第21話 城下町、市場にて その5

 いったいどうしたというのだろう。


 マオに似た整った顔立ちの女性(ちょっとタイプなんですけど……とは言えず)がこちらをじっと見つめていたかと思うと、今度は顔を真っ赤にして頭から蒸気を吹き出し……ん? 蒸気? そして、いつの間にか頭にはツノが二本……ん? ツノ? 


 そのときユウは先日の魔王城での戦いのことを思い出した。魔王マオが突然顔を赤らめて、頭のツノから蒸気を出して倒れたことを。


 ――やっぱり、この人はマオだったんだ! 


 よかった、こんなにマオにそっくりな人間の女性がいたら、それはそれでなんか嫌だった……と、ユウは安心した。のも束の間、頭からツノを生やし、そこから蒸気を勢いよく吹き出している女性に、何事かと市場にいた人々が一斉にこちらに注目する。


 これはやばい。人間の住む世界に魔族が入り込んでいた、なんてことが世間に知れたら大混乱を招いてしまう。どうしようどうしよう……うん、まずはこの場を離れることが先決ね!


「すみません! ちょっと友人の頭の飾り物が暴走しちゃって!」


 ユウは、放心状態のマオを抱きかかえると、目にも止まらぬ速さで市場を後にした。

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