第55話 勇者と魔王がふたりきり その1
舞台は再び城下町、勇者ユウの自宅へと戻る。
現在部屋にいるのは、テーブルを挟んで向かい合う勇者ユウと魔王マオの二人のみ。僧侶ハンナは自分で仕込んだ特製超強力睡眠薬入りのお茶を飲んで自爆。魔王の側近、道化師のティファニーはこの機を逃さず、ハンナの看病という名目のもとに退場。
さあ、舞台は整った。
「あ、あの!」
二人が同時に声を出し、同時に顔を上げ、同時に目が合った。そしてお互い「あ、どうぞ」と差し出した手の指先がツンと触れ合う。二人ともピクン! と反応してしまうが、がんばったのはマオの方だった。思わず引っ込めようとしたユウの右手を優しく掴み、自分の両手で包みこんだ。
(言わなきゃ、今ちゃんと謝らなきゃ! がんばれ、勇気出せ私! って私、ユウちゃんの手をギュッと握っちゃったんですけど! 汗! 手汗かいてないかな?)
「!?」
ユウは驚きながらもその行為が嬉しくて、マオの手の上に、反対の手を重ねた。
(なになになになに? やっぱり好きって、私のこと? ちょっと……心の準備が……! ああっ、でもマオの手、すべすべぇ〜!)
お互い心の中では
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます