キスしてるといってもいいんじゃないの? だだだだだ、大丈夫なのかな? ユウちゃんは恋人ハンナがいるのにこんなことしていいの?


 マオの嗅覚はタオルの匂いに支配され、触覚は唇に集中している。そんな中で聴覚は機能するのかわからないが、ユウがゆっくり話し始める。

「この間、看病していたときに熱を測ったでしょ。今みたいにおでことおでこをくっつけて……」


「う、うん」

「そのときね……実は、マオにキ」



「ちょぉぉぉっと、まったぁ!」



 部屋の奥から大きな叫び声と共に、ハンナが猛ダッシュしてきた。そしてユウを背後から捕まえると強引に後方の椅子に座らせた。そのあと、マオからタオルを剥ぎ取ると彼女も捕まえて自分の座席へと連れ戻した。


「はぁはぁ……全く油断も隙もあったもんじゃない!」


 ハンナは若干顔が朱く、息も荒いまま、再び自分の椅子へと座った。「ごめんね、マオちゃん……止める間も無く僧侶ちゃんが飛び起きちゃって……」と同じく部屋の奥から道化師のティファニーが申し訳なさそうにやってきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る