28話 お目覚め前の女子トーク

 時は遡り、神威しんいが意識を失ってから約二日経った頃。


 蘭子らんこ桜夜さくやは交代で神威の事を見守っていた。イルの発言から察すると襲撃の可能性は低いだろうと考えていた二人だが、襲撃の可能性はゼロではないし、目を覚ました神威が周囲に危害を加えないとも限らないからだ。

 

 今は蘭子が見張りをしている。交代の時間が近づいているのだろうか。疲れた様な、あるいは寂しそうに見える様な表情を浮かべている。


「とっくに邪鬼は消えてるのに……本当に寝坊助ねぼすけなんだから。早く起きなさいよね……」

 蘭子は神威に聞かせるつもりの無い声で呟いた。呟いた後、急いでいる為なのか『バタバタ』と病人がいる所には似合わない騒音が聞こえてきた。


「蘭子さん! ごめんなさい! 交代の時間遅くなっちゃって!」

「―――えぇ大丈夫よ、桜夜さん。こんな時に言うのもあれかしらと思ってね……言うかどうか迷っていたのだけれど」

「うん?なーに?」


「なんかいつまでも桜夜さんだと他人行儀過ぎるし、あだ名で呼ぶと言うのはどうかしら?」

「あっそれいいねー!賛成〜」

「桜夜ちゃん…桜……ちゃん……さくちゃん!はどうかしら?」

「うん!いいと思う! う~じゃあ私は……蘭ちゃんって呼んでいい?」

「……らんちゃん……そうね! いい響きだわ!」

「じゃあよろしくねらんちゃん!」

「改めてよろしくねさくちゃん」


 この後すぐに神威は目覚めることになるのだが、目覚める前にこの様な会話が行われていたことを神威はまだ知らない。目覚めたきっかけの一部が女子トークと知ったら厨二病的にはポイント低いかも☆



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