第60話 勇者と魔王がふたりきり その6

「この間の……私の匂い?」


 マオの何気なしの一言を、ユウは聞き逃さなかった。あっ、やばい! とマオは焦ったが遅かった。

 ユウが顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしながら、マオのタオルをはぎ取る。そして、

「ねえマオ。私の匂いって……何? いつ嗅いだの?」と自分でも匂いを嗅いでみる。


 ユウはユウで恥ずかしさが止まらなかった。匂い……マオにとって臭かったのかしら? そんなはずは! いつも石鹸で洗濯してお日様に干してるし……。は! この前背中におぶったときの服の匂い? 汗かいてたからその匂いのこと言ってるのかしら? うわーこりゃだめだ!


 奪ったタオルを握りしめてうぎー! とかぎゃー! とか悶えているユウを見て、マオは涙が止まり、笑顔になった。「ふっ……ふふっ!」思わず笑い声が出てしまう。


「なっ、何よ! ……そ、そんなに臭かった、わたし?」

 恥ずかしそうにするユウを見ながら、マオはブンブンと顔を横に振った。

「ううん、違うの。もう、この際だから全部正直に言うね」

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