布団のなかで
出先で具合が悪くなって
なんとかフラフラしながら自宅に帰り着く
それでも手洗い、うがいを忘れないのは
習慣とわたしのヘンな律儀さか
ヨロヨロしながら寝巻きに着替えて
敷いた布団のなかに潜り込んだら
意識が沈んだ
夜
息子の帰宅で目が覚める
連絡LINEの途中で
スマホを持ったまま寝落ちしていたみたい
何度も電話してくれたらしい
深く寝入っていて気がつかなかった
心配させてしまってごめんね
と、言ったら
大丈夫なら良かったと
安心としたような顔
ほんとにごめんねぇ
身体の不調は
心も弱らせる
「苦しんで死にたくない」
「痛いのにも苦しいのにももう耐えられない」
などと
情けない弱音がポロポロとこぼれ落ちる
布団のなかで
今、痛くないということ
今、苦しくないということに
心底ホッとしている
これだけ歳を重ねてきても
わたしは自分の弱さに愕然とする
しぶといのが取り柄だったはずなのに
苦しみのなかにいると
そこをただ抜け出したいと思ってしまう
闘うよりも静かに逝きたいと
最期なんてものは
誰にもわからない
準備万端で
その時を迎えられる人の方が少なかろう
そう自分に言い聞かせながらも
心は揺れ続ける
布団のなかのわたしの思考は
ぐるぐる螺旋階段をのぼったりおりたり
吐き気と頭痛がやってくる前に
今夜は眠剤の力を借りて
眠りの海に沈もう
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